不良中年・天国と地獄

2008/03/28(金)18:36

「相棒6 最終回スペシャル 黙示録」

テレビ(142)

テレビの刑事物では「古畑任三郎」と人気を二分する「相棒」。「任三郎」のほうは一人の作家による日本版「刑事コロンボ」で、どうしてもマンネリになりがちです。内容もパロディというよりパクリが多く、ミステリ・ファンならほとんど引用先がわかるでしょう。ただ、任三郎像は個性的です。本作の杉下右京と匹敵するでしょう。脇の人物も好勝負で、それも人気の秘密でしょうか。テレビ朝日系3月19日(水)放送。監督=和泉聖治。脚本=桜井武晴。出演=水谷豊、寺脇康文、鈴木砂羽、高樹沙耶、岸部一徳、石橋凌、林隆三、かとうかず子、ベンガル、川原和久、大谷亮介、山中崇史、山西惇、六角精児ほか死刑囚の錦貴文(久松信美)が獄中で死亡しました。右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は病死であることを証明するための解剖に立ち合いますが、右京は貴文の刑が19年間も執行されなかったことに疑問を持ちます。25年前、解雇されたことを恨み、元上司の妻を包丁で刺すと家に火を放ち娘をも殺害した貴文。無罪を主張しましたが、いくつかの証拠が決め手となり、死刑が確定していました。貴文を無罪と信じる弁護士・茂手木(ベンガル)は再審を請求していましたが、棄却されます。右京は当時の裁判官の生き残り、三雲判事(石橋凌)から事情を聞きますが、正式な捜査でなければ、と多くを語ろうとしません。そんな折り、貴文の事件を担当していた黒木警部補(成瀬正孝)と緑川検事(遠藤たつお)の他殺体が発見されます。3月24日、1966年に静岡県清水市で一家四人を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われ、死刑が確定した元プロボクサー袴田巌死刑囚(72)の第一次再審請求の特別抗告審で、最高裁第二小法廷は、再審を開始しないとする決定を関係者に通知しました。このように、再審への道は遠いのです。死刑囚だけではなく、痴漢の冤罪も反証するのは容易ではありません。一度烙印を押されると、生涯それはつきまといます。21世紀になっても、日本の近代社会は成熟していないのです。本作では25年間、獄中にあった死刑囚の病死から話がはじまります。警察の失態と狼狽する幹部。裁判も一方的な判決だった、という疑問。歴代の法務大臣、裁判官、検事、刑事など、本件に関わった人たちの苦悩。これに三雲判事の持論である裁判員制度への疑問も提示。重い主題を扱っていますが、少々間口を広げすぎたようです。真犯人を見つける過程がいささか強引なのは、そのせいでしょうか。このシリーズ、全部見ているわけではありませんが、最近は社会的主題を扱うことが多いようです。が、その問題提起がうまく機能していません。犯人探しという制約があるからでしょう。凸凹コンビといえる右京と薫。別れた小料理屋の女将とフリーライターという二人の女性が絡みます。小料理屋で飲むのがいつもお銚子。こういうこだわりが、このドラマの面白さでしょう。特命係を取り巻く刑事たちにも、それそれ役割があって、ワンパターンですが、これも楽しみのひとつでした。お約束のシーンがあらわれると、なぜか安心するのです。次のシーズンが待ち遠しいのは、小生だけでしょうか。

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