2007/05/13(日)14:35
笙野頼子という人
笙野頼子の『愛別外猫雑記』をほぼ読了。『徹底抗戦!文士の森』をひろい読みで半分ほど読了。
しかし凄い人だね、この人。
『愛別外猫雑記』は猫好きと猫嫌いの壮絶な戦いの記録で、白猫を飼っている身としては「身につまされながら」読んだが、しかしさて、この膨大な文章は何なのか。
ふつうに言えばエッセイなのだろうが、事実を読者にわかりやすく整理して伝えようなどという気持ちはかけらもなく、時系列も事実説明も渾沌としていて、小説としてみればどえらいパワーなのだが、すべては事実となれば小説というのも躊躇する。
伝わるのはとんでもない書くエネルギーと周りに対する破壊力で、それにはただただ圧倒されるしかない。
『徹底抗戦!文士の森』も同様というか、初出時の誤植を直した部分までひとつひとつ注を入れるほどの細かさにもかかわらず、全体像は靄がかかったように不明確で、伝わるのは作者の怒りのエネルギーのもの凄さだ。
両書に共通して感じるのが「ネット風」ということで、それぞれ文芸誌に発表された文章にもかかわらず、むしろ2chの書き込みのような感がある。それは「カキコする」だのという用語だけの問題ではなくて、まあ、ひとことで言えば「電波文」の香りがするのだ。
飼い猫を隣人に捕獲されて捨てられた人のブログをネットで見たことがあるが、「隣人宅に突撃して私も死んでやる」というテンションで、『愛別外猫雑記』はその人が書いたのかとも思うくらいに実は似ていた。
ところで本職のほうの『三冠小説集』のほうなのだが、こちらがなんとも読みづらいというか、肌が合わないというか、読み進めるのが苦痛で、まだ読めていない。困ったもんだ。