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2008.02.18
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カテゴリ:lovesick
悠斗の前で、いっぱい泣いてしまった後、リビングに戻って、みんなの近況を聞きながら、飲み直しました。悠斗が同じ空間にいるというだけで、さっきまで、みんなの中で緊張していた私の心が解けていました。不思議。だって、昔から知っているのは、悠斗以外のみんなの方なのに。愛する、、そして愛してくれる人がいるっていうことは、こういうことなんだな、と思いました。確かに、悟がいたときも、私は、同じ事を感じていたから。悟と同じように、悠斗は、部屋のどこにいても、時々、私を確認するように振り返ってくれる、ただそれだけで、私は私らしくいられました。たとえ、つかの間の休息だとしても。そう、悠斗を傷つけて悲しませてしまうだけの私。ちゃんと悠斗から離れなくちゃいけない、という思いは消えませんでした。

ワインを注ごうとしたら、もう空っぽでした。新しいのを取りにカウンターに行こうとしたら、ちょっとふらついちゃったし。
「おっと、大丈夫?」
抱きとめてくれたのは、カワノくんでした。いつ見ても、かわいい顔のカワノくん。笑って頷きながら、悟と交わした会話を思い出しました。

「そうだな~。もし、俺と楓が別れることになったとして、楓が次に付き合ってもムカつかない相手っていったら、、、」
「やっぱり謙吾?」
私がそういうと、悟はムっとして、
「ありえねぇっ、っていうか、、、ありえすぎて却下」
「なにそれ~」
「謙吾はダメ、かっこよすぎるから」
「あは、悟だって、かっこいいよ」
「はい、見え透いたお世辞も却下」
私がくすくす笑うと、悟は続けて、
「そうだな~、やっぱりまずは、カワノだよな」
「え~??なんで?カワノくんだって、かっこいいよ?かわいい顔だけど、それでも微妙にかっこいい。モテるし。」
悟は、私のおでこをぺしっとたたいて、
「他の男のこと、ほめすぎ」
と怒りました。私は痛かったわけではないけれど、反射的におでこをなでながら、
「ごめんごめん。でも、悟が言い出したんじゃん」
「もしも別れたら、って、あくまでも仮定の話だろ?今、そんなにほめんなよ」
「はいはい。で、なんで、カワノくん?」
「俺と、ぜんぜん違うから」
「え?」
「顔も、もちろん、生き方も性格も全然違うだろ?だから、比べられないで済むし。だから、あんまり嫉妬しないで済む気がする」
「ふ~ん、、そんなもんかなあ?」
「ま、楓にはあんまり理解できないだろうけど」
「また、そんな。。でも、謙吾だって全然ちがくない?」
「ちがわねぇよ。いや、そりゃ、見た目はあいつほどかっこいいやつはいないけど、俺は、見た目のことはそれほど気にしてないんだよ。気にしたって、仕方ないし。ただ、謙吾は俺が楓にしてやりたいって思ってる同じことを、俺よりかっこよくやっちゃうやつだからダメなんだよ」
「ん~。。」
「カワノはさ、その点、きっと何もかも全く違うから」
考え込む私に、
「楓は?俺が付き合ってムカつかない相手って誰?」
「うんとね~、彩」
悟はふき出して、
「ばか、あいつは俺の妹だよ。変態か、俺は」
「だめ、思いつかない。。だって、別れるなんて、絶対やだし。」
悟は、優しい目で微笑んで私を抱き寄せ、
「それは俺も同じだろ?絶対離す気ないし」

たわいもない、お互いの愛情を確認するための、なんてことのない会話。こんなことも、忘れずに記憶の片隅に残っているもんなんだな、すっかり忘れてたのに、こんなに簡単によみがえるんだ、と思いました。でも、大丈夫。悟との思い出は、もう痛くはありません。胸の奥が暖かくなるだけの、懐かしい思い出。
ふと気づけば、カワノくんが不安そうに私を見つめていました。私は一瞬のつもりだったけど、随分長くぼんやりしていたみたい。
「楓、、ほんと大丈夫?」
もう一度、聞かれ、今度は、体勢を立て直してから、頷きました。カウンターでワインを選んでいると、いつの間にか、隣に来ていた悠斗が、
「楓、そろそろ帰ろっか?」
と言うので、仕方なくワインを置いて、頷きました。悠斗、明日早いんだし、そうしよう。
「なんだ、もう帰っちゃうの?残念だな」
と、カワノくん。

みんなに挨拶してから、外に出て見上げると、やっと雲が薄くなり始め、小さな星明りがところどころに顔をだしていました。悠斗は、私と手をつなぎました。
「楓、足元ふらふらしてるから。手くらい握ってもいいだろ?」
なぜか少しぶっきらぼうに言う悠斗。私は自分もしっかりと、握り返しました。暖かい、大きな手。離したくないと、離されたくないと、強く願ってしまう自分がいました。

帰り道、車を走らせながら、悠斗は、
「ったく、今日は、飲みすぎだよ。ふらついて、他の男に抱きつくなんて、言語道断だぜ」
とぶつぶつ。そっか、さっきのこと怒ってるんだ。私は、確かに、1回醒めたからって、また飲みすぎたな~と思いながら、酔ってぼんやりと麻痺した意識の中、ハンドルを真剣な顔で握る悠斗の横顔を眺めていました。もちろん、一部分覚醒した意識では、彼との間に残された時間の短さを思いながら。

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最終更新日  2008.02.18 01:01:04
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