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カテゴリ:lovesick
夕べは、、さすがにぜんっぜん眠れなかった。俺は楓を失おうとしているんだ、と思ったら、どうしても。哀しい、苦しい、というよりも、とにかく心が痛かった。でも、あの謙吾が楓に向けて、動き出したんだとしたら、どうにもこうにも俺には、彼を止めるすべも、2人が近づくのを止めるすべも、楓の心が動くのを止めるすべも、全くないんだ、、という思いは消えなかった。
だとしたら、、いずれ、あきらめないといけないんだな、いずれ、身を引くしかないんだな、でも、いつになっても、全然できそうにないよな、という思いばかりが頭の中を駆け巡る。宗太郎と彩の式の日が、、楓に会える、最後の日になるんだろうか。。 バスでの移動の間、顔にタオルをかけたままうとうと眠り、着いてからも、俺の出番には時間があったので、例によって、モヤモヤしながら、ゴロゴロしていると、 「ね、悠斗ってさ、いっつもこうやって、ゴロゴロしてるんだよ」 と好司の声が聞こえた。そして、女の子の笑い声。目を開けなくても分かる、今回のエピソードのゲスト、アイちゃんだろう。俺は彼女とは初めてだったが、好司は以前にも仕事をしたことがあるらしく、仲がよさそうだ。(単に好司がなれなれしいだけなのかもしれないが。。)寝たふりを続けようかと思ったけど、好司には、あっさり見破られそうな気がしてやめた。誰かと話したほうが、気も紛れるだろうと、仕方なく起き上がる。 「ねえ、悠斗。アイちゃんさ、ず~っと前から悠斗のファンなんだって」 アイちゃんは好司の隣で恥ずかしそうにしている。 「ありがとう」 とアイちゃんに微笑んでから、 「じゃあ、わざわざ、俺がゴロゴロしてるの見せに来んなよ」 と好司に言ってやる。 「まあまあ。ファンっていうのは、どんな姿も見たいもんなんだよ」 「ったく」 アイちゃんはそんなやりとりすら、楽しそうに見ている。好司が俺と目を合わせ、ふっと真剣な顔になる。 「悠斗・・?」 好司が何かいいかけたその時、ADさんが好司を呼びに来た。 「はいはい。俺だけ?じゃあ、ちょっと行ってきま~す」 表情を緩め、気楽そうに手を振っていってしまう好司。きっと好司には俺のコンディションが分かったんだろう。いろいろ詮索されずに済んで助かったと思う反面、アイちゃんと2人になるとちょっと気まずい、、のはなんで?。俺って、ほんと、女の子と何話していいか分からないんだよな。 「広川さん」 アイちゃんがまじめな顔でこちらを見ていた。 「はい、何?」 「私、、本当に、、広川さんの、、ファンで、、っていうか、すごく、、好きなんですけど。。」 顔を真っ赤にしながら、 「あの、、できたら、、、彼女にしてもらえたりしませんか?」 俺はびっくりした。まさか現場で告られるなんて、思っても見なかったし。。 アイちゃんのことは、俺、あんまり知らないけど、、、確かにかわいい。朝の挨拶も明るくて元気一杯な感じで、気持ちよかったし。スタイルもいいし、こういう子が彼女だったら、、、って男なら一度は、きっと誰でも思うんじゃないかな。。。でも、もちろん、断る。 「ごめん。気持ちは、嬉しいんだけど、俺、好きな子がいるんだ」 アイちゃんは、泣き出しそうな顔になって、 「恋人・・・ですか?」 「いや、、まあ、そうなれば、、、って思ってるだけなんだけど」 アイちゃんは勢い込んで、 「それって片思いってことですか?」 「ああ、しかも、あんまり、、」 段々、元気がなくなるつぶやきに、 「だったら、私、、まだずっと好きでいていいですか?」 「え?」 「だって、、、見込みが全然ないわけじゃないでしょう?私、、待ってます。」 といわれ、考え込む。いや、、俺は楓のことが好きだし、、楓を失ったからって、すぐに、他の子って言うわけにも、、、それが、アイちゃんって決まってるわけでもないし。正直、、待ってられるって重荷だし、面倒なんだけど、な、、、と失礼なことを思って、ハっとする。 ってか、俺も、、楓に同じことしてきたのかな?実は、楓の重荷になってたりして、、、。一方的に好きだ好きだっていいまくって、、迷惑かけてきたのかなあ。。 今はもう、何を考えても弱気モードだ。。そんなこと、今となってはどっちだっていいようなもんだとしても。。 はぁ、、、楓は、いつ謙吾と会うのかな?俺が決定的に振られるのっていつ?楓に辛い思いさせないように、先に身をひくべきだよな?やっぱり。。いつも、撮影の合間にメールしてたけれど、今日は全然できない。携帯を見る勇気もない。俺って、ほんと、意気地なしだよな。こんなに愛してる楓と、、もう、メールするのすら、怖い、、、なんて。 ← 1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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