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カテゴリ:lovesick
控え室で見た彩の花嫁姿はとっても綺麗でした。サンドイッチを喜んでうけとってくれる彩。おめでとう、と精一杯微笑みながら、
(悟、見てる?彩、とってもきれい。それにとっても幸せそう。ね?私たちも、本当なら、、今日一緒に。。) 久しぶりに、悟の不在を濃厚に実感していました。私は、1人、廊下に出て、窓から空を見上げました。もう永遠にかなわない夢。もうどこにもいない悟。 どのくらいそうしていたのか、気がつけば悠斗がいました。何も言わず、そっと肩を抱いてくれる悠斗。ゆっくり悠斗に寄り添い、もう離さないで欲しいと思う私。でも、悠斗はもう、私とずっといたいとは思ってくれていないんだよね。私はこうして悟との過去から、悠斗のおかげで抜け出せたのに。悠斗の指先からは、今もこうして、私への確実な愛情が感じられるのに。こんな風に、無防備な愛情を感じられるのは、そう、悠斗は、もう今日で最後だと思って、心のままに振舞っているから。。やっと、未来に向いた自分の目にうつるのが、私から去ろうとする、悠斗の後姿だったなんて。 式と披露宴は、宗太郎の豪快さを包み込む、彩のおっとり笑顔の作るほんわかムードの中、つつがなく終了しました。少し、彩たちと一緒に休憩した後、悠斗とともに、2次会会場になっている近くのレストランに移動すると、悠斗が、 「あ、いたいた。」 その視線の先の柱の所に、確かにテレビで見る彼が立っていました。彼もすぐに悠斗に気づき、手を挙げました。近づいていくと、悠斗は、私を示して、 「好司、これが、楓。で、楓、これが好司」 とこれ以上ないくらい簡単に紹介しました。 「はじめまして、楓さん」 と手を出す好司くん。私も、手を出しながら、悠斗に合図しました。 「好司、楓は呼び捨てにしてやって。ちゃんとか、さんとか嫌いなんだって」 「ええ??いいの~、嬉しいな、よろしくね、 楓」 あまりにもスムーズな切り替えに、私も悠斗も笑いました。好司くんは私をじっと見つめます。 「好司、見すぎ」 悠斗がいつも自分が言われるセリフを口にしました。 「ああ、ごめんごめん、楓って本当にきれいだね。悠斗があっという間に夢中になったの、よく分かるよ」 と目を細めて私を見続ける好司くん。私は、ちょっと恥ずかしくなって俯くと、 「好司、余計なこと言わなくていいんだよ。」 「余計なことじゃないよ。楓がきれいだってことは、全然。だってムシを寄せ付けないために彼氏のフリするんだし、、ね?楓?」 と私の肩に手をまわす好司くん。悠斗は慌てて、 「おい、そこまでしなくていいんだよ。一緒にいるだけで」 と、その手を払い落としました。 「ああ、お前に任すのって、、やっぱり失敗だったかなあ」 頭を抱えた様子の悠斗に、好司くんは、あっけらかんと、 「大丈夫だって。公衆の面前で一体何ができるっていうんだよ」 「公衆の面前じゃなけりゃ、何かすんのかよ?」 と、本気で怒る悠斗。好司くんは、 「しないよ。冗談だって。心配しなくていいから、悠斗、早く行きなよ。スタッフの人が待ってるよ」 心配そうに私たちを見る悠斗。私は、大丈夫だよ、と頷きました。悠斗は、ため息をつき、 「じゃあ、まあ、頼むよ、好司。でも、楓、好司に変なことされたら、すぐ俺のとこ来いよ。あと、終わったら、ちゃんと送っていくから、待ってて」 とだけ言い、かなり後ろ髪を引かれながら去っていきました。 「ったく、失礼だな~、変なことなんてしないよ~。」 とぼやいてから、こちらににっこりとし、 「じゃ、邪魔者も消えたし、僕たちも行こうか?楓」 と気障な調子で言って腕を出す、好司くん。私は、微笑んで、腕を取りました。面白い人。 悠斗はスムーズに司会を続け、2次会も順調に進みました。司会の合間も、悠斗はたくさんの人と一緒に写真に写ったりサインしたりで忙しそうでした。悠斗って、自分で言ってるよりも人気があるんだな。 反対に好司くんはしっかりオーラを消したままで、誰にも気づかれず、私と一緒に、壁に近い2人席で座っていました。何度か私と話しに来た、カワノくんや、サキやハルカにも、めちゃめちゃ一般人(しかも偽名)としてふつ~に話してるし。みんな、なんで気づかないの?原田好司だよ??って言いたかった私です。これって、天才的演技力による、一般人の演技なわけ?すごいな、ほんとに、、。 好司くんは、何度もワインを取りに行ったり、食べ物をとってきてくれたり、かいがいしく私の世話を焼いてくれます。簡単な文字入力ができる電子手帳のようなものを持ってきてテーブルには出していましたが、ほとんど好司くんが話したり、勘よく察したりしてくれて使う必要もありませんでした。私が黙っていても、撮影中の話とか、悠斗のクセなんかを、いろいろ面白おかしく話してくれ、初めて会うとは思えないほど打ち解けることができました。 しばらくして、好司くんが向かいから、マイクを持って話している悠斗を見つめていた私の瞳を覗きこみました。そして、 「なんだ、楓も悠斗のこと、好きなんじゃん」 私の目の奥にそう書いてあるのを読むかのように、言いました。当たり前の事実のように。私が答えあぐねていると、 「しかも、相当、。だよね??楓」 私は、あきらめて素直に頷きました。怖い人、本当に。悠斗の言ったとおりだな、と、なんだかおかしくなりました。好司くんは満足そうに微笑んでから、訝しげに悠斗に視線を送り、 「じゃあ、、なんで、悠斗は、それに気づかずに、あんなに片思いな気持ちでいるんだろう?」 と独り言のようにいいました。私はキーを打ちました。 『私のせいなの。私がちゃんと伝えられていないから』 好司くんは、 「それでも、、楓をちゃんと見てたら、分かりそうなものじゃない?一体あいつ、どこを見てんの?」 と、不思議そうにたずねます。私には、、答えられませんでした。 『ねえ、私が悠斗を好きなこと、悠斗には黙っててくれる?いつか、、自分でちゃんと言いたいの』 悠斗の気持ちに、、間に合わなくても。。きっといつか。 好司くんは、 「うん。僕、そんなこと言わないよ。でも、、それ、、急いだ方がいいんじゃないかな?あいつ、なんだか、この間から、必死で楓をあきらめようとしてるみたいだから」 そして、そのとき、急に、会場が静まり返りました。何かあったのかと、みんなの視線を追った先に・・・。 ← 1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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