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カテゴリ:takasaki
「うわ~。」
部屋に入るなり、莉花はそう言った。広い部屋、そして、窓一杯に広がる夜景を目にして。 嬉しそうに僕を一度振り返って見上げてから、ゆっくりと窓際に進み、眼下の夜景に見入る莉花。 僕も並んで、夜景を見るフリをして、窓にうつる莉花を見る。 いつも変わらない美しさ。出会ったときから、僕は、ずっと莉花に夢中なんだ。 「綺麗だよ、莉花」 うっとりと言う僕。莉花は、僕を見上げて、にっこり微笑み、 「もうっ。今日は、何回言ったら気が済むの?そんなに言われたら、恥ずかしいよ」 「だって、ほんとに綺麗だから。何度でも言いたいんだ」 真顔で言う僕に、 「ありがと、せんせ。先生も、素敵よ」 僕は笑って、 「莉花の見立てがいいからな」 「どういたしまして。でも、ほんというと、先生は白衣の時が一番素敵なんだけど」 「そう?」 「ええ。とっても素敵。白衣姿見ると、もう、ドキドキしちゃって大変。仕事中の先生は、ほんとに、真剣な顔してて、かっこいいの。これはユウコちゃんも同意見なのよ?私なんて、いっつも見とれちゃって。。先生の白衣姿、ずっと見られるなら、ずーっと入院してたくなるもん」 僕は真顔で、 「ずーっと入院なんて、縁起でもない。じゃあ、、・・・家でも着ようか?」 その姿を、2人とも無言で想像し、 「それは、、、変でしょ。」 「・・・だよな?」 と笑う。 莉花はまた、夜景に目を戻し、眺め始める。子供のように無邪気な瞳で。 でも、僕はやっぱり莉花から目が離せないんだ。 やがて莉花は、視線を僕に、そして、部屋に移し、そしてもう一度僕に戻し、 「先生、それにしても、すごい部屋ね。びっくりしちゃった」 「・・今日は、特別な夜だからね」 「特別・・?」 僕は莉花の頬に右手を添えて、見つめ、 「莉花、今夜は、、、、今夜だけは、僕のこと、先生って呼ばないでくれ」 「・・どうして?」 訝しげに問いかける莉花の髪を撫ぜながら僕は言う。 「今夜は、医者であることを忘れるから」 「・・・?」 「僕は、医者として君に出会って、それから、恋人になっても、夫になっても、これまで、ずっと、キミのそばに、半分は、、いや、もしかしたら、それ以上、医者としての僕でいたんだ。いつも、キミの体の状態が気になっていた。もちろん、君の体の心配をするのは、夫としても当たり前だとしても、でも、やっぱり僕は医者だから、、、、ずっと、、多分、普通の夫婦以上に」 莉花は微かにうなずく。 「・・だけど、今日は、今日だけは、ただの男になる。医者であること、、君の主治医であること、、あと、悪いけど、君の病気のこと、何もかも忘れる。今日だけ。。いいな、莉花?」 「・・・それ、、って。。?」 信じられない、という顔で見る莉花。僕はもう、ガマンできずに、莉花の首筋に口づけ耳元で囁く。 「ああ。今日は我慢も避妊もしない。欲しいだけ、欲しいまま、莉花を抱く。そして・・・子供ができたら、、それが僕たち夫婦の形だよ」 「先生・・」 呆然と呼ぶ莉花に、 「って、呼ばないでって言ったろ?」 「だって、、、、なんて呼んで良いのか分からないわ」 莉花があんまり戸惑っているから、僕は笑って、 「じゃあ、いいよ。何?」 僕の目を見つめながら、しばらく言葉を捜していた莉花が言う。 「ありがとう。・・なんて言葉じゃ、表現しきれないわ。夢みたい。。」 僕は涙を浮かべる莉花を強く抱き寄せ、 「夢じゃないよ。現実だ。いいだろ?1度だけ」 尋ねる僕に、 「うん。うん・・・。」 何度もうなずいてから、 「・・・シャワー浴びてきてもいい、、かしら?」 「もちろん。ごゆっくり」 歩き出す莉花に、 「莉花」 振り向く莉花。 「愛してるよ」 莉花は一瞬泣きそうに顔をゆがめてから、戻って来、僕に抱きつく。 「私もよ、先生。愛してる。ほんとに、、ありがとう。」 しがみつくようにして言う莉花の背中を撫ぜ、落ち着くのを待ってから、 「いっといで」 というと、莉花は、こっくりとうなずいた。 ←1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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