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2009.08.22
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「いい機会だから、正直な気持ち、あなたにははっきり言っておきましょう。」
そういって新谷は、話し始めた。
「ミリさんと初めて出会ったのは、病院でした。廊下でぶつかってしまって。慌てて起き上がって、申し訳なさそうに謝る、その一生懸命な仕草、かわいくてしょうがなかったですよ。そのときはまだ、ミリさんが、高崎先生のお嬢さんだなんて知らなかったんです。その後すぐに、紹介していただいて。嬉しかったな。そんなつながりが、あったということが。」
遠い目でその日を思い出すような新谷の表情。そして少し表情を翳らせ、
「ただ、あなたというヒトがいることを知ったのもすぐだった」
自嘲気味に微笑んで、
「当然ですよね。あんな魅力的なヒトに恋人がいないはずがない。」
少し言葉を切って、新谷は続ける。
「もちろん、割って入ろうなんて、思ってはいませんでした。ミリさんがあなたのことを話す表情を見ていれば、掛け値なしで、相思相愛なこと、僕には分かりますからね。」
「その通りだよ。俺たちは愛し合ってる」

・・・だから、とっととあきらめろよっ、と俺は思う。

新谷は、うなずき、
「確かに、あなたたちは愛し合っている。恋人になって日が浅いことを知った時は少し期待しましたが、高崎先生からあなたのお兄さんとの話も伺って、お二人が、その上で恋人になることを決めたのなら、、これは、手を出すわけにはいかないな、と。だから月並みな言い方かもしれませんが、あなたといることでミリさんが幸せなら、それでいいんだと、、そう思っていた。僕も僕なりに、紳士でいたいと。」
「賢明な判断だと思いますよ」
俺は、思いっきりウエから目線で言ってやる。
新谷は、うなずいて、
「僕もそう思いました。だから、ミリさんへの淡い想いは淡いままで、それ以上の思いにならないようにしようってね。」
そこで、新谷の目に、これまでどこかに隠れていたはずの鋭さが宿る。
「ただ、、僕から言わせれば、あなた方には、隙がありすぎる」
隙だと・・?何を言い出すんだ、コイツ。
「隙?」
聞き返す俺に、
「意外ですか?本当に隙だらけですよ。ミリさんは」
俺はソファに眠るミリを見る。新谷は続ける。
「ミリさんは、僕の前であまりにも無防備だ。食事にだって、買い物にだって、時間が空いていれば、いつでも付き合ってくれる。車で出かければ、助手席でうたた寝することだってありますよ、彼女」
ありうる。ミリは、すぐにどこでも寝ちまうから。俺が添い寝してやれなくて、寝不足のときだったら、簡単に寝ちゃうだろう。
「今夜だって、ほら、あんな風に酔っ払って。ほとんど僕が抱きかかえて連れてきました。ソファに寝かせ、息苦しいかと、胸元のボタンいくつかはずさせていただきましたが、全く気づかない。もちろん不埒なことするつもりはありませんでしたが。」
頭に血が上る。わざわざ口にすることじゃないだろう?新谷は俺がムカついてても平気で続ける。
「ミリさんが隙をみせてくれるのは、かまわない。僕を、少なくとも信用してくれているということですからね。それはとても嬉しいことだ。だから、その隙につけこもうなんて思っていません。ただし、」
新谷は、はっきりと俺をにらみつけて言う。
「あなたが見せる隙は、僕には、ガマンならないな」
「俺の隙・・・?」
「そうですよ。あなたの隙。つけこむこと、ガマンするのが辛いくらいに大きな、ね。」

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最終更新日  2009.08.22 00:05:40
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