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そっと額に触れた唇に目が覚めた。
明かりのついていない締め切られた部屋はぼんやりと暗く、目の前には、ケースケ。 「あ、ごめん、起こしちゃったか。そーーっと、したつもりだったんだけど」 謝るケースケに、首を振り、私は、目をこすりながら、時計を見る。まだ、、こんな時間。。 「ん~。。」 小さく息をついて、目をこすってから、ケースケを見る。もう、腕時計してる。出かけるんだ。 「あ~?もう行くの?」 「あぁ、今日は、稽古の前に、取材はいってっから」 「そなんだ~。大変だね。。ふぁぁ。。」 あくびをしながら起き上がろうとする私に、ケースケは、やや心配げだった表情を緩め、 「ああ、起きなくていい、いい。寝てろよ。まだ早いから。ごめん、絶対起きないと思ったのに」 肩を持って優しく押し倒されて、私は、そのまま横になる。 「ううん、いいの。嬉し~よ。ちょっとでも会えて」 会えてって、変かな。一緒に暮らしてるのにね。 「そりゃ、俺もだけど・・・。ミリ?」 「なあに?」 「よく眠れた?」 「うん。ぐっすり」 ほんとにぐっすり。久しぶりに。うなずく私に、ケースケはほっとしたように、 「よかったよ。なんか悪い夢見たみたいにうなされてたから」 「ほんと?」 夢・・・?どんなだっけ。。覚えてない、、代わりに、目が覚めてきた私は夕べの自分を思い出す。ううん。それだけでなく、自分の今の体のこと。 無意識に胸に向かおうとする手を慌てて止めて、私は無理に笑う。無理にでも笑わなくてはいけない。 「・・・覚えてないや」 ケースケは笑って、 「いいよ、思い出さなくて。」 「うん」 ケースケは、横たわる私の顔の横に手をついて、 「起きちゃったんなら、ちゃんとキスさせて」 って言いながら、キスをする。優しくて長いキス。夕べのキスを思い出す私。 『キスだけならいんだよな?』 ケースケはそう言って、いろんなキスいっぱいいっぱいしてきた。愛情たっぷりのキス。すごく愛されてること実感してしまった。。。とたんに、眠くなっちゃって・・・。 今もケースケの唇には、溢れるくらいの愛情が込められていて。そして、長いキスを終えても、額をくっつけて、私の目を見るケースケ。 「ミリ・・」 小さくそう呼んで、目を閉じたケースケ。私もつられて小さな声になる。 「・・なに?」 「愛してるよ」 目を閉じたまま囁くケースケ。いつも言われなれているはずの言葉。だけど、今は、、、ケースケの揺れる睫を見ていると、なぜだか、切実な思いを感じて、鳥肌が立ちそうなくらい心が、胸が、ざわめく。私は言う。 「・・私も愛してるよ」 ゆっくりとケースケは目を開けて、信じられないっていう目で私を見る。 「今、なんて?」 「私も愛してるって言ったの」 「・・なんで?」 「なんでって?」 「なんで、そんなこと言うんだよ」 「どういう意味?」 「いっつも、そんなこと言わないだろ?」 「だっけ?」 「言わないよ。いっつも、はいはいとか、どうも、とか、、そっけなくて」 「かな~?」 「だよ、なんか、、あるわけ?」 「なんか、ってなに?」 「なんかだよ。だって変だろ?急に」 「よく言う~。ケースケが、この間、私もとか、私はもっととか言えって言ってたんじゃない」 「そ~だったかな。。。」 「もういいよ。そんな風に言われるなら、もう言わな~い」 ケースケは慌てて、 「うそうそ。違うよ。びっくりしただけだって」 口を尖らせる私に、謝ってくる。 「なあ、もっかい言ってくれよ?」 「やだ」 「なんでだよ。驚きすぎて、味わえなかったからさ~」 「また今度ね」 「そう言うなよ~」 なんて言い合ってたら、私のケータイが鳴った。誰からかは、音で分かる。 お父さんだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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