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2009.10.22
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カテゴリ:box
そっと額に触れた唇に目が覚めた。
明かりのついていない締め切られた部屋はぼんやりと暗く、目の前には、ケースケ。
「あ、ごめん、起こしちゃったか。そーーっと、したつもりだったんだけど」
謝るケースケに、首を振り、私は、目をこすりながら、時計を見る。まだ、、こんな時間。。
「ん~。。」
小さく息をついて、目をこすってから、ケースケを見る。もう、腕時計してる。出かけるんだ。
「あ~?もう行くの?」
「あぁ、今日は、稽古の前に、取材はいってっから」
「そなんだ~。大変だね。。ふぁぁ。。」
あくびをしながら起き上がろうとする私に、ケースケは、やや心配げだった表情を緩め、
「ああ、起きなくていい、いい。寝てろよ。まだ早いから。ごめん、絶対起きないと思ったのに」
肩を持って優しく押し倒されて、私は、そのまま横になる。
「ううん、いいの。嬉し~よ。ちょっとでも会えて」

会えてって、変かな。一緒に暮らしてるのにね。

「そりゃ、俺もだけど・・・。ミリ?」
「なあに?」
「よく眠れた?」
「うん。ぐっすり」
ほんとにぐっすり。久しぶりに。うなずく私に、ケースケはほっとしたように、
「よかったよ。なんか悪い夢見たみたいにうなされてたから」
「ほんと?」

夢・・・?どんなだっけ。。覚えてない、、代わりに、目が覚めてきた私は夕べの自分を思い出す。ううん。それだけでなく、自分の今の体のこと。

無意識に胸に向かおうとする手を慌てて止めて、私は無理に笑う。無理にでも笑わなくてはいけない。
「・・・覚えてないや」
ケースケは笑って、
「いいよ、思い出さなくて。」
「うん」
ケースケは、横たわる私の顔の横に手をついて、
「起きちゃったんなら、ちゃんとキスさせて」
って言いながら、キスをする。優しくて長いキス。夕べのキスを思い出す私。

『キスだけならいんだよな?』
ケースケはそう言って、いろんなキスいっぱいいっぱいしてきた。愛情たっぷりのキス。すごく愛されてること実感してしまった。。。とたんに、眠くなっちゃって・・・。

今もケースケの唇には、溢れるくらいの愛情が込められていて。そして、長いキスを終えても、額をくっつけて、私の目を見るケースケ。
「ミリ・・」
小さくそう呼んで、目を閉じたケースケ。私もつられて小さな声になる。
「・・なに?」
「愛してるよ」
目を閉じたまま囁くケースケ。いつも言われなれているはずの言葉。だけど、今は、、、ケースケの揺れる睫を見ていると、なぜだか、切実な思いを感じて、鳥肌が立ちそうなくらい心が、胸が、ざわめく。私は言う。
「・・私も愛してるよ」
ゆっくりとケースケは目を開けて、信じられないっていう目で私を見る。
「今、なんて?」
「私も愛してるって言ったの」
「・・なんで?」
「なんでって?」
「なんで、そんなこと言うんだよ」
「どういう意味?」
「いっつも、そんなこと言わないだろ?」
「だっけ?」
「言わないよ。いっつも、はいはいとか、どうも、とか、、そっけなくて」
「かな~?」
「だよ、なんか、、あるわけ?」
「なんか、ってなに?」
「なんかだよ。だって変だろ?急に」
「よく言う~。ケースケが、この間、私もとか、私はもっととか言えって言ってたんじゃない」
「そ~だったかな。。。」
「もういいよ。そんな風に言われるなら、もう言わな~い」
ケースケは慌てて、
「うそうそ。違うよ。びっくりしただけだって」
口を尖らせる私に、謝ってくる。
「なあ、もっかい言ってくれよ?」
「やだ」
「なんでだよ。驚きすぎて、味わえなかったからさ~」
「また今度ね」
「そう言うなよ~」
なんて言い合ってたら、私のケータイが鳴った。誰からかは、音で分かる。

お父さんだ。


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最終更新日  2009.10.22 00:14:49
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