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2009.12.21
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カテゴリ:box
「バカだなっ、、、いや、違う、、バカは僕だ。・・そんなことで、悩ませてたなんて。。気づかずにごめん」
そういう僕に、蒼夜は軽い調子で言う。
「・・そんなっ、気づかなくて当たり前だよ~。だって、鍵ポストに落とした後は、当分会えないし、しばらくして会えるときには、私だって、そんなこと忘れちゃってて、会えるのが嬉しいだけの私でいたもん。それにね、鍵のこと考えなかったら、やっぱり、ここで過ごすのが一番落ち着く。碓氷くんのものにたくさん囲まれて。碓氷くんの空気に包まれたキモチになれて。。だから、いつもこの空間に、一緒にいる間は嬉しかったし幸せだった。夕べだって、だから、鍵のこと思い出しても、、、やっぱりココがよかったし。。」
夕べ一度ためらって、それでも、ここにくることを選んだ蒼夜を思い出す。蒼夜は微笑んで続ける。
「・・・ね、だから、碓氷くんが気づくはずないよー」
「・・でも、辛い思いさせたよな・・」
痛い思いで呟く僕に、蒼夜は笑って、
「もうっ、そんな深刻じゃないってば。ずっと悩んでたわけでもないし。その瞬間だけ、だったから。・・でも、もう、話せたから、吐き出せたから、きっとこれからは大丈夫だよ。ごめんね。もっと早く話せばよかった」
素直に話してくれる蒼夜。僕も白状する。きっと伝えておいた方がいいと思うから。
「・・・僕だって」
「え?」
「僕だって、ほんと言うと、帰ってきてポストから鍵、拾うのヤだったんだ。蒼夜が朝までいたことと、今いないこと思い知るから。」
僕の目を見つめていた蒼夜の顔に、ゆっくり、じわっと、笑顔が広がる。
「・・・そうなんだ。あの鍵を通して、きっと私たち同じこと感じてたんだね。・・・だったら、、あんなキモチになってたこと、無駄じゃなかった・・」
嬉しそうに、静かに言う蒼夜。

僕は、テーブルの上の鍵を取り、蒼夜に差し出す。
「受け取って。蒼夜の鍵だよ。・・・もう、返さなくていい」
驚いた顔で僕を見る蒼夜。
「そんなっ・・。そんなつもりで言ったんじゃないの。そんな大切なもの。もらえないよ。まだ・・」
「まだって、なんだよ」
「だって、まだ付き合ったばっかりだし、、、それとも、いつも、そんな簡単に、合鍵を?」
「まさか。蒼夜だからだよ。」
「・・・」
「蒼夜、君、何か勘違いしてないか?僕は、最初の恋を失ってから、、確かにこれまで、多くの女と、、その、、寝てきたけど、誰とも恋人になったことはない。だから、家になんて入れたこともないし、鍵なんて触らせたこともないよ。」
「・・・ほんとに?」
「ああ。蒼夜。君は僕にとって最初から特別な存在だよ。だから、こうして家に連れてきた。合鍵を渡さなかったのは、、、ただ、、、重いかなと思ったんだ」
「重い?」
「ああ、なんかいきなり、、、合鍵なんて渡したら、、引かれるかなって思ったし。。それに」
「それに。。」
「それにさ、渡しちゃうと、ちょっと期待しちゃうだろ、僕?もしかして家にきて待っててくれないかな~なんて。期待してがっかりするのもヤだったし。その期待を蒼夜が重荷に感じてもやだったし・・」
そういってから、僕はもう一度、蒼夜に鍵を差し出す。
「蒼夜。蒼夜が嫌じゃないなら、受け取って欲しい」
少し笑って、
「期待するのは、ほどほどにするから」
そう付け加える僕を、そっと見上げて、蒼夜は、
「いいの・・?」
「もちろん」
蒼夜は、両手で大切に大切に鍵を包み込み、そして、言う。
「ありがとー。ほんとーに、嬉しい」
ありえないくらい幸せそうに微笑んで。

・・蒼夜。ただその無邪気な笑顔、守り続けたいと願う僕なんだ。


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最終更新日  2009.12.21 02:02:25
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