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「・・・いつかちゃんと話すから」
言いながら思う。 ・・・話すときには、きっと、私は。。もっと嘘をつく。 病気のことを話すわけにはいかないから。 新谷先生といたって言わなくちゃ、、ならないのかな。 本当は、病室で色んな機械に囲まれている私。ケースケのメールを受けて、停められる機械は止めてもらい、必要なモニターも、警告音以外の音が鳴らないようにセットしてもらってから電話をかけた。今、病室はとてもしんとしている。だから、電話の向こうのケースケは気づくはずがない。私が、こんなところにいるなんて。 ・・・?長い沈黙に、呼びかける。 「ケースケ?」 「・・・いいよ。分かった。でも、帰りに、そっちに、ちょっと、ちょっとだけ会いに行ってもいい?顔見たいんだ」 「ダメっ」 ・・ダメに決まってる。私は、実家にはいないんだから。 「そっちこそ早っ。それもダメなのか?じゃあ明日は?」 「・・明日も」 「・・・明後日は?」 「明後日も。とにかく~、1週間ずっとだ~めっ」 「本気?」 縋るようなケースケの声。 「本気だよ~?」 「・・ミリ~、俺、死んじゃうかも」 切ない言い方に、少し胸を痛めながら、私は、それでも茶化して言う。 「・・・・そういうこと言わないの~」 「ああ、なんかすっげショック。1週間もミリがうちからいなくなることも、ちっとも会えないことも、それに、ミリはそれを全然平気そうなことも。俺って、ミリの何?」 「・・・大切な恋人だよ?」 今は、まだ、私だけの。・・・今は、まだ。 「ほんとかね。。俺ばっかり好きみたいだよ・・」 可愛くつぶやくケースケ。私は、優しく笑って言う。優しく優しくいう。 「・・かわいいね、ケースケ」 ケースケは心外そうに、 「かわいいっていうなよっ。帰ってきたら、覚悟しとけよ。最初の頃のように、寝かせないからな」 「あはは、元気だね」 「ちゃんと、覚えとくんだぞっ?」 「はいはい」 「ん?何か暗い声じゃなかった?何、俺とするのいやか?」 「いやじゃないよ。大好きだよ?」 今は、まだ、ううん。ずっと、好きでいていい。。よね?そばにはいられなくても。 「俺が?それとも俺とのHが?」 「バカ。・・・両方」 「エロイな~」 「そっちでしょ?」 いつもどおりのやりとりが、私の心を戸惑わせる。 今はまだ。・・今なら、まだ。。って。 そして、つい聞いてしまう。未練がましくも。 「。。ねえ、ケースケ?」 「ん?」 「Hって大事?」 「おっと、それってなんかの罠?」 「何よそれ」 「ミリが一番大事だぞ?・・・でも、・・・Hもしたい」 「どのくらい?」 「そりゃ、毎日だよ。ミリの中に入るの大好きなんだ。幸せで」 だよね。そうだよね。Hが好きなケースケ。毎日したいよね。。でも、私は、きっと手術がうまくいっても、この先ずっと、2週間に1回だけしか。。 「・・・相手、ダレでもいい?」 「おま、怒るぞ?ミリの中って言っただろ?」 「1週間、、辛かったら、誰かとしてもいいよ」 「おいっ、怒るっていったよな?」 「・・・冗談だよ」 「笑えない」 「・・・だね。」 「ミリ?」 「ん?」 ケースケはたまりかねたように言う。 「一体、なんでなんだよ?」 「え?」 「なんでそんなこと言うんだよ?・・・俺のこと、、嫌いになった?だったら、はっきり言ってくれていいよ。言ったほうが、美莉が、ラクになるなら」 ケースケの寂しげな言い方。私は、全力で否定する。 「・・・まさか。大好きだよ。・・・死んでも、、愛してるよ、ケースケのこと」 愛してるって本気で本気で言う。 私の心に最後に残った、ううん、きっと、いつまでも残り続ける真実だから。 ←2コクリでよろしくお願いします。いつもありがとうございます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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