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2010.01.29
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カテゴリ:box
モニターが危険数値を察知したことを知り、僕は美莉さんの部屋に急ぐ。
あわてて彼女の病室の前に着いた、でも、鳴っているはずの警告音は止まっていて。

・・・中からは普通に美莉さんの小さな話し声が。

・・・まだ、電話してるのか・・?。
安定した話し声からして、やはり今のところはまだ、一時的な、発作のようだ。
ならば、話が終わってから、中に入ることにしよう。
僕はドアに背中をつけ、凭れた。
ドア越しに、だが、聞こえ続ける、美莉さんの声。
ドア越しに、だが、分かる。
それは、初めて聞く、彼女の、甘い甘い声。
僕の前ではそんな声で話すことはない。
父親である高崎先生の前でだってない。
彼女があんな声で話すのは、今の電話の相手だけ。
そう、慶介くんだけなんだ。
慶介くんと2人きりの時、だけの声なんだ。

分かりきっていたことながら、現実を目の当たりにして、僕は胸が締め付けられる。

・・・やっぱり、彼女が愛しているのは、彼だけなんだ。
病気を理由に別れることを決めていても。
それは愛がなくなったわけでは決してなく、
いや、むしろ、深すぎる愛のための、彼女なりの決断。

『・・・ありがと、ケースケ・・』

という言葉を最後に話し声は消えた。
部屋に入らなくてはいけないのに。
彼女の状態を確かめなくてはいけないのに。

僕はドアの前で動けない。

さっき、彼女への思いの封印を解いた僕には、
どんな顔で中に入っていけばいいのかが、思いつけなかった。

動けなくなった僕に、声がかかる。

「新谷くん?」
僕はぼんやりとした表情で、そちらを見た。高崎先生だった。先生の姿を見て、慌てて医者の自分に戻る。
「はい」
高崎先生は、いつもどおりの様子のまま、僕に言う。
「ミリ、まだ電話かい?」
「・・いえ。今終わられた様子で・・。さっきモニターが・・」
「知ってるよ。まあ、一時的なものだろうけれど・・。」
言葉とは裏腹に、少し憂い顔をした高崎先生は言う。
「ちょっと娘と話したいんだ。僕が行くよ。いいかな?」
僕はその言葉にむしろ救われたような気持ちになる。ほっと心でため息をつきながら、言う。
「はい。もちろんです。ではお任せします」
頭を下げ、足早に立ち去りながら、首を振る。

・・・こんなんじゃ、駄目だろ、僕。

もっと、しっかりしなくては。

医者としてももちろん、一人の男としても。

愛する人を守りたいなら。


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最終更新日  2010.01.29 10:31:36
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