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「お兄ちゃん、お帰り」
リビングに入ると瑞希が言ってくれる。1人行儀悪くソファに寝転んだままで。俺は向かいのソファにバッグを放り投げながら言う。 「ただいま、ってもまた、すぐ出かけるけど」 「え~?まだお仕事?」 俺は小さなクーラーからペリエを取り出し、キャップをひねりながら、 「い~や」 答えて、一口飲む。瑞希はそこで起き上がって、 「楓おねえちゃんとこに行くのっ?」 俺はビンに口をつけたまま、うなずいた。連泊になるから、ただ着替えにだけ、帰ってきたのだ。 「いいな~、私も一緒に行きたい」 妹のそんな無邪気な一言に、俺は飲んでるものを噴出しそうになる。 「だ~め。大体お前、、明日、学校だろ?」 「言うと思った。自分だって仕事のくせにっ。お兄ちゃんのけちっ。」 俺は笑って言う。 「けちってなんだよ~?」 「だって、お兄ちゃんばっかり独り占めして~」 「独り占め?って楓のこと言ってんの?」 「そうだよもちろん。だって、昨日だって、、、でしょ??」 「そうだけど。独り占めして当たり前だろ?楓は俺の恋人なんだ」 「でも、いつでも、遊びにおいでっていってくれたもんっ。」 「へ~」 「へ~って」 「楓は言ったかもしんないけど、俺は、言ってない」 「も~っ。」 瑞希は口を尖らせてしまう。相変わらずの、年の割には子供っぽい仕草。本当に、温室育ちのお嬢ちゃんらしいよ。 「兄ちゃんにだって貴重な楓との時間なんだよ~。分かるだろ?」 瑞希は、仕方ないなっとでも言うように、 「ねえ、でも、また会わせてくれるよね?楓おねえちゃんのこと大好きになっちゃったんだもんっ。陶芸も楽しかったし」 「いいよ、また、都合聞いとく。あ、そうだ」 俺は、楓から言付かったものを思い出し、ソファに置いたバッグから封筒を取り出して渡す。 「これ、楓から」 瑞希は受け取って、中の写真を取り出し、広げながら、 「あ、この間の写真だ~」 と楽しそうに見始める瑞希。俺は、その写真の中の楓に目をやる。 あ~、かわいすぎっ。一刻も早く会いたい。早く用意しよっ。 そう思ったときに、玄関で人の出入りの気配がした。 ・・・父さんのようだ。こんな早い時間に珍しい。いや、・・また出かけるのかもな、と思う。 「あ、パパだ」 瑞希が、写真を手に、そそくさとリビングから出て行く。 ・・・なんでだ?いつも玄関まで出迎えになんていかないくせに。 その瑞希の機敏さにあっけにとられて、後姿を見送ってから気づく。 ・・・ヤバイ。 っと思って、追いかけたけど、もう、手遅れで。 ←2コクリでよろしくお願いします。いつもありがとうございます。 今日のゆる日記の方は、こちらです。バカップルにご注意ください お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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