1014172 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

lovesick

lovesick

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

カレンダー

カテゴリ

フリーページ

コメント新着

windsurf4179@ Re:近況(05/08) お久しぶりです、福岡の加藤です。 何年振…
ぽわぽわ0127@ Re:近況(05/08) ひろさん! よかった♪たまには近況知らせ…
シゲタロス@ Re:近況(05/08) なんだか凄く久しぶり!! 帰ってきてくれて…
t-nik0618@ Re:近況(05/08) 良かった、仕事もできるようになったので…
ひかるですが…何か!?@ Re:近況(05/08) ひろ。さん、はじめまして。 こちらでコ…

お気に入りブログ

空想世界と少しの現実 緋褪色さん
きっくまーくのくだ… きっくまーくさん
無限の扉 yuto.さん
room47 shingo4711さん
ココロのまま るーじゅら。さん
     . ☆Yuri☆さん
不況に負けずに肝っ… かわちゃん4729さん
テレビでお馴染みの… 京師美佳さん
テイ・サックス病の… □■ぱん■□さん
食いしん坊のHappyLi… ぽわぽわ0127さん
2010.04.15
XML
カテゴリ:box
かあさんは、ダイニングテーブルで家計簿をつけていた。最近、老眼が進んだんだといってかけ始めた、まだ見慣れない似合わない眼鏡をかけて。カウンターの上では小さなテレビがつけっぱなしになっている。ラジオのように音だけ聞いているらしい。レシートや通帳をテーブルに並べ、小さな電卓をたたいている姿を見ていると、なんだか急に老け込んだように思えて、少し切なく、申し訳なくなってしまう。ミリと別れるなんて、親不孝をしてしまった自分が。

「ただいま」

俺が近づいても顔も上げないかあさんにとりあえず、そう言ってみると、
「おかえりなさい。お疲れ様」
とりあえず、そう言ってくれるかあさん。やっぱり顔もあげずに。
俺は、冷蔵庫から一本ペリエを取り出し、向かい側に座った。

何か言いたいことがあるはずのかあさんは、家計簿から手を休めず、
何か言わなくてはならないことがあるはずの俺も、ただ、言葉を捜し、
その空間には、しばしの間。

沈黙の中、所在無さに、テレビに目をやってみると、そこには、碓氷さんがいた。さっきまで一緒に舞台にいたから、一瞬戸惑ったが、もちろん録画。明るい陽光の差し込む広い部屋の中、すわり心地のよさそうな椅子が2脚。1つは碓氷さんが座り、もうひとつには、著名なタレント。今の舞台のことで、インタビューを受けていた。プロモーションの1つなわけだ。

ぼんやりテレビを見ていると、かあさんが、ぽつりと言った。
「・・・本当に、あなたたち、もう、終わりなのね」
いつも俺に話す時とまったく違うそのいたわるような口調に、きっとなじられると思っていた心が少し戸惑い、その戸惑いの中、かあさんの方を見ると、眼鏡はすでにはずし、いたわるような目で俺を見ていた。なんだか急に泣いてしまいそうな衝動にかられて、必死でこらえる。コドモじゃあるまいし、母親の前でわんわん泣けるもんか。失恋したくらいで。

・・・失恋、した、くらい・・・だって?よく言うよな。人生最大のダメージを受けているくせに。

自分で自分に突っ込みながら、涙がこぼれてしまわないように、俺も、質問した。
「ミリ、、どんな様子だった?」
・・・元気だったのか?心の中でそう付け加えながら。
母さんは、ひとつふっと息をついてから話し出した。今日のミリのこと。

「ミリちゃん、ヒロトの仏壇に、最後のお参りをさせてほしいって、言ってたわ」
「最後・・?」
「ええ。こんなことになっちゃって、申し訳なくて、もうここには来れない。だから、最後に、もう一度だけ手を合わさせてほしいって」
「これからだって、俺が、、いないときにくればいいのに」
「私ももちろんそう言ったけど、首を振って、これからは、お墓のほうに行くって言ってたわ。それで、これを」
かあさんは、テーブルの引き出しから、それを取り出して、テーブルの上をそっと滑らせるように、俺の前においた。
「この鍵を、お返ししますって。片付けが済んだら、連絡をするように、慶介に言われてたけど、、どうしても、慶介には連絡できなくてって。」
俺は、手を伸ばし、指先だけで、そっとその鍵に触れる。
「『とってもよくしてもらったのに、こんなことになってしまってごめんなさい。本当にごめんなさい』って何度も何度も謝ってたわ。可哀相に。。」

・・・謝る必要なんてないのに、ミリ。

「・・・泣いてた?ミリ」
ポツリと聞いた俺に、かあさんは、あっさりと、
「いいえ。全然。落ち着いた様子だったわよ。すごく、しっかりしていて、さすがに、いつもみたいに、人懐っこい笑顔を見せてはくれなかったけど、その分、大人びて、とてもきれいに見えたわ」

とても、きれいに。あの日電車で見たのと同じ。きっと何もかも決意して。

かあさんは、さっきまでのいたわるような表情はどこにいったのか、いつもどおりの意地悪顔で、続けた。
「少なくとも、慶介。今のあなたみたいにめそめそしてなかったわよ?」

出たよ。相変わらず、傷ついている息子に、容赦なく、キツい。


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ人気ブログランキングへ←2コクリでよろしくお願いします。いつもありがとうございますピンクハート



◎初めての方・目次ご利用の方はこちらへ(4/9更新NEW)◎

今日のゆる日記の方は、こちらです。ぽっバカップルにご注意ください大笑い





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.04.16 01:13:47
コメント(10) | コメントを書く
[box] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X