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2011.09.02
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朝。事務所で1人準備を整えていると、ドアの開く音。と、同時に、

「おっはよっ」

の元気な声。センセイ、の、登場。目を向けるのと同時に、続いて聞こえてくるのは、

「おはようございます」

の穏やかな声。今朝はケースケさんも一緒だ。普段なら、事務所前でセンセイを落として、そのまま出勤のはずだが、入ってきたということは、お子さんの保育園と、先生が、別会社で働く日の送迎の調整をするということ。ケースケさんは、簡潔にまとめた自分の予定表を僕に渡して、内容を告げながら、

「って感じですね。いつも、本当にすいません」

の丁寧な言葉をくれる。

「ごめんね、Mくん。よろしくっ」

軽い言葉を投げてくるセンセイは、例によってまだ私服姿でソファでだらりと過ごしていた。ちょっと呆れたように笑ってソファに近づき、ケースケさんは、

「サぁ、じゃ、俺、行くな」

センセイの頭を、軽く2度ポンポンとたたく。それを合図にセンセイも立ち上がり、

「は~い。行ってらっしゃい。ありがとね。私も着替えるか~」

って、ケースケさんは事務所のドアに、センセイは母屋に続くドアに向かいかける。

その2つの背中に、

「すいません」

と、声をかけた。

「はい?」
「ん?」

振り返って、それぞれに、疑問系な顔を向ける。少し躊躇したが、訊ねることにする。

「お2人は、年末年始の予定ってもう入ってますか?」

「・・・年末年始?」

異口同音に言いながら、お二人は顔を見合わせる。先に口を開いたのはセンセイの方で。

「休みたかったら好きなだけ休んでいいよ?だったら私もMくんのせいにして休めるし。送迎なんかなんとでもなるし。カノジョと旅行??」

って、さっき送迎のこと話してたから、そのことだと思ったみたいだ。

「ありがとうございます。ただ、ケースケさんの予定が空いてないとちょっとその予定は変更というか」

なんだかストレートにいうのも照れるから、歯切れ悪く言う僕に、

「ああ」

そういってすばやく手帳を取り出し確認したケースケさんがにっこり笑って言う。

「それは、おめでとうございます。大丈夫ですよ。空いてます」

僕はほっと安堵の息をつく。

「そうですか。よかった。ありがとうございます」

「場所とか、日程とかは、もう?」

「いえ、まだ、ケースケさんの予定を聞いてからと、思ってて。いろいろ相談にも乗っていただきたいし。ただ、できれば、再会してちょうど1年なんでその頃にできればな、と」

「ああ、ああ、そういえば、そうでしたね。ていうか、カノジョさんの方の確認は済んでるんですよね?」

そんな言い方で少し楽しそうに訊ねるケースケさんに、

「ああ。それは、まあさすがに」

そう答えると、

「・・・・ねえ、2人、さっきからなんの話?どこにいるか全然見えないんだけど」

全然、ついてこれてなかったらしいセンセイが焦れたように割って入る。ほとんど口をとがらせかけているセンセイに、僕は、ケースケさんと目を合わせてから、言う。

「僕、結婚することになりました」

センセイは、一瞬、ぽかんとした後で、

「ぅええっ??ほんとに??ていうか、早っっ」

って心おきなく驚いてくれる。

「ていうか、サぁ、おめでとう、は?」

ケースケさんに、苦笑しながらたしなめられて、センセイは、

「あ、わ、え、あ、そっか。おめでとー。おめでとーございますっ」

って、嬉しそうに言ってくれた後、

「なんだー、そうかー、そうなんだー。えー??すごーい。うわー。ついこの間、再会したばっかじゃない?うわー。そうかー。おめでとー。あー。なんか、すっごい、照れる・・・ってなんで私が。。」

とかブツブツいいながら、ドアの向こうに出て行った。僕と、目を合わせて微笑んだ後、時計に目をやったケースケさんに、

「すいません。朝からお時間とらせて」

「いえいえ、おめでたい話題で嬉しいですよ。じゃあ、また、日を決めてカノジョさんと一緒に打ち合わせしましょう。俺のスケジュールは空けておきます」

「よろしくお願いします」

「ていうか、サぁ、取り乱しすぎですよね?なんだよ、俺に、なんも言わずに行っちゃったしな~。」

ってケースケさんもブツブツ言いながらドアを出て行った。

また1人になった事務所。2つのドアに目をやり、時計を見てから、僕は静かに仕事に戻った。

だけど、それも。

スーツに着替えたセンセイが、ネホリハホリ聞き出そうと、目を輝かせて戻ってくるまで、のことだったけど。

-了-





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最終更新日  2011.09.02 22:47:11
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