ベッカム隊長のてくてくトボトボ歩き旅

​​​​​　花のいのちは・・・
　

　「海が見えた。海が見える。五年振りに見る尾道の海はなつかしい」(林芙美子『放浪記』より)

　一瞬座り込んで携帯で誰かと喋ってんのか⁉・・・と思ってしまった。
　「今どぉ～こだ」
　「波の音がするなぁ～」
　「ウワァ～凄い！」
　「まさか尾道⁉」
　んなことはないか・・・

　2010年7月15日・木曜日

　JR福山駅に行き，そうだお城を見ていないなぁ，と思ったので・・・
　
　慶長20年(1615)の一国一城令発布で造られた城だ。家康の従兄弟水野勝成が城主となり5代続いた。
　以後，天領となった後，松平忠雄が山形藩より移封。10年後，阿部正邦が宇都宮藩から移って来て，10代続いて維新を迎え，版籍奉還となった。

　南口に五浦釣人像がある。ツーショットで​“パシャッ！”​
　
　私のむくんだ半分寝ているような表情が勝ってしまって・・・
　福山出身の作家井伏鱒二氏の姿をモチーフにしているのかなぁ～・・・と勝手に思っていたのだけど，平櫛田中作で，田中が崇敬する岡倉天心が五浦に移り，横山大観など多くの偉才を育てたことを釣りにたとえ，師に対する報恩の気持ちを込めた会心の作と云われている。
　昭和50年(1975)山陽新幹線開通と新しい福山駅舎落成を記念して建立されたそうだ。

　旅打ち2日目。
　神辺から今日は尾道を目指して歩く・・・
　​​

　8時30分に街道に出る
　一谷の信号で左に進み，神辺第一陸橋(南)で国道313号線に合流し，陸橋を渡ったら，蓮池の畔の道を行き，また313に合流して，JR福塩線のうっとうしい踏切を越えて，高屋川を鶴ヶ橋を通って渡り，新茶屋の交差点を左折・・・という感じ

　ホロコースト記念館があった。会館まで30分まだある。ジッと待つのもなぁ・・・。
　
　平成7年(1995)6月に聖イエス会御幸教会内にオープンしたのが最初で，大塚信氏がアンネ・フランクの父親のオットー・フランクと知り合い，平和への情熱に感銘したことがきっかけだったという。
　平成19年(2007)9月30日，この地へ移転したのだそうだ。

　道なりに大渡橋に向かう・・・
　
　今にも潰れそうな牛舎からモーモーの声・・・

　芦田川を渡る・・・
　
　
　西詰の信号のちょっと先の道を左折
　しっとりと濡れたような空気の中を進んで行くと・・・
　
　思わずシャッターを切りたくなるような鳥居があった。アスファルトで道が固められてしまったことで，なんだか佇まいがイマイチになってしまった感・・・

　二本松のバス停があるところで，県道378号線に合流し，しばらく行くと江良一里塚跡碑があった。
　裏側から
　
　
　雨も上がり，暢気な街道歩きだが，車も増えてきた・・・
　

　地蔵さんと旧一本松跡の碑・・・松喰い虫によって昭和60年(1985)に伐採したのだそうだ。
　碑を造ってまで語り伝えようとする程，この地域の人々に親しまれていたのだろう
　

　やがて道は備後赤坂に入って行く・・・
　
　駅前右手にスベリ石古墳がある。地蔵尊や道祖神も道々に置かれている。

　やがて国道2号線に合流し，神村小学校入口を右すぐ2号線に合流し，今度は西署入口の交差点で三差路になるが，真ん中の右への道に入って行く
　
　干されたシャツのよれっと感がいいっすねぇ～・・・」

　「OH！・・・スワローズ」
　
　
　スーパーニチエーを左折今津町大正の交差点で2号線に合流したが，石津産婦人科の手前の二股を左に入って行くのが旧道だったかもしれないと思った・・・まぁえぇは・・・
　バスセンター前の信号を右へ
　吾妻橋を通って本郷川を渡り，今津宿に入って行く・・・大同2年(807)創建の薬師寺があり，立派な本陣庄屋河本家がある。蓮華寺がその先にあるが，ここが脇本陣，薬師寺とともに創建されたお寺だ。
　薬師寺が東方院，蓮華寺が西方院とも呼ばれているそうだ。
　陰陽石神社や成願寺を見ながら進み，藤井川を真田橋を通って渡ってしばらく行くと，尾道市に入ったという標識が出てきた。
　
　今宮東の交差点で国道2号線に合流し，高須八幡神社手前を右折

　道祖神や讃大松の碑やらを見ながら，うねるように続く道を歩いて行くと・・・尾道バイパス東口の信号に突き当たった・・・
　ここを右折して西瀬戸尾道ICを抜けて行く・・・
　
　で，どっちなんだぁ～・・・と思いながら，潜って左折

　
　なんだか水浸しなのだ
　潜った先にGSがあり，池があり，またバイパスを潜って左折
　

　道がこれであってるのかどうかもよくわからなかったが・・・
　「従是西　藝州藩」
　

　防地峠の番所址に出た
　
　
　「従是東　福山藩領」
　

　うねうねとしたお淋し道路を降りて行くと，尾道東高校が見えて来て，ちょっとホッとする

　防地口に辿り着くそして，金座街を歩き，右折して長江口へ行く・・・
　

　千光寺界隈や志賀直哉旧居界隈を歩く・・・
　
　
　志賀直哉旧居から撮った風景・・・
　
　縁側からこんな景色を眺めながらものを書いて暮らせたら・・・

　埠頭へ行ってしばしへたり込む・・・
　

　向島へ渡ったり，やって来たりするフェリーが頻繁に行き交っている・・・
　

　林芙美子さんに会いに行く・・・
　

　“てっぱんや”という店で広島風お好み焼きを食す・・・
　
　ソースのこぼれ方がイケてるねぇ～・・・

　17時10分・・・8時間40分も歩いたのかぁ～・・・
　JR尾道駅で​​“パシャッ！”​​
　

​　福山のビジネスホテルに戻ったら，オーナーのおばさんが，ランドリー無料で使っていいよ，と言ってくれた。なんとなんと・・・カバンも汚れ物も全部まとめて洗濯し，乾燥機にも入れた。両方ただ。
　街はいつもそこにある。俺のことなど関係なくそこにある。こうしてゆっくりゆっくりてくてくトボトボ歩いて行くと，そんな街にかってに連れていかれているような錯覚がしてくる。
　宅配便も郵便配達のバイクの人も，自転車の乗ってトロトロ走っているオヤジさんもあいさつしてくる小学生も，チワッ・・・の高校生も，駅員も・・・みんな俺のドラマのエキストラの人のようで・・・
　そんなふうに独善的に思えてしまうほどみんな適役なのだよ・・・街も人も気張ることなく俺に当たり前の，今の姿を見せてくれているのだ。
　勝手にその日歩き旅でやって来ただけのオッサンのために気取ることも取り繕うことも何もないのだ。
　あたり前の時間が流れていることが大切なのだ。
　家族に電話しよう
　「もしもし，オレ・・・そう尾道まで行ったよ・・・あぁ今度なみんなで行こう・・・」

　そんなことを口にしてから，9年近くが流れた2019年の夏・・・家族と帰省の折にオーバーランして・・・ちょっと広島の旅を計画し，この街にやって来たのである
　
　お好み村の“大丸堂”へ家族を連れて行きたかったのでこの旅の機会に・・・
　
　シンプルなネギ乗せが一押しである・・・

　9年ぶりに再会・・・
　

　急坂を歩くことにも味わいがある・・・
　

　カフェでひと息・・・
　

　志賀直哉旧居の縁側から街を臨む・・・
　

　千光寺の塔が見えている・・・
　
　大林宣彦作品には欠かせない街だ・・・映画『転校生』を観た時のおかしさと痛快な爽やかさは，今も心に刻まれている・・・

　“たに”というお店に入った・・・
　

　尾道ラーメンを食して・・・
　
　
　実家に帰る道筋を利用した，2泊3日の帰省オーバーランの旅はこうして実現されたのだ・・・

<2010年7月15日(木)の旅日記に写真を編集し，2019年12月28日(土)・29日(日)のことなども加えて，020年5月30日(土)に記>​​