小説『Atomic City』第1章 第1節
第1章 第1節 2195年 4月28日 3時間目 地学の授業 食後のだるい感覚に襲われながら本来ならうとうとしている所なのだが地学は 外での実習が多い。そのためカイ.βは 月曜と木曜の地学授業前 昼食を軽く済ましていた。時間の殆どが土や砂 鉱物の調査.採集にあてられかなりの体力も必要になる。地質の調査には 昔ならではの手動ボーリングが使われていた。オノ教授曰く「学生には 機械に頼らないで人は何が出来るか知ってもらいたい」との指導方針からだ。「とかく世の中は 機械まかせで困るなぁ。」が教授の口癖でもあった。カイ.β自身 入学以来 6回の授業中20回以上は聞いていた。「まあ 当たってるな。」とは 思うが毎回聞かされるとうんざりしてくるものなのだが 本人は気付いてないようだ。何にしても体を動かすのは悪くない そう思ってる学生が多いいのも事実だが内容がハードなのも事実だった。二回目の授業でパイプレンチを任されたときは 手の皮がべろ~んと剥けあまりの痛みと情けなさで 涙が出そうになった。しかしまあ 40人近い学生の前で泣くわけにもいかず「なんともないですから。鉄棒よりぜんぜん楽ですね!」なんて言ったもののしっかり消毒と携帯医療機のお世話になっていた。大学の携帯医療機は 世界で最も優れた性能を備えているそうだ。軽量ながら 投薬,再生手術などを凄い速さでこなす。たとえ複雑に骨が折れても数分で完治 手足がちぎれても遺伝子レベルで元どうり治してしまうのだ。実験段階では 全身再生に成功していると校医の先生が言っていたが...まったくそんな目には遭いたくないものだとカイ.βは思っていた。 今日の授業内容は 水上船で水中都市の地質調査である。大学からの移動に使う船は 教授お手製のファンが6つ付いた作業水上船。真下に2個 後ろに2個 左右に1個づつファンが付いていた。オノ教授曰く「230年前位に造られた型でね 速くてバランスも良く沈まないから私に似てるんだよ わははは...」との事である。実際のところは 人型工学部の学生達にファンのバランサー製作を依頼していたそうだが 材料の溶接や設計も全部1人でやったそうだから大したものだ。座席は クラッシック調の骨董品ばかりで大富豪になった気分を味わえるし デッキ全体の雰囲気もダンスパーティーが出来そうなほど 味のあるもので みんなの受けも上々。特に5人の女学生には 大受けであった。その5人の中でも特にリオナ.ビートは この船を気入っていたようで毎回 水中都市調査を楽しみにしていたみたいだ。 彼女は カイ.βより3歳年上 風にたなびくフワフワした黒髪がとても魅力的な女性 美しくそれでいて子どもじみた部分も有った。女性とあまり話さない彼であったが 彼女とは 不思議と話が弾みいつも笑顔で居られる時間が楽しかった。15歳で大学に入学したため周囲との年が離れていたカイ.βにとって頼りになる女性でもあった。カイ.βは 政府のプロジェクトにより優遇されていたがそれに頼らない部分が周りの学生に年に関係なく受けていたようだ。なにせ彼が頼めば金額に関係なく数分で欲しいものが手に入るのだが。。なぜかカイ.βは それを嫌っていた。中学.高校と年齢差のなかで生活していた彼にとってこういったことは当たり前であったが入学式の写真撮影時には 同級生の年齢の幅に驚いたようだ。今年度の同級生の年齢幅は 12歳~85歳。最高の開きでは 11歳~102歳だったとか。。何にはともあれリオナ.ビートの存在が カイ.β.クラインのなかで日々大きくなっていくのであった。 小説『Atomic City』より 著作権は Kaizuに属します