飛翔
飛翔 08.3.26案山子疲れ果てた青龍がそっと身を横たえた沼地その吐く息はすべてを氷塊に変えてしまうむしろ過ぎ去った日々の骸を放り投げる魂存在のない実体は矛盾だらけの足跡を残しずぶずぶと過去の暗黒地へ引きずられつつ絶望は絶叫の音響を木霊に変えて繰り返し何れは万物の定めの滅びの世界の旅に出て原始の薄暗い森の悲鳴を幾万年間聞き流し疲れ果てた青龍が身を横たえた沼地の中に深く淀んだ希望の水脈を探るすべも絶えて何の存在もない化身の白拍子が纏わりつき静かに鷹揚に琥珀色の目を開く一頭の青龍隅々の鱗が逆鱗に触れその恐怖を知らしめぽたぽたと血が滴り落ちる程無念の形相に雲間より一条の来光が静かに振り注ぐ瞬間四肢が輝いて青龍の咆哮が木々の葉を散しのたうちまわるその身が七色の光に包まれやがて燐光を発すその姿は太陽神の化身か沼は甘露の水を湛えた漆黒の湖に姿を変え天空からの導きを受けた青龍が今飛翔する