映画 バッテリー
鳳凰マークが出るまで、角川映画だということを忘れていました。原作エピソードをうまくとりあげつつ、その結末はいれず、大きな枠での「原作通り」という印象。うまくまとめたとは言えるんじゃないでしょうか。雄大な自然を背景にしている分、家の裏庭なんかのセットのチャチさに苦笑。いかにも「作りました」感が漂っていて、角川映画はこうでなきゃなぁ、と。豪(山田健太)はさておき、巧(林遣都)の予想以上の体格のよさにちょっと驚く。巧がとてもよく笑う。というか、笑む。対青波(鎗田晟裕)にしろ、対友人にしろ。マウンドに立つときや他のシーンでの眼光がきついだけに、この年代特有の不安定さがにじみ出ていて、これもまたいいキャスティング。豪はとても豪。よく見つけてきたなぁ、という正直な感想。自分の弟の声(あの当時)にそっくりでこそばゆかった。戸村(萩原聖人)は割りとはまってました。ああいう中学校教師っていましたね。すぐに手が出る先生でしたが。手が出ないあたりは本当に時代だと思います。展西(木林宏朗俊)の小狡さも含めて。自分の世代であの状況だったらどうなるかを想像してみたり。確実に戸村的な先生+主任に叩かれて叱られるな。 エピソードの前後を削っていたりするせいか、小野(上原美佐)の存在が薄い。原作を読まないとわからなくなってると思う。もったいない。父・広(岸谷五朗)のヘタレ度・今更言うかもっと前に言ってやれよ度は原作4割増し。母・真紀子(天海祐希)。これを見たいがために映画を見たといっても過言ではない。原作の気持ちわるさそのままの気持ちわるさ。(褒めてます。最上級に)予想通りで感動した。原作を読むのが途中から厳しく感じたのは、この真紀子と原作者の無意識であろうあれやこれやが原因だったんですが、映画でここまで(いろんな意味で)やってくれたらもういいかな。原作通りといえば井岡洋三(菅原文太)もまた然り。 個人的なヒットは瑞垣(関泰章)。中学3年だから、ということで体格云々はおいておく。が、リアル年齢で巧と丸10歳違うらしいことを発見して衝撃をうけました。だからこそ門脇(渡辺大)に対してのスタンスがよかったのか?原作に近いといえば門脇なんだけれど、 この瑞垣はとてもいい。腹に一物あるだろうというのが透けて見えるけれど、それが対門脇に顕著であるとわからないのがいい。海音寺(矢崎広)のはしょられっぷりに涙。いち野球部員の扱いはないだろうよ。正直な感想としては、まぁこんなもんかな、と。うまくまとめてはいるんじゃないでしょうか。原作未読ならそれはそれで。既読なら脳内補完で。原作が三人称をとりながら各登場人物の感情・心情描写を多用しているだけに、映画での再現というのはまず不可能。映画に期待をしなくなったなぁ、と思う今日この頃です。