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2010.08.08
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註※このページは、本来「覚醒都市DiX」で公開する予定の「幻想水滸伝4」二次創作小説「クォ・ヴァディス」の改定ページ、新規ページを、サイトに先駆けて公開しています。
 そのため、後に「覚醒都市DiX」で公開されるものとは内容が変更される可能性があることをご理解ください。



クォ・ヴァディス41-3



 わが意を得たとばかりに、ミツバは大げさに剣を構え直す。

「よっしゃ、お仕置きターイム!
【罰の紋章】に恨みはないけど、あんなひきつった笑いを連発されたら、英雄の威厳も何もないでしょ。
 すぐにお目覚めさせてあげるからね、マクスウェル様」

【……………………】

 目前の状況が予想外の展開になっているのが、彼なりに不愉快であるのか、【罰】は口元をゆがめる。
 が、言葉は出さない。
 一言も発せずに、二刀を構え直す。
 ミツバは以前、マクスウェルと対決したことがあるが、そのときの彼とは構えが違う。
 マクスウェルは身体を相手の正面に向け、両の剣先を顔の前に持ってくる。
 常に攻撃にも防御にも最速で対応できる、無駄の無い構えをする。
 だが、今の彼の構えは違う。

(え?)

 と、それを見たミツバが驚いた構えだ。
 やや腰を落とし、肩口を敵に見せる極端な半身から、左剣をぐっと前方に突き出し、右剣先を後背に向ける。

(これ、ガイエン騎士団の構えだ)

 右と左が逆で、片手剣と二刀の違いこそあるが、構えそのものは間違いなく、以前、ガイエン海上騎士団で標準的に教えられていた剣の型であった。
 当然、ガイエンの海兵学校で剣を学んだマクスウェルも、いやになるほど身体に叩き込んだであろう。

「そっか、そういうのに頼りたくなるほど、君も無意識にあがいてるんだね」

 ちょっと見直したように呟くと、ミツバは大きく剣先をスウィングして「罰」に襲い掛かる。
「夜」に身体を操られていた先ほどまでよりも、さらに大雑把な動きだ。
 乱雑極まりない動きだが、「罰」は奇妙にやりにくそうに、その剣をかわし、いなす。
「罰」は様子を見ているようで、反撃に移る様子は無い。

 動きは乱雑だが、ミツバの剣は速い。剣の動き、身体の捌き、なによりも精神の切り替えが、凄まじく速い。
 大振りの一撃をかわされた次の瞬間には、もう次の一撃の準備が完璧に整っている。
 かわされるのが前提、一撃でも当たればそれでOKという、シンプル極まりない戦いかただ。
 たった一撃でも、ミツバのパワーを持ってすれば、充分にそれで勝負がつく。
 ミツバはこのスタイルに馴染みきっているから、迷いもなにもない。
 相手の都合などお構い無しに、ひたすら自分の好き勝手に剣を振り回す。
 この傍若無人さが、マクスウェルをしてミツバを恐れさせた理由だった。
 ミツバの剣には、闘争心も、殺意も、憎悪も無い。
 そもそもミツバの剣は、誰に習ったものでもない。
 ただひたすら本能で戦う。楽しいから戦う。
 それも、恐ろしく純度の高い剣才を内包した本能だ。
 異常に敏感な「嗅覚」が、次に打ち込むべき場所、次に守るべき場所を、相手よりも早く察知し、単純にそこに剣を持っていく。
 相手がミツバの動きを読める要素が、ほとんど存在しない。
 マクスウェルの剣も、相手によっては充分にデタラメな剣術だが、ミツバの剣はデタラメの度合いが違っていた。

「どうりゃあー!」

 どこか楽しそうに叫びながら、ミツバの猛攻は続く。
「罰」は無言のまま、それをかわし続けている。
 ミツバも気付いているが、先ほどよりも「罰」の動きがなんとなくギクシャクしていた。
 時折、微妙に動きにくそうな仕草を見せている。

(やっぱり、あの「歌」が効いてるんだ)

 ミツバを正気に立ち返らせた「歌」は、まだ周囲に悲しげな旋律を投げかけている。
 その旋律が、マクスウェルの覚醒を促し、「罰」の支配を弱めている。
 何らかの形で決着をつけるなら、あの「歌」が終わる前につけなければならないかもしれない。
 ミツバは剣を大振りしながら、叫ぶ。

「こぉら、いつまで寝てるの、マクスウェル様!
 あんた、ぐーたら寝てる暇なんてないはずでしょ!」

 叫びながら、一歩、また一歩と踏み込む。
「罰」は無言のまま、引きつった顔をしている。
 あやうくミツバの剣をしのいでいるが、一度マクスウェルと戦ったことのあるミツバは、彼の「捌き」がこんな不器用なものではなかったことを、よく覚えていた。
 ミツバは、戦闘中の空気を読む能力は怪物並みだ。
 相手が心の中でたじろいでいるのを敏感に察知して、攻めの間隔を徐々に詰めていた。

「いちいち深刻に考えるあんたのことだから、なにもかも抱え込んでウジウジしてるのかもしれないけどさ。
 結果で出るときゃいやでも出るんだから、いちいち気にしてても仕方ないでしょうが」

【……………………】

 ミツバが圧していることは間違いないが、マクスウェルだけでなく、ミツバの動きも目に見えて衰えてきている。
「夜」に操られていた時間を含めると、ミツバは三十分近く全力で動き続けているのだ。
 さすがのミツバでも、身体がオーバーヒートしてくるのはどうしようもない。
 ミツバはいったん間合いを開けると、真剣な視線で「罰」を貫いた。

「タルさんから聞いたよ。ジュエルちゃんを助けるんでしょ?
 だったら、【罰の紋章(そんなもの)】に乗っ取られてる時間があったら、もっとやらなきゃいけないことがあるでしょ!」

 無茶といえば無茶な言い草であったが、ミツバとしてはほぼ百パーセント本音であった。
 ミツバは、真の紋章がどれほどのものかなど、眼中に無い。
 ただ、マクスウェルがもどかしい。
 大きな目的を持ちながら、こんなものに悩まされているマクスウェルがもどかしい。
 その剣と同じく、ミツバの生き方はシンプルだ。
 結果など考えても仕方が無い。まず動けるだけ動いて、悪い結果が出るなら仕方が無い、とわりきっている。
 それだけに、自分を打ち負かした「強いヤツ」が、こんなものに悩まされている現状がもどかしかった。
 ミツバは剣を水平に構える。

「もっと……」

 そして、一気に間合いを詰める。

「人生を……」

 叫びながら、水平に構えた剣を天に振り上げ、

「楽しめー!」

 マクスウェルの頭上から、その剣を一気に振り下ろす。
 いくら「罰」にのっとられていても、マクスウェルがこんな大げさな一撃に倒されるはずが無い。
 確信に近いその思いが、ミツバに容赦させなかった。
 いくら満身創痍でも、目の前の相手は一度、自分に勝っている。
 ミツバは、群島解放戦争の最初から最後までマクスウェルとともに戦った、数少ない人間の一人だ。
 彼の気性も能力も、よく理解しているつもりでいる。
 だから、自分の剣を「罰」が二刀を交差させて受け止めても、不思議には思わなかった。
 ただ、受け止めた瞬間に飛び散った「剣気」が、一瞬前のものとは違う種類になったことに、不思議さを覚えた。
 彼は間合いを離すと、大きく肩で息をしながら、ミツバに顔を向けた。
 彼は、口を開いた。

「もっと人生を楽しめ、か。
 知らないと思って無茶を言ってくれるな、ミツバ」

 言って、彼は苦笑した。
 その表情に、先ほどまでの剣呑さも、ひきつった笑顔も無い。
 疲労の色は濃いが、普通の人間味に溢れていた。
 マクスウェルが、目覚めていた。
 ミツバは満面の笑顔で頷く。

「罰の紋章は?」

「「彼」に俺を「殺す」つもりは無いよ。
 俺との同化を望んではいても、俺の意志を尊重してくれているようだ」

「そっか」

 もう一つ大きくうなずくと、ミツバは再び剣を構えた。

「お互いに疲れてるけど、もうちょっと動けるよね?」

「ああ、本当にもうちょっと、だけどね」

「じゃあ、もうちょっと楽しもうか?」

「そうだな」

 疲労から少し前のめりになりながらも、マクスウェルも二本の剣を構える。
 先ほどまでの、ガイエン騎士団の型ではない。
 彼本来の構えだ。

「どうしてかな、ミツバ。
 前に戦ったときは、もう二度と君とはやりたくないって思ったんだけど、今日は違う。
 なんにも考えずに全力を出し合えるのが、凄く楽しい」

「そこで考えるからダメなんだよ、君は。
  楽しいなら、何も考えずに、いまを楽しめばいいじゃん!」

「なるほど、もっともだ!」

 マクスウェルは、【オベリア・インティファーダ】を名乗ってから初めてとも言える笑顔を、無邪気な剣客に向けたのだった。






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最終更新日  2010.08.08 16:37:25
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