おいでやす。郡山ハルジ ウェブサイト。

2011/03/19(土)02:00

こんなときに何ですが、インタビュー(1)

マラソン/山/トライアスロン(227)

聞き手 こんにちは。 郡山ハルジ こんにちは。 聞き手 何だか大変なことになってますね、ご実家のほう。大丈夫ですか。 郡山 はい。先日ようやく電話で親と話したんですが、近親者はみんな無事だったみたいです。津波の被害を直接受けた地域に住んでる親類も、ほかの家が津波に流されてもその人の家だけが助かったりしたらしいです。 聞き手 それはスゴイですね。 郡山 母親も奇跡だと言ってました。実家の近所は電気も通っていて、それほど不自由してないみたいです。父親なんかはむしろこの状況をエンジョイしているフシさえあります(笑)。 聞き手 さすが鬼畜パパですね(笑)。 郡山 仕事を離れてから退屈していたと思うので、こういう修羅場にワクワクしているのかも知れません。 聞き手 こんなときに何ですが、そろそろ話をアコンカグア登山に移らせていただいていいですか。 郡山 はい。ボクも地震についてはテレビと新聞の情報しかないし、特に北米では地震のニュースといっても福島原発の件が中心なので、あんまり話せることがないですし。 聞き手 そうなんですか。ではまず、今回は登頂に失敗されましたが、ズバリ、敗因は何ですか。  郡山 ズバリ、そこから来ましたか(笑)。敗因は、ひと言でいうと準備不足です。 聞き手 装備が不十分だったとか、そういうことですか。 郡山 いや、ローシーズンに単独でアコンカグアに登るだけのトレーニングや心の準備が出来ていなかったということです。 聞き手 ははあ。ピークシーズンに比べて雪が深く、いっそう寒い環境への対応が十分ではなかったと。 郡山 そうです。寒さのほうは準備できていましたが、雪の中をアイゼンをつけたプラスチック・ブーツを履いて山を登るという訓練が足りなかったみたいです。ふつうの登山靴というと片方でだいたい700gくらいなんですが、プラスチック・ブーツは1キロちょっとあって、それにアイゼンをつけると1.5kg、ふつうの登山靴の倍くらいの重さになります。これを一歩一歩、雪から引っこ抜きながら歩くのが大変でした。 聞き手 ピークシーズンだと頂上の直前まで雪がほとんどなくて、アイゼンなしでも登れると聞いていましたが、やっぱりローシーズンはそこが違うわけですね。 郡山 はい。標高5500mにあるハイ・キャンプのニド・デ・コンドレスから上はしっかりと雪が積もっていました。冬山に慣れている人じゃないと、にわかにアイゼンをつけたプラ・ブーツで登るのはキツイですね。 聞き手 なるほど。郡山さんがプラ・ブーツとアイゼンを履いたのは、年末のホワイト・マウンテンが初めてでしたもんね。 郡山 あと、3月に入ると、午前中は比較的天気がいいんですが、午後になると天気が変わりやすくなります。ハイ・シーズンなら夕方午後5時くらいに登頂した話をよく聞きますが、ローシーズンだと午後3時くらいには下山を始めていないと吹雪に巻き込まれるリスクが高くなります。それを考えると、登頂日、早朝のまだ暗い5~6時くらいに登攀を始めても、登頂まで9時間くらいしか猶予がない。じっくり10時間以上掛けて登っているような余裕がありません。 聞き手 郡山さんは標高6400mのインディペンデンシアで登頂を断念されていますね。 郡山 はい。インディペンデンシアは、アタック・キャンプと頂上のほぼ中間地点にあるんですが、そこにたどり着くまでにすでに5時間近く掛かっていました。結構ゆっくりしたペースで登っているグループにさえ追い抜かされていました。おまけにインディペンデンシアから先の坂の急なこと!仮にそれまでのペースで登攀を続けられたとしても午後3時までに頂上にたどり着けないのは明らかだった。その時点で「諦めよう」と思いました。これがその時に撮ったビデオです。 聞き手 あの、雪の坂を上っている登山者の一群が写っていますね。 郡山 はい。インディペンデンシアの手前でその一群に抜かれました。抜かれた時、最後尾のオッサンに、「ヨタヨタと危なっかしい歩き方で登っているのを後ろからずっと見てたよ。ローシーズンにこんな好天に恵まれることは滅多にないんだから、ムキにならずに風景をエンジョイしたらどうだ。」と言われました。ド素人が登頂目的でにわかにアイゼンなんか履いて登っているのというのがすっかりお見通し、という感じでした(笑)。 聞き手 そのオッサンのひと言が、登頂断念の決断に結構結びついてたりするわけですか。 郡山 そうですね。それまでは足元を見ながら一人で黙々と…というか朦朧と登っていたんですが、その人に声を掛けられて我に返った…というところはあります。 聞き手 あ、朦朧としてたんですか、やっぱり(笑)。 郡山 そうなんですよ。前日までまったく高山病の症状も出ず、ほぼ完璧に高度順化が出来ていたのに、前の晩にほぼ一睡も出来なかったんです。テントを張るのが面倒で、ベルリン・ハットという山小屋に泊まったばっかりに。 聞き手 もしかして、山小屋で幽霊が出たとか(笑)。 郡山 はい。心霊現象としか思えない経験をしました。 聞き手 えええ、マジですか? (つづく)

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る