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劇場通いの芝居のはなし

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2017.12.07
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カテゴリ:演劇史
順序は不確かですが、『じゃじゃ馬馴らし』『真夏の夜の夢』『ヴェニスの商人』『お気に召すまま』が四大喜劇と呼ばれます。『お気に召すまま』ではなく『十二夜』を入れる説もあり、わたしもこの作品の方を推しています。『お気に召すまま』は "As You Like It"
『十二夜』の副題は "What You WIll"(お望みのもの)というわけでよく似ています。ヒロインが男装し、彼女が愛する男は彼女を男と思い、また男装する彼女に恋する女性が出てくるという展開や、音楽が多用され、明るく楽しい雰囲気に満ちている点で、この2作は双子みたいに思われます。
シェイクスピアの喜劇は、おかしなプロットや言い間違い、地口の類いによる笑いも、もちろん多いですが、芝居全体の気分が快く、朗らかであることが魅力です。妖精たちが活躍し、惚れ薬が恋人たちの関係をシャッフルしてしまう『真夏の夜の夢』など、その典型で、観客は愉快な気分の中で、安心して笑っていられます。絡み合ってくる職人たちの滑稽は、飾らない庶民の姿を示し、芝居の表現に対するパロディまで見せてくれます。そして異質の世界を一つの芝居にまとめ上げる作者の技術を感じられます。
『じゃじゃ馬馴らし』と『ヴェニスの商人』はイタリアの物語に種を持ちます。シェイクスピア劇にはイタリアに舞台を置いたものがかなりあります。持参金を目当てに、じゃじゃ馬な娘を、策略をもって自分に従順な女房に仕立て上げる『じゃじゃ馬馴らし』は、登場人物たちの関係においても、ローマ新喜劇の流れに乗った「笑劇」的作品です。しかしこの芝居には、じゃじゃ馬な妻とそれを馴らす夫の間に、他のペア以上に信頼と愛情が芽生えてくるのが感じられます。またこの芝居は、全体が劇中劇形式をとっていますので、その結末が異なって見えてくるかもしれません。
『ヴェニスの商人』は、どこか暗さを漂わせる作品です。架空の島ベルモントにおける、妻を手にいれるための「箱選び」のプロットなどは、おとぎ話めいて楽しいものですが、現実のヴェニスにおける事件、借金の担保に体の肉1ポンドを切り取られる、を巡る展開は、生死にかかわることもあり、深刻な気分を持ち込みます。それを増大するのは、ユダヤ人の金貸しシャイロックとヴェニスのキリスト教徒たちの対立で、これが「人肉裁判」でクライマックスに達します。この危機を救うのが男装して裁判官に化けた女性という、ファンタスティックな存在なので、再び陽気な気分に戻って行けるのですが、裁判に負け、すべてを失って退場するシャイロックの姿には、喜劇をはずれたものを感じ取ります。
『お気に召すまま』も『十二夜』もともに、とてもかわいらしい、のどかな喜劇と言えましょう。深刻な事件は実際にはおこらず、人生を楽しんでいる人たちが多く登場します。場所も、田園地帯の大きな森の中だったり、仮想国のイリリアだったり、作られた、現実離れする世界です。ヒロインはともに男装の美少女。そのことが切なく可愛い恋愛事件を引き起こします。皮肉な人物、ジェイクィーズとマルヴォーリオが笑いと憂鬱を持ち込みます。賑やかな道化タッチストーンと皮肉な道化フェステ。人物構成も似ていますし、歌が飾り立てる点も同じ。『お気に召すまま』がやや骨太で、『十二夜』がたおやかというところでしょうか。サー・トビー、サー・アンドリュー、マライアという生き生きした脇役が大勢出る点で、『十二夜』に点が入るように思います。
シェイクスピアの喜劇は、悲劇以上に、読むより観る方がずっと楽しめます。わたしは『夏夜』『十二夜』『ヴェニス』の3作品を演出しています。
上演するのは骨ですが、稽古するのはとっても楽しいですよ。
by かみざわかずあき





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Last updated  2017.12.07 09:00:09
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