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劇場通いの芝居のはなし

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2019.02.18
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カテゴリ:ミュージカルの話
脚本と音楽の素晴らしさを書いてきましたが、この作品を他のどのミュージカルもかなわない地位に押し上げているのは、もちろん圧倒的なダンスシーンです。

ベルナルドを真ん中に、シャーク団の三人が並んで、長い手と脚を振り上げるあのポーズ。右手は頭にそって真上へ、左手は身体に直角に真横へ。両手が直角を作る。真上に上げた右手にひかれるように重心は右足にかかって身体はまっすぐなまま右に傾き、左足はカウンターバランスをとって左上に、右脚に直角に振り上げられます。映画版で言うと、中央のベルナルド(ジョージ・チャキリスはこの役のために生まれたのでしょうか)は均整をとった、安定したポーズです。彼の右側のダンサーは、力一杯に手と足を振り上げ、顔も上を向いています。ほとばしる力を示すなら、この方がより良いのかもしれませんが、チャキリスのポーズの方が美しい。この三人のポーズのシルエットが、このミュージカルを代表しています。視覚的に強烈な印象を残すミュージカルなのです。

ダンスシーンを構成し、主に振り付けたジェローム・ロビンスは、ブロードウェイを代表するスタッフの一人です。振付と演出両方の分野で、優れた仕事が多くあります。日本ではバレエの人が芝居の演出を行うことはめったにありませんが、欧米では振付という仕事が舞台全体の構成に大きく関わるためか、舞踊分野の人が演出も担当することがよくあります。バレエ自体にも舞台を効果的に展開するための演出」の仕事があります。日本でも、振付と演出を兼ねる人がでてきていますが、はっきり言って脚本の「読み」が浅いです。ショウの場面に持ってゆくための手順つけをしているだけのように感じることが多いです。
ロビンスはストレートプレイも多く演出していますし、映画監督も務めています。なにより、彼が振り付けたダンス、例えば『王様と私』の『アンクル・トムの小屋』のダンス場面を見れば、彼が芝居というものをよく知っていることがわかります。
『ウエストサイドストーリー』制作時は、ニューヨーク・シティ・バレエ団のサブ・バレエマスターを務めていました。ですから、彼の土台はバレエであって、動きの滑らかさ、ポーズの美しさや、劇的な構成はそのことから生まれてくるのでしょう。ダンスの動きの中にあるターンやジャンプ、そのときの手のポジションには、バレエの色が濃くあります。
映画版『ウェストサイドストーリー』の宣材写真で指導しているロビンスの姿を見ることができますが、伸びやかなポーズはチャキリスに劣らぬ美しさで、現役を引いていたとは思えないくらいです。

今の若い人は、ダンスとは歌とともにあり、歌手を格好良く見せるものと考えているかもしれません。あるいはストリートダンスのように、アクロバティックな技を入れて、観る者を驚かせるものと思っているかもしれません。ですがそれでは、舞踊という芸術分野が他の分野に従属してしまう、あるいは体操になってしまわないでしょうか。舞踊はもちろん独立した芸術分野です。それだけで、完成された表現をしているべきものです。バレエやコンテンポラリー・ダンスの公演であれば、観客はそれだけで完全な表現だと思って見ています。ミュージカルにおけるダンスも、そうありたい。『ウェストサイドストーリー』のダンスは、まさにそういうダンスです。
by 神澤和明





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Last updated  2019.02.18 09:00:14



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