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劇場通いの芝居のはなし

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2019.05.04
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カテゴリ:ギリシア悲劇
「オイディプス─アンティゴネ」と、「アガメムノン─エレクトラ・オレステス」の物語は、ギリシア神話・伝説の中でも、最も知られた物語です。しかしいずれも、血なまぐさく、忌まわしさがつきまといます。血なまぐさいのは、ギリシアの物語の多くがそうですが、この二つの物語には、触れるべきではない、家庭内の穢れ、非人間的行為が中心になっています。もっともそれは、人間の本質的な欲望や、原初において行っていた行為の残像なのかもしれません。いわば、真っ黒いホームドラマとでも言えるのでしょうか。
20世紀にも、ユージン・オニールが『楡の木陰の欲望』でこうしたテーマを取り上げました。時代に関わらず、人間がもっている罪悪の原型なのかもしれません。

この後、エレクトラについては、特に物語がありません。彼女はだから、オレステスに父親の復讐をさせる、母殺しという極めておぞましい犯罪を犯させる力として存在しているといえます。メーディアがそうであるように、大きな事件が終わってしまえば、もう目立たない存在になってしまったのかもしれません。

オレステスの方は、この後にも変わった経歴を続けます。ある伝えによりますと、オレステスはアポロンの命じるところに従って、ピュラデスとともにタウリスの地へ赴き、その地で捕らえられます。彼がアルテミス女神の生贄にされようとしたとき、女神官は彼の正体を知り、命を助けます。この女性は、ギリシア軍がトロイに出発しようとした時、生贄にされて死んだはずのイフィゲーネだったのです。女神が彼女を助けていたというのですが、そうするとクリュタイメストラがアガメムノンを殺した大きな理由が、実は存在しなかったことになります。

タウリスを去ったオレステスは、かつての許嫁で、今はネオプトレモスの妻になっているヘルミオネーを尋ねて行きます。彼女はヘレネーの娘です。オレステスは夫の留守に、ヘルミオネーを奪い去ってしまいます。どこかで前にあったことですね。
彼はやがてアルゴスを、そしてメネラオスの死後、スパルタの国も統治することになりました。70年の間、王位にあり、90歳で死んだと言われています。これだけ波瀾万丈な、そして人として許しがたい行為を続けた人生を送りながら、長生きしたのも不思議です。

作品を比べてみると、やはりアイスキュロスは古風さが際立ちます。起きる事件は少しなのに、展開が遅い。基本的に一人台詞が続くので、外に出てくるものが少ないです。人物の感情はあまり細やかではありません。言葉の選びが硬いという感じがします。
ソフォクレスは劇的です。人物の性格がきっぱりしていて、女性であっても力強い。対話はキビキビとして、緊迫感が作られます。古代ギリシアで弁論術が発展したことが、よくわかります。言葉もアイスキュロスよりも詩的で、叙景描写が美しいです。
エウリピデースは心理描写が細やかです。登場人物に現代性を感じます。特に、女性が強い。極めて劇的、舞台的に作られています。ただ、登場人物が多いので、無言の人物がかなり出るのが勿体ないです。
by 神澤和明





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Last updated  2019.05.04 09:00:12



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