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劇場通いの芝居のはなし

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2019.05.28
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カテゴリ:演劇の各場
歌舞伎の方に、「興業主に親切、役者に親切、お客に親切」という言葉があります。これでなお、内容に深みがある作品であれば、良いですね。作者に親切、というのはありません。作者は苦労しなければならないようです。

プロット、登場人物をしっかり決めておくことが大切です。思い付きでなんとなく書き始めると、必ず途中で破綻します。
登場人物にはなるべく名前をつけてください。別役実氏の作品などでは、人物の個性を消して、一般化、抽象化するためにあえて「男1」とか「女2」とかつけています。しかしあれは不条理劇だからOKなので、固有の名前がないと「人間」として造型しにくくなります。どんなものでも、名前があることは役作りのてがかりになるものです。

自分の考えを確実に伝えたいからでしょうか、ト書きを細かく書き込む人もいます。情景を細かすぎるほどに書く人もいます。ト書きは多くない方が良いと思います。特に人物の心理を説明するト書きは、小説ではないのですから、あまり望ましくないです。それは演技者や演出家が考えるべき仕事で、そこに演技を考える役者の楽しみがあります。
普通、脚本のはじめに、登場人物の一覧がつきます。役者のために、大体の年齢を書いておきましょう。年代による行動の仕方や言葉遣いというものがありますから。また、地方の出身者であれば、方言や特殊な習慣がでてくることもあるので、それも明らかにしておきます。

芝居を場面で考える人と、台詞で考える人があります。どちらでも構いません。台詞で考える場合、ただの日常会話にならないように気をつけます。面白い会話を書くことに集中しすぎて、芝居の主題から離れてしまわないように、節度を忘れないことも大切です。

映画やテレビドラマばかり見てきた人は、短い場面がやたらに多い芝居を書く傾向があります。装置がなければ場面はどんどん変えてゆくことができますが、観客の気持ちが細切れになることに注意してください。

ミュージカル風の芝居で歌が入る場合、台詞と歌の言葉の書き分けは、案外難しいです。宝塚歌劇では脚本作家が作詞も演出もしますが、欧米のミュージカルは脚本と作詞が別人であることが多いです。散文と韻文の違いがあるからでしょう。

芝居を書き始めたら、必ず最後まで書ききってください。うまく進まなくて、どんなに苦しくても、最後まで書くこと。これは作家の鉄則です。

最後に、これまでに書かれた戯曲をできるだけ沢山に読んでください。先人の作品を知らない、若い作家が多すぎます。新しいと思って書いた技法や内容が、ずっと昔から何度も繰り返されて使われているということに気づくことでしょう。
by 神澤和明





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Last updated  2019.05.28 09:00:10
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