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劇場通いの芝居のはなし

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2019.06.21
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カテゴリ:演出ノート(3)
椎の木のてっぺんに上がってみると、そこには土がありました。そこから見おろすと、ずっと遠くの方まで見えます。太陽にずいぶん近くなった気分がして、気分が高揚したブンナは、てっぺんに上がったぞと、夢がかなった喜びを、高らかに歌います。このソロは、とても元気よく明るい歌にしました。

木から下りてきたブンナは、仲間の子ガエルたちに、木の上から見た景色の素晴らしさを大げさに語って、彼らをうらやましがらせます。そして、一緒に木の上に登ろうと誘います。それはカエルには、かなり困難な仕事です。ブンナの他には、昇って行くことができません。ブンナは仲間を励ましますが、そこには自分の優位性を意識させたいという気持ちもあると思います。ブンナは自分だけが木の上に登れる方が良いんだろう。一人の子ガエルが言った言葉は、悔し紛れではありますが、真実をついてもいます。

結局、他の子ガエルたちはあきらめて帰って行きます。ブンナは一人きりで、再び木のてっぺんに昇って行きます。いまさら、木登りをやめて、他のカエルと一緒にいるなんて、なんだか、負けたような気がします。ですからブンナは、一人きりで木の上にいることを選びます。

木のてっぺんには、スズメが二羽やって来て、のんきに遊んでいます。チュンチュンと音響効果で鳴き声を聞かせます。無理にスズメを真似ることはしません。カジュアルな若者の服装にしました。両足をそろえてぴょんぴょん跳ぶようにして動くと、小鳥らしく見えますが、大変疲れるので、普通の人間の動きにしました。
若いスズメたちは、自分たちがいつか死ぬ、なんてまったく思いもよらず、ただ今日をうかうかと暮らしている。これはわたしたちの姿です。遊んでいる気分を出すためにブランコをさせてみたのですが、もっと良い方法があったように、今は思います。
ブンナが顔を出します。スズメたちは、カエルがこんな高い所まで上がってきたことに驚きます。空を飛べるスズメをうらやましがるブンナに、空を飛ぶのも楽じゃないんだとスズメは反論します。相手のことを知りもしないで、自分勝手にものを考えるのは馬鹿だね。スズメたちは飛び去って行きます。それでもブンナは、空を飛べることを夢見ます。
おそらく、カエル仲間とうまく協調してゆけないブンナは、自分一人で大空を飛び回る、他者を気にしない環境に憧れているのでしょう。

夜になって、ミミズクの爺さんが、天気予報を告げに出て来ます。「のりつけほーせ」と穏やかに、「洗濯指数」を知らせます。茶色のガウンを着せました。彼の登場は一つの息抜きになります。
ここまでは、明日も今日と同じと期待して生きている者たちの、明るさのある世界です。
これから、死がすぐそこにある、厳しい世界が始まります。
by 神澤和明





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Last updated  2019.06.21 09:00:10
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