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心はたくみな絵師のごとく

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2014.08.30
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2014年 2月27日

息子のプラダー・ウィリー症候群と闘う  

心の日記は幸せのページが続く

 【埼玉県行田市】「学会歌『威風堂々の歌』を歌いましょう! 指揮は――」。司会の言葉に、「はい!」と、かわいらしい声が返ってくる。石井美代子さん=新世紀支部、白ゆり長=の長男・悠斗君(9)=小学3年生=が、人の輪の中心へ。夫・厚さん(52)=地区幹事(ブロック長兼任)=も寄り添う。音楽が鳴り、歌声が響く。「それ!」。親子の掛け声が折り重なった。今月22日に行われた座談会の光景は、地区の定番。15番染色体の異常による「プラダー・ウィリー症候群」を患う悠斗君は、自分の“役目”をいつも楽しみにしている。その姿を見つめる母の笑顔は晴れやかだ――。

 

つらい現実

 年前の冬。石井さんはメールを打っていた。宛先は婦人部の先輩。〈つらい現実が待っていました〉。苦悩が胸にあふれた。
 待望の赤ちゃんが、生後1カ月で、病気を告げられたのだ。
 プラダー・ウィリー症候群。新生児期は筋力の低下や哺乳障害、幼児期からは、過食や肥満、発達遅延、低身長などを特徴とする。学童期には学習面の遅れや、おしゃべり、かんしゃくを起こすなど行動の問題も顕著になり、加齢とともに症状は変化する。
 どんなに大切にそっと抱いても、「こぼれてしまいそうなほど」悠斗君はやわらかい体だった。腕の感触に悲しみが込み上げる。
 結婚以来、元気な子がいる家庭を、心に思い描いてきた。不妊、流産の末、やっと授かった子どもなのに……。
 毎日が格闘だった。ミルクは40cc飲ませるのに1時間もかかる。自力で泣く体力もなく、目が離せない。
 瞬間瞬間、葛藤が渦巻く。これから、どうなるんだろう。小さく呼吸するわが子を見つめながら、思わずつぶやいた。「ゆうくん、ママには無理だよ……」
 付けていた育児日記のノートは、タンスの奥にしまった。内容を見ても悲しいだけ。書く気力が失せていった。

負けちゃダメ

 長は遅かった。外出すれば、嫌でも他の子どもの姿が目に入り、比べてしまう。
 “人に言ったら愚痴になる。ありのままを御本尊様にぶつけよう”。そう思えるようになれたのは、婦人部の先輩同志の支えがあったから。孤独に陥っていく石井さんの心を、“一人にさせない”励ましが引き留めた。
 “強くなろう!”。そう祈っても、すぐに弱い命が顔をのぞかせる。押し返すため、何度も池田名誉会長の指導を読んで、題目を唱えた。
 〈祈り――それは我が生命のギアを大宇宙の回転に嚙み合わせる挑戦だ。宇宙に包まれていた自分が、宇宙を包み返し、全宇宙を味方にして、幸福へ幸福へと回転し始める逆転のドラマなのだ〉
 季節は巡り、冬から春へ、そして木々の緑が映えていく。ほんの少しずつ、母の心の色彩も変わっていった――悲哀に打ちひしがれるのではなく、立ち向かっていく自分へ。
 悠斗君の症状に合わせて、三つの病院に通う。時間をつくり、創価学会の活動に励んだ。
 時に、余裕を失うこともあった。2010年(平成22年)の暮れ。不況のあおりを受け、厚さんの収入が大幅に減った。家計に大きな不安が募る。ある夜、夫婦は珍しく口論になった。
 翌朝。普段と違う空気を察したのか。悠斗君が思い掛けない言葉を口にした。
 「池田先生が見てるからね。負けちゃダメだよ。泣いちゃダメだよ」
 細い体をぎゅっと抱きしめた。ゆっくりかもしれない。それでも、ここまで大きくなった。
 “この子は、私を強くしてくれている!”
 母の背中をそっと押してくれるのは、いつも悠斗君だった――。

 

立ち向かう強さを鍛える信心の先輩

 学3年生になった悠斗君は、側湾症により胴体にコルセット、脚には筋力を支えるための補装具を着けている。体の症状とともに、時折、感情を抑えられない場面も出てきた。
 特別支援学級で学ぶ悠斗君のことで、石井さんは、しばしば学校に足を運ばなければならない。問題に直面しても、母の受け止め方は以前とは大きく異なる。
 「“何があっても、乗り越えていこう!”と自然に思えるんです。“何を希望に生きれば……”と、悲しみに暮れていた私が、本当に強くなれました」
 学会活動には、いつも悠斗君を連れて歩いた。「今日は、会合あるの?」と聞かれるのが日常になっている。
 そんな未来っ子は、会合で話すことに緊張している婦人を見れば、「おばちゃん、頑張って!」と声援を送る。楽しみの一つは、「少年少女きぼう新聞」だ。読むのが難しくても、届く日を心待ちにしている。「池田先生から、ぼくへのお手紙だから」と天真らんまん。
 そうした姿に厚さんは、「信心の先輩なんじゃないかなって、感じるんです。私たちのところを選んで生まれてきてくれた。大変なことはあっても、幸せです」。

 

生命が綴る

 月14日。悠斗君は、バレンタインデーのチョコレートをもらってきた。クラスメイトの母親からだった。
 後日、石井さんは知った。悠斗君はチョコレートを見ると、「ありがとう。でも、ぼく食べられないんだ」と言ったことを。
 この病気は食欲が抑えられない傾向があり、将来は肥満による糖尿病や高血圧も懸念される。“子どもなりに、病気と闘ってるんだ”
 成長の喜びと隣り合わせに、不透明な未来が近づいてくる。進学や就職のことを考えると、不安はよぎる。だが、明るさを失わない。
 御書には「八万四千の法蔵は我身一人の日記文書なり」(563ページ)と。膨大な経典も全て、生命についての日記とある。
 現実の中で起こるさまざまな出来事や、日々感じる幸せや不安も、全て自分自身の生命が綴っている「日記」なんだ。苦しいことだってある。でも、負けない自分でいられる。心の日記には、きっと幸せのページが続く――そう信じられる母となった。

 

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最終更新日  2017.09.18 22:22:13
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