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2006年05月12日
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霊亀2年(716)4月。
伯耆国府の庭は盛りの桜が爛漫と咲き乱れていた。
新しい伯耆守歓迎の宴も盛り。
地方きっての豪族田原不人をはじめ居並ぶ豪族たちはめぐる盃にしたたかに酔っていた。
盃を幾度重ねても酔えぬのは、此の不粋な宴に主賓とて据えられている億良ひとりであった。
雅のかけらもないこの雛に向こう余年も暮らすのかと思うと、濁り酒さえうとましく感じられた。

「やや、これは伯耆守殿。盃がすすまぬ御様子、いかがなされた。」

不人の酒に濁ったダミ声が響く。
また、億良は不快になった。

「ほほ。庭の桜があまりに美しいゆえ、見とれておじゃる。お気にめさるな。」

億良は、遠回しに放っといてくれと言ったつもりであった。
しかし、風流だとか奥ゆかしいだとか、そういうことはまるで通じぬ田舎の大人の不人は、まったく恐縮してしまった。

「いかん。伯耆守殿がごたいくつじゃ。これ、たれかある。白芳(バイファン)を呼べ、
笛をお聞かせするのだ。賑やかに音曲を奏でよ。これ。これ。」とうるさく騒ぎ立て 
るのであった。

この上に雅も艶もない下手くその笛を聞かされるのかと、億良は、また、うんざりとした。

しかし、女官に付き添われて現れた異国風の衣装をつけた娘を見て、億良は思わず息を呑んだ。
白く透き通る肌。うるんだように艶のある瞳。少し厚みのある肉感的な唇。その全てが億良を魅了した。

「おお、白芳(バイファン)来たか。待ちかねたぞ。ささ、早よう笛を。伯耆守殿をお慰めするのじゃ。これ、恭国、鼓を打て。」

「ははっ」と進みでた美丈夫。衣谷恭国。伯耆の国きっての鼓の名手である。

殷々と心に沁み入る、白芳の笛の音。
それに呼応し、高く、低く響く恭国の鼓。

それはまるで、天神の河原に舞遊ぶ二羽の白鷺のごとく、もつれては離れ、離れては、またもつれた。
恭国の眼は熱く白芳にそそがれている。
白芳の意識もまた、恭国の鼓に強く傾(かぶ)いていた。

億良はしばしふたりの妙演に聞き入った。

笛の音は、長い余韻を残して、天空に吸い込まれるように終わった。
酒席にはべる、さしもの酔漢たちも、しばし盃を忘れた。

「まことに美しい。。。。そなた名はなんと申される?」

突然の問に困惑して不人を見る白芳に、億良は慌てて言葉を添えた。

「良い、直答せよ。」
「はい。白芳(バイファン)と申します。」
「うむ。して、いずこから参られた。」
「はい。唐の国より。都の天子さまへのお使いの一行とともに参りましたが、
途中、病にて、この地に置き去られました。今は、不人様のお情けにより、当地に住まい居ります。」
「左様でおじゃったか。。まことに美しき笛の音、甘露でおじゃった。恭国殿と申されたかな。そなたの鼓も、まことに妙。億良、よい慰めになり申した。」

ふたりは、もう一度平伏すると、退出していった。
退出する二人を見送る不人の眼に、億良はなんとなく不吉な予感と、はかなげな二人の姿に切なさとを感じた。

折からの一陣の風。
庭の桜が音をたてて散り、吹雪となって舞った。


その夜。
ほのかに朱い春の月。
白芳は縁に降り、飽かず月を眺めていた。
遠く大陸にいる母は、父は、妹は・・・・・・・、
やはり、この月を眺め、倭の国に出かけた娘を、姉を、想っているだろうか。
白芳の唇から白い吐息が漏れた。

「白芳殿。」
「・・・・・・・・・。」
「どなた? そこに潜まれているのはどなたです?」
「わたしです。恭国です。」
「あぁ・・・。恭国殿。・・・・・あぁ、なりませぬ。お出でになってはなりませぬ。」
「何故です。何故、お顔を見せてはいただけませぬ?」
「わたしは不人さまの囲われ人にございます。これ以上の逢瀬は不実でございます。」
「それでは、・・・・。それでは、いつかの夜のアレはお戯れであったと申されますか?」
「いいえ、そうではござりませぬ。・・・そうではござりませぬが・・・・。」

いつの間にか、縁にあがった恭国は、白芳の背をそっと抱いた。
おぼろなる月の灯りに包まれた二人は、静かに抱擁したまま、しばらくそこに佇んだ。
やがて、二人の唇は重ねられ、折り敷くように沈んだ。

ふたりの秘めたることを隠すように、月は雲間に姿を消し、闇があたりを支配した。


億良は、ふたりがどのように恋をし、どのように慈しみ哀れんだかを知らない。
しかし、あのでっぷりと肥えて見にくい不人に折り敷かれる白芳を想像することは不愉快きわまりないことだった。
だから、嫉妬に狂った不人が、恭国を引出し、他人の寵姫を寝取った不忠ものに死を給わりたいと願い出た時、足下に拒否したのだ。

「伯耆守殿、不忠は成敗が御定法。なにとぞ、ご成敗のお許しを願いとうござる。」
「不人殿、お控え召され。ここは国府でござるぞ。例え私事とは申せ、ここに持ち込まれたからには、裁可はみどもが下しまする。それとも、国の守たるみどもの裁可がご不服か!!」

あくまでも、死罪を言いつのる不人を強引に説き伏せ、恭国を隠岐に流罪とし、白芳を打吹山頂の櫓に幽閉した。いづれ、機を見て、恭国をさし赦し、白芳とともに百済に逃れさせるつもりであった。
白芳を山頂の櫓に幽閉してしまえば、逆に不人とて手出しはできぬ。億良の都人らしい粋(スイ)な裁可であった。

恭国が名和の港から、隠岐へと流される日。
億良は白芳を召し連れて、流人船を見送った。
小舟をしたて、流されて行く湯人船の舳先まで白芳を伴ったのも億良の計らいである。

ふたりともに在らずとも、生死を越えて愛しく想う気持ちに変わりがないこと。
満天に星の降る晩には、ともに笛を吹き、鼓を打ち、その愛しむ人を想い合うこと。
つかの間の逢瀬。それも船と船とを違えた波間での逢瀬であったが、久方ぶりの邂逅に、互いの心の絆の強きを、あらためて誓いあうふたりに、億良は哀れをもよおし袖を濡らした。

しかし、不人の赤黒く燃える嫉妬は、億良のこの計らいを由としなかった。
恭国は隠岐の地を踏むことなく、不人の放った刺客によって命を断たれてしまったのだ。
恭国死すの知らせを受けた億良は、すぐに不人の陰謀を看破し激怒した。激怒はしたが、証拠はなにもない。
そして、恋人の死を、哀れ山頂の櫓で待つ白芳に知らせることを躊躇した。

七夕の夜。
節句の行事に飽いた億良は、宴の席を抜け出し、庭に下りた。
満天に星が降り。
さらさらと流れる河のごとく、天(そら)は煌めいていた。

風にのって、笛の音が聞こえる。
見上げれば、月の灯りに影絵のように佇む打吹の山。
笛の音は澄み渡り、哀しげに、いつまでも、いつまでも聞こえていた。
やがて、長い余韻を残し笛の音が途絶えると、群青の空にだだひとしずく、
星が流れて消えた。。。。。。。


ひさかたの 天の河瀬に船浮けて

今夜か君が 我許来ませむ

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【本日の口上】

ノスタルジー漂う町。
センチメンタルが似合う町、倉吉を舞台に繰り広げる(予定)の侘屋公介シリーズ。
第1話は「天の河瀬に船浮けて」。
倉吉で最も有名な伝説「羽衣の物語」をモチーフに組み立てようと想っているのですが、
どう話しを切り出すか、えらい苦慮いたしました。

結局、古えに伯耆守として、倉吉に五年を過ごした歌人山上億良公のお力をお借りすることとしました。
ま、とりあえずプロローグ。
筆の遅いsolyaのことですから、きっと不定期更新になると思います。

Solyaのブログをご訪問頂く皆々様。
どーか、どーか、見捨てないで気長におつき合い下さいませませ。。
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Last updated  2006年05月16日 19時13分05秒
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