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2006年05月16日
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たっぷりの余韻を残して琴の音は消えた。
倉吉未来中心大ホールは、一瞬、静まりかえった。
そして、次の瞬間、観客の大きな溜息と一呼吸遅れての万雷の拍手に包まれた。
倉吉・上海文化交流コンサート「白恭香/七夕(ひちせき)の夕べ」は1503人の観客を
浪漫チックに酔わせて幕を下ろした。

恭香は美しかった。
絣で織られたチャイナドレス。
スリットから垣間見えるスラリと伸びた脚。
弦の上を、まるでくり返す波のように踊る白い指。

はるか古えの彼方から悠久の時を超えて聞こえて来るような古箏の音。
伯耆の国ゆかりの山上億良の倭歌「七夕(ひちせき)の歌」が、古箏に和して吟じられる演出も心憎く、
観客を惹き付けて離さなかった。

地元倉吉市議会きってのリベラル派正木伊織が実行委員長を勤める「倉吉・上海文化交流委員会」の
はじめてのイベントは、翌日、地元イベントには極めて甘口の日本海新聞紙面だけでなく、
一般誌の地方版でも、手放しの好意的記事で飾られるほどの大成功だった。

その正木伊織、通称マサが、血相変えて「侘屋」に飛び込んで来たのは、翌日の午前10時。
公介が、煎れたてのモーニングコーヒーを楽しみながら、朝の読書にいそしんでいる時だった。
「鳥取物語」。
鳥取県の紀行小説ではない。
鳥取の緑深き森の町を舞台とした、神々と精霊とひととの手に汗握る超恋愛小説である。
公介はこの「鳥取物語」の作者、山口小夜という人は、きっと鳥取県が世界に誇る妖怪漫画家、水木しげる先生描くところの、ゲゲゲの鬼太郎か猫娘みたいな、永遠の不良少女、もしくは不良少年だろうと思っていた。

マサの話は、この「鳥取物語」には関係がない。

「こらぁ、公介、本なんか読んどる場合でないぞ。」

「なんだいや、朝から。せっかくのモーニングタイムが・・・・。」

「まっ、えーけ、聞けいや。」

「なら、まー、話せ。」

「うん。わしにも、珈琲ごせいや。煎れたてのやつなぁ。」

「なんじゃ、珈琲飲むゆとりはあっだか。」

マサは、公介のたてた珈琲を先ず香りを楽しみ、
次いで、その温かみを確かめるようにカップを両手で包み、うまそうに飲み始めた。

「満足したか?。」

「うん、なにが?。」

「珈琲。」

「あっ、珈琲はすこぶるうまい。」

「なら、帰れ。わし本読みかけだけ。」

「そういうことではないだがな。」

「なんだいや。早や話せぃや。」

「うん。慌てるな。えーっと、夕べ倉吉未来中心で倉吉・上海文化交流コンサ
 ート“白恭香/七夕(ひちせき)の夕べ”っちゅーのがあったの、知っとるか?。」

「知らん。」

「ん?!、友達がいのない奴だないや。先月ポスターとチケット持って来ただら
 ーな。」

「忘れた。」

「ちっ。まーえい。あっただがな。」

「うん、そっで・・。」

「コンサートは、大盛況。中国古箏の名手、白恭香の演奏は拍手喝采だぁな。
 不肖正木伊織プロデュースによるところの交流事業は大成功ちゅーわけだ。」

「・・・ここで演説しても、どもならんぞ。」

「話しはこれからだぁ、そっでだ、・・・・。」

「待て、話すな。マサが話すとたいがいややこしい話に巻込まれる。・・・
 もうえーって。帰れ。」

「んにゃ、話す。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「えーか?。」

「どうぞ。」

「その、白恭香がだ、忽然と消えてしまっただがな。」

「・・・・・・・・・。」

「どう?。」

「どうって・・・・。マサァ、それ警察行け。な、警察。」

「だらずこけ。警察行ったら大問題だがな。」

「・・・・。」

「えーか、よー聞け。わしが実行委員長だぞ。国際交流事業で招待出演者が
 失踪っちゃなことはだなぁ・・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「そこんとこ解る?。」

「・・・・・・・。」

「ん?!。」

「で、酒場の親父にどーせーちゅーの?。」

「一緒に、探してごせぇ。」

「ん?!、どーしてぇ?。」

「お前の義務だがな。」

「無茶苦茶だがな、そりゃぁ。」

「まー、えい。手伝え。」

「・・・・・・・・。ちっ。詳しいに話せいや。」

「まー、待て。今、タクが来るけ。」

「あぁ?!、タクぅ?。おい、女遍にタクはまずいでないの?。」

などと、あーでもないこーでもないと議論している間に、ポーチュガルのコロンの匂いがして、
大前田拓人がやって来た。
大前田拓人、通称タク。今から三十数年も昔、マサ、公介と並んで、正義の不良少年どもと呼ばれたひとりだ。
今は家業を継いで老舗酒販店の社長。しかし、誰も社長とは呼ばず、若旦那と呼ぶ。
その並外れた容姿と口説きのテクニックは、まるっきり、傾城の若旦那なのだ。
永遠の若旦那。
しかし、その経営手腕も並外れたものがあり、店は結構繁盛、傾城の徴候はない。

「おーおー。女の娘が消えただってぇ?。」

「おー、タク来たか。」

「マサぁ、話せ。」

「おー。夕べ、公演が終わってだなぁ。わしが楽屋に迎えに行っただがな。
 そしたら、楽屋にはだーれもおらんだがな。待てど暮らせど帰ってこん。
 そのまま、今にいたるまでホテルにも帰っとらんちゅーわけだ。」

「じぇん、じぇん、詳しいないのぉ。」

「そっだ、そっだ。大事なことが抜けとっだがな。
 そっで、その女の子はべっぴんさんかいな?。」とタク。

「ん?!、それは、それほど大事なことでもないやーな・・・・・・・。
 とわゆえ、顔くらい解らんと探しやーがないのぉ。」と、これは公介。

「おお、これ。夕べのコンサートの写真があっだ。」

マサは、鞄からデジタルカメラを取り出した。三人顔を寄せてカメラの液晶に見入る。
絣で織った珍しいチャイナドレスで微笑む白恭香が映っている。

「名前は白恭香(パイキョウカ)。わしが上海から招待した中国古箏の奏者だ。 
 上海音楽大学の学生でのぉ。まっ、エリートだわな。」

「あれ?・・・・・。この娘、おとといの晩、店に来たぞぉ。」

「えーっ?!ひとりでかい?!。」とマサとタクが合唱する。

「ああ、なんでも倉吉ははじめて来たけど、懐かしいって・・。雨が降っとる
 ちゅーのに歩いて行くって、ひとりで帰ったでぇ。」

「初めて来たのに、懐かしいか・・・・。」

「あぁ、その後、衣笠の旦那さんが来ただん。そこで、鉢合わせしそうになって、驚いとったわ。
 ・・・・・しかし、あん時の衣笠さんは、なんか変だったなぁ・・・・。妙に沈んどってなぁ・・・・。」

「しかし、それなら、・・・・、大人だけのぉ、どっか勝手に行って外泊ちゅーのと違うだかいな。
 それなら、これは、マサぁ、馬に蹴られるでぇ。」

「いや。楽器の古箏も楽屋に置いたままだし、だいいち、舞台衣装のままだけ、それはおかしい。
 荷物も楽器も楽屋にあったけ。そっで、わし、すぐ帰って来るだろーと思って、待っただもん。
 ・・・・・わしも不審に思っての。ホールのフロントに聞いたら、失踪するほんの十分ほど前に、
 白恭香あてにどっかから電話があったちゅーだん。フロントで楽屋に取次いだらしいわ。」

「ということは、誰かに電話で呼び出されて、そのまま拉致されたか、
 一緒にどっか行ったかちゅーことか。」

「その線が強いのぉ。」

「しかし、恭香ちゃん・・・、えらい、べっぴんだのぉ。A級の女っちゅーのは時々居るけど、
 超のつくのは、めったにゃおらん。」

「ところで、マサ。このチャイナドレス珍しいのぉ。これは倉吉市で用意したんか?。」

「いや、衣装は自前だ。」

「絣みたいだが・・・・・・。なんか倉吉絣と似とるのぉ。」

「まぁ、こーしてはおれん。わしは、夕べの警備担当した会社に行って、
 もーちょっと聞いてくるけぇ。
 ふたりは、それぞれ工夫してだなぁ。探してごせいや。倉吉におらぁもんなら、
 狭い町だけ、すぐ足取りは解るわいや。」

来た時と同じく、慌ただしくマサは店をでていった。
タクは、冷えた珈琲を口に運んで、口をまげた。

「公介、もう一杯珈琲ごせいや。」

タクはそういうと、公介が伏せたままにしておいた「鳥取物語」を手にとって、ページをめくりはじめた。

公介は、絣のチャイナドレスが妙にひっかかった。
絣ならチャイナドレスとは言え、衣笠が詳しかろうと、
近所に店を構える「衣笠呉服店」」を訪ねてみようと思っていた。

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Last updated  2006年05月17日 09時10分58秒
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