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2013/02/02(土)22:06

J2白書2012

ブックレビュー(4586)

2012年シーズンのJ2は実に面白い展開になった・・・と言えましょう。 ヴァンフォーレ甲府がぶっちぎりの優勝で昇格した以外は、どのクラブが昇格し、どのクラブが降格するかが予測できないほどのカオスっぷりでした。 さらに面白いことになったのはJ1昇格の残り1枠を決めるプレーオフの存在。 私的には、こちらよりもJ1J2入れ替え戦を復活させてほしい・・・と願っていました。この試合に勝ったクラブがJ1へのし上がり、負けたクラブはJ2へ降格させられる・・・という、まさに天国と地獄を味わえる試合です。この試合に関わるクラブは死に物狂いのガチバトルを余儀なくされ、試合をより面白くするのです。勝った方は歓喜を、負けたほうは悲劇が展開されるのです。歓喜を味わってうれし涙を流してJ1の舞台に思いを馳せ、悲劇を味わって悔し涙を流して来年こそは・・・というリベンジを心にとどめる・・・そういう人々の想いがこの試合には込められるのです。 ・・・とはいうものの、すでに決められたものに関してどうのこうの言っても終わらないので、プレーオフの話題に戻しましょう。 このプレーオフの勝者は、大分トリニータです。この大分には、1位か2位になるか、プレーオフの勝者になることでJ1へ昇格できる・・・という条件の他に、もう一つ条件を持っていました。 それは、・・・ 10月上旬までに、Jリーグから借りていた3億円を耳をそろえて返済すること です。 これだけの借金をクラブだけで返済しようにも絶対に無理があります。そこで、スポンサーのみならず、サポーターや大分県民にカンパをしてくれるように訴えました。 すると、期限となる8月を待たずに目標としていた1億円をクリアすることができ、借金の返済に目途が付きました。 「トリニータ」 の語源となった「トリニティ」には、「三位一体」という意味があり、 「県民、企業、行政が力を合わせてチ-ムを育てていく」 という思いが込められているそうです。J1昇格は、まさに大分県民、企業、行政が一丸となって勝ち取ったものと言えるでしょう。J1の舞台は厳しいものとなるのですが、この苦難を乗り越えられたら何とかなるでしょう。期待したいですね。 さて、J2を面白くした要因として、もう一つあります。 それは、5月から発動した 「前節で首位になったクラブが必ず負けるか引き分ける」 というジンクスです。 5月27に行われた第16節。 試合前の時点で首位だったのはモンテディオ山形です。その山形がロアッソ熊本に2対1で敗れてしまったのです。 この第16節以降、このジンクスの餌食になったクラブを列記させてみましょう。 第16節 モンテディオ山形(負け) 第17節 京都サンガFC(引き分け) 第18節 モンテディオ山形(引き分け) 第19節 モンテディオ山形(負け) 第20節 ジェフユナイテッド千葉(負け) 第21節 東京ヴェルディ(負け) 第22節 モンテディオ山形(負け) 第23節 東京ヴェルディ(負け) 第24節 大分トリニータ(負け) 第25節 ジェフユナイテッド千葉(負け) 第26節 東京ヴェルディ(負け) ・・・まあ、ものの見事な展開、と言えるでしょう。 この忌まわしきジンクスが破られたのは、8月5日に行われた第27節です。 今節の試合前時点での首位はヴァンフォーレ甲府です。その甲府がザスパ草津と対戦して、2対1で勝利しました。 この試合以降、甲府はリーグ戦では無敗を記録してJ2優勝とJ1昇格を勝ち取ることができました。 J2はJ1への昇格というものがあったのですが、2012年からはJFLへの降格というものが開始されました(註:2014年からは新しくJ3というリーグが新設され、このシーズンからはJFLではなく、このJ3への降格となります)。 この降格にもドラマがありました。 11月11日に行われた最終節である第42節。 同時刻キックオフの中で、全てのJ2クラブが様々な思いを馳せて臨んだ試合。 その中に、条件次第で昇格が決まるクラブと、条件次第で降格が決まるクラブとのアツい戦いがありました。 町田市立陸上競技場で行われたFC町田ゼルビア対湘南ベルマーレの試合。 湘南ベルマーレはこの試合で勝って、なおかつ京都サンガFCが負けるか引き分けるかで昇格を決めることができます。 対する町田は、この試合で勝って、なおかつガイナーレ鳥取が負けることで、勝ち点は同じでも得失点差で順位をひっくり返して降格を免れることができます。負けてしまった場合、JFLに所属しているVファーレン長崎が2位になった場合は、入れ替え戦で戦って勝利すれば残留できる・・・という可能性が残っています。 降りしきる冷たい雨の中、試合内容は両クラブの想いがぶつかり合う非常にアツいものとなりました。 しかし、試合開始直後に湘南のキリノからあっさりと失点を喰らい、前半が終了しようとするまさにその時にも再び失点。後半でもダメ押しの1点を喰らってしまい、結果的に0対3で負けてしまいました。 全試合終了後、京都サンガFCは甲府と0対0の引き分けで終了してしまい、結果的に湘南がJ1への自動昇格が決定しました。 湘南側の観客席では歓喜があふれ、サポーター、選手、スタッフが一緒になって昇格を祝福していました。まさに至福の時間です。 それに対して町田側。 試合に負けたために鳥取の試合に関係なく順位を逆転することができなくなり、最下位になることが確定しました。そしてその日の夜にVファーレン長崎がJFL優勝を決めたため、JFLへの自動降格も決まってしまいた。 そのような状況下で行われた試合後に行われたセレモニーにて、勝又慶典キャプテンがサポーターに向けてメッセージを話す機会がありました。 しかし、勝又は一言も話すことができません。代わりに他の選手が代弁をするかのごとく、サポーターに向けてメッセージを話しかけました。 何かメッセージを話そうとしても、サポーターに何を言えばいいのかは分からなくなります。悔しさ、ふがいなさ、悲しさ、責任の重大さ・・・さまざまな思いが去来したのでしょう。その思いがあまりにも多すぎて、何をどういう風に話せばいいのかがわからなくなったのかもしれません。 もし仮に何かを話したとしても、見ていた者にとって受け止め方は軽いものになった事でしょう。 様々なメッセージがありましたが、勝又のこの姿が、どんなメッセージよりもズシリと重いメッセージとして受け止めることができました。 しかし、歓喜と悲劇が生れたこの試合、まだまだドラマは終わっていませんでした。 試合が終わり、セレモニーが終わった後、ちょっとしたイベントが行われました。 それは、試合終了後に子供たちを試合が行われたピッチでサッカーを遊ばせる「ふれあいサッカー」というものです。聞けば、サッカーどころである町田ならでは・・・として、町田のホームゲームでは毎回行われていたものだそうです。 悲劇のさなかであっても、子供たちに楽しんで遊んでもらいたい・・・そんなスタッフの心意気に、なぜたかホロリとくるものがありました。 このイベントに参加した子供たちが20年後に町田ゼルビアの選手として、なおかつワールドカップで優勝争いするほどの選手に育ってほしいな・・・と、おっちゃんは切に願うばかりです。 さて、いよいよ来月からJリーグが始まり、詳細な試合日程も発表されました。今年のJ2の展望予想してみます。ただし、降格争いに関しては、運やクラブの状況などに左右されますので、私の口からは恐れ多くて言えませんので割愛します。 昇格が確実なのはガンバ大阪につきます。昨年のJ1リーグ戦でも得点力はずば抜けていましたので、 ・守備力を見直すこと ・J2だからと言って絶対に自惚れないこと ・昇格のプレッシャーに負けないこと これさえ守れば無敗・無引き分けでぶっちぎりの優勝を勝ち取ることができるでしょう。 残り1枠の自動昇格とプレーオフ権の争奪戦ですが、J1において逆転で降格したヴィッセル神戸と、昨年のプレーオフで涙を飲んだジェフユナイテッド千葉、京都サンガFC、横浜FCを軸に展開するのではないか、と見ています。 また、松本山雅の動向も見逃せません。J2初年度であれだけの観客動員数を記録できたのですから、こちらも昇格に絡むのではないか、と思います。仮に今年は無理であっても、来年か再来年あたりにはもしかしたらひょっとして・・・などと見ています。 あともう少しで長くてあっという間に終わってしまうリーグ戦が始まります。あともう少し辛抱して待ってみましょうか。 J’sGoal J2ライター班著「J2白書2012」東邦出版 2013年

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