山の上からーかよ鶯の秘境

ジャンヌダルクの生誕は1412年1月6日です。
火刑にされたのは、19歳の1431年5月30日。

1428年、16歳のジャンヌダルクは、従妹の夫であるデュラン・ラソワの妻が　
妊娠したことをデュランから聞きました。

ジャンヌは、もともと従姉妹も同じ「ジャンヌ」だったので、愛称として
「ジャネット」と呼ばれていました。

そこで、デュランの妻ジャンヌのつわりがどうも酷い、とのことで
「つわりが治まるまで　年下のジャネットに家のことをやってもらったら
助かるんだが　どうだろう」とジャネットの両親にお願いします。





（ジャネットの父ジャックは「神の声を聞いて　フランスのために戦え」と神から
言われたーそういうジャネットを　最初は「馬鹿げたことを言うな！」と激怒します）

実はデュランは強い愛国者で、ピエールが内緒で
「ジャネットが　ボードリクールに直接会いたいと言っている」とお願いしたのです。

そこで、「家のお手伝い」ということで、1週間ほどデュランの家に泊まりに行く
名目で、実際は馬と兵士を提供してもらうために　領主ボードリクール伯に
会いに行ったのです。

『レベレーション』ー啓示ーでは、
ボードリクール伯の屋敷があるヴォークルールの街を訪問します。

しかし最初は「神の声を聞く娘？そんな馬鹿なことが　あるわけないだろう！
まだ戯け事を繰り返すなら　もう一発！」と
ジャネットは頬を思いっ切り叩かれます。



このボードリクール伯の描写がコミカルで、
「さっさとドンレミの親の元に送り返せ！なんだ　お前はこの女の夫か？」
とデュランにも迫ります。

デュランはドンレミ村の隣村、グルー村の農夫で、やはり権威ある
人物の前ではアタフタしてしまいます。

しかしボードリクール伯の妻が「いつかフランスを救う娘　神の声を聞く娘が
現れる」ことを固く信じており、街のみんなにも　そういった娘が現れたことが
大評判となります。



中でも「ラ・ピュセルさま、このロザリオを受け取って下さい」と
頼む女性まで出て来ます。

しかしジャネットは「いいえ　奥さま　それは司祭さまにお預け下さい
私よりもずっと霊験がありますので」と謙虚に断ります。

この謙虚な姿勢が、その大工の妻を感動させ　「ぜひ我が家に泊まって下さい」と
ジャネットは街の人気者となります。





（左ページ上　右隅がデュラン　その左コマがボードリクール
長かった髪をハサミで大胆にカットするジャネット　
ここから　嘘のように　長年訓練してきた　兵士のように変身します

まだ16歳　現代で言えば高校2年生の少女が.....）


また、ジャネットは　ボードリクール伯に「ニシンの戦い（オルレアン近郊）で
フランス軍は敗北する」と　再度　会見した際に予言をし　それが見事当たります。

そこでボードリクール伯は「あの娘が今度はロレーヌ公（ロレーヌ地方の領主）に
願い出て　王に会うことを許されるとしたら　俺の立場はどうなる.....のかな？

ロレーヌ公に出し抜かれるのは　嫌だな　増してや　街の皆がこんなに
彼女を支援しているのだ
ここは　もう太っ腹になるしかない」

こう思って、ジャネットに立派な服、馬、兵士を6人準備し
王に向けて　手紙も書きます。

また賢いものの　親が学校に行かせなかったため、文章が書けない
「羊飼いの娘」のために、王への代筆も行い　道筋も詳しい
伝令使ヴィエンヌも　兵士の中に加えます。

（当時　農夫の娘を「羊飼いの娘」と呼ぶのが　習わしでした）



実はボードリクール伯は、最初　ジャネットの頬を酷く叩いた際、
ジャネットは頬を押さえながらも、気の強い表情で

「ある意味　あなたさまも　神に選ばれたのです」と
言い放ちます。

それが気になって　気になって　そして　最終的には

「ええい　うるさい！お前のためにこれだけ用意した！
この兵士たちと　馬とで　王のいるシノン城まで行けるのなら
行くがいい！」となります。



街のみんなは　やんややんやとお祭り騒ぎ。
ボードリクール伯の　ジャネットへの素晴らしい用意に
「いよっ！さすがボードリクール！太っ腹！」と拍手。

「ラ・ピュセル　ご無事で」「ラ・ピュセル　行ってらっしゃい」と
少年の姿になったジャネットを讃えます。

しかし　実はボードリクールは　気が小さいのか　面倒な準備を
急かされたためか　「なんでこうなるのかな」と血圧が上がり
真っ赤になって汗をかきます。

そこの描写が面白く　実際はボードリクールは良い人なのでは
と思わせるところが　傑作です。

2021/6/27記述