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カテゴリ:戦争映画
2007 イギリス 監督:ジョー・ライト
出演者: 123分 カラー ATONEMENT [DVDソフト] つぐない DVD検索「つぐない」を探す(楽天) 第二次世界大戦時のイギリスを舞台に、純粋無垢な少女のついた嘘と嫉妬から生まれる、引き裂かれた悲恋を描いたサスペンス調ラブロマンス。イギリスの著名作家アン・マキューアンの小説『贖罪』の映画化で、音楽担当のダリオ・マリアネッリがゴールデングローブ賞、アカデミー賞を受賞している。 少女ブライオニーのついた衝動的な嘘が、思いの外事態を大きくしてしまうのだが、償いきれない罪の意識をどこに、どのように向けていくのかが主題の一つでもある。少女の姉から引き裂かれた恋人のロビーは、北フランスのダンケルク撤退戦に参加する設定のため、一部戦争映画風の描写も見られるが、大部分はラブロマンスとサスペンスによって構成されている。 細かな静物描写と同じ場面のリプレイ映像を多用した手法は、いささか鬱陶しいと感じる所もあるが、猟奇サスペンス的な雰囲気を醸し出すのに大いに役立っている。また、前半部分は悠長な流れの描写に加え、少女の姉セシーリア役のキーラ・ナイトレイの繊細でエロティックな雰囲気は、フランス映画的な甘美な印象を強くする。また、タイプライター音を多用したBGMや効果音も新鮮だった。 原作は重厚で衝撃的なストーリーで評判を呼んでいるが、本作もわずか2時間の間で良くまとめあげ、視聴者を引き込むことに成功したと言えるだろう。それも、前半部分の無駄とも思えるような冗長なシーンが伏線となっており、後半のどんでん返しを盛り上げているのだ。 ただ残念なのは、後半の贖罪部分の描写がやや平坦になってしまっていること。ブライオニー役は少女、成人、晩年の3世代を3人の役者が演じているが、少女時代にうまく描かれていた異性へのほのかな興味と生真面目な貞操観念の錯綜が、成人や晩年の演技に全く引き継がれていないために、罪の意識がどのように変遷し、贖罪につながっていくかが掴みにくい。そのため、ブライオニーへの感情移入が難しかった。正直言って、思ったほどはストーリーに感動できなかった。 何故なのだろうと考えていたところ、やはり性に対する意識の違いなのではないかと思った。本作は性と貞操の淫靡な錯綜が描かれており、少女から大人への脱皮の過程でもある。男女の恋愛に性は必然のものでありながら、公然と肯定できないもどかしさのようなものがある。そう、イギリスはキリスト教国家なのだ。性に対する意識と贖罪の方法に、仏教徒である私はどこか違和感を感じているのかも知れない。報われなかった姉と恋人の恋愛を自身の小説の中で完結させていくという手法は、贖罪の一つの手法ではあるけれど、モラルが教会で作られ、神に罪を告白する国ならではの感覚ではないだろうか。モラルが社会共同体で形成される日本人にとって、罪は地獄に持って行くものであって(笑)、冷ややかに見てしまっている自分があったような気がする。 さて、私の本分である戦争シーンだが(笑)、姉の恋人ロビーは刑務所から徴兵され、英軍兵卒としてベルギーもしくは北フランスで兵役についていたようだ。ドイツ軍のベルギー侵攻に伴い、撤退する最中に本隊からはぐれてしまったようで、たった3人でダンケルク海岸に向かう。そのダンケルク海岸シーンは、多彩なセットと2,000人余りの地元エキストラを使い、約5分間のワンカットシーンを撮影している。2日間で撮影したそうだが、鞍馬している兵、馬を射殺する兵、喧嘩している兵、歌を歌っている兵など海岸にひしめく撤退待ちの兵の様子が描かれている。ただ、結構力を入れた割にはさほどインパクトなし。「激戦ダンケルク(1958 英)」、「ダンケルク(1964 仏伊)」を知っているだけに、ちょっと物足りない。まあ、それが主眼の映画じゃないので・・・余り突っ込まないけど(笑)。 全体に完成度は高い名作だと思うが、心が汚れている私にとっては(汗)、あまり楽しめなかったのが正直な感想。何分、「つぐない」という観念的な題材を描いた作品だけに、作品から感じる印象は自身の人生経験や体験によって、相当の温度差があるものと思われる。私は★3.5にしたが、感動具合によっては ★4.5くらいにはなりうるのかも。 興奮度★★★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★ 感涙度★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1935年のイギリス。上流階級の官僚タリス家の次女ブライオニー・タリスは13歳で小説や戯曲を書くのが得意だ。兄のリーオンが帰省するのを機会に演劇をしようとするが、身を寄せている従兄弟のローラ(15歳)、双子のピエロ、ジャクソンはやる気がない。 外を見ていたブライオニーは、美しい姉のセシーリアが使用人の息子ロビーの前で、下着になって噴水池に飛び込むのを目撃する。見てはいけないものを見たような気がしたブライオニーは目を背ける。実際は、花瓶の水を汲もうとした時にロビーが花瓶を壊してしまい、セシーリアが池に沈んだ破片を潜って拾っていただけだった。 ロビーはセシーリアに恋心を抱くが、セシーリアは身分が違うと口もきかなかった。ロビーはセシーリアに先ほどのミスを謝ろうと手紙を打ち、晩餐会に出席する途中で妹のブライオニーに手紙を託す。しかし、手紙の内容は遊びで書いた女性器名を記した淫靡なものを間違っていれてしまい、ブライオニーはそれを盗み読んでしまう。 セシーリアの方は逆に淫靡な手紙で自身の気持ちに気づき、ロビーと図書室でセックスする。廊下に落ちていたセシーリアのピアスを届けに図書室に来たブライオニーはセックスしている二人を目撃してしまう。それに気づいた二人は行為をやめるが、ブライオニーにはロビーが無理矢理姉を犯しているように見えたのだった。 晩餐会の席で双子の兄弟がいなくなる。皆で探しに出るが、ブライオニーは男に襲われているローラを発見する。男は逃げていくが、ブライオニーは犯人がロビーだと告発する。ロビーではないとわかっているが、実は密かに恋心を寄せていただけに、嫉妬心も手伝ったのだ。ロビーは駆けつけた警察によって逮捕連行されてしまう。 4年後、刑務所から徴兵されて北フランスにロビーはいた。ドイツ軍から撤退する途中ドイツ兵に殺された多くの女子学生を見て、ロビーはセシーリアに会うため生きて帰ろうと決心する。 出兵前、ロビーはロンドンでナースになったセシーリアと再会する。二人は愛し合うが、ロビーはフランスに出兵しなければならなかった。妹のブライオニーは嘘をついた罪の意識に駆られ、大学には行かずナースの訓練を受けていた。姉のセシーリアに会いたいと手紙をよこすが、姉は無視するのだった。 ダンケルクの海岸に到着したロビーら3人の兵は、海岸にたむろする沢山の兵を見る。生きて帰ろうと思うロビーだったが、次第に衰弱していく。 その3週間前、ロンドンでナースになったブライオニーは「噴水の二つの人影」という小説を書いていた。昔愚かだった少女は何も理解できなかった。一生懸命に働いても償いにはならない。真実を小説にするしかないという思いで小説を書いていたのだ。看護していた見知らぬ兵士リュック・コルネはブライオニーを恋人のように話し、死んでいく。ブライオニーは恋の大事さを知り、どうしても姉に会いたいと願う。さらに、ローラが犯されていたと思っていたが、実は兄の友人で当日来ていたチョコレート会社経営のポール・マーシャルとの情事であったことが判明する。ローラとポールの結婚ニュースが流れてきたのだ。 姉のアパートを訪ねたブライオニーはそこにいた姉とロビーに謝罪する。しかし、ロビーはそれを許さず、嘘だったことを両親に説明し、法的に証明しろと責める。 晩年、小説家となったブライオニーは21作目の作品として「つぐない」を出版する。あの嘘の事件を描いた自叙伝でもあり、これを遺作とするつもりだが、彼女のはじめての作でもあった。嘘も装飾もなく真実を描こうとしたものであるが、実は姉の青パートを訪ねていったシーンは想像だった。実際に会いに行く勇気もなく、謝罪することもなかったのだ。ロビーは 1940年6月1日にダンケルクで敗血症のため死亡。姉のセシーリアも1940年10月15日空襲非難の地下道で水死。二人は結ばれることはなかった。 ブライオニーは、一緒になれなかった二人を小説の中だけでも結ばせ、幸せにしてあげることで贖罪しようと思うのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年05月08日 22時24分23秒
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