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2010年04月07日
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カテゴリ:戦争映画
ビデオ1945 アメリカ 監督:ウイリアム・A・ウエルマン
出演者:ロバート・ミッチャム、バージェス・メレディス、フレディ・スティールほか
109分 モノクロ STORY OF G.I.JOE


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 第二次世界大戦時、アメリカ軍の北アフリカ戦線、イタリア戦線を従軍記者の目から観たドキュメンタリータッチのヒューマンドラマ。本作のナレーション役及び主人公となる従軍記者アニー・パイルは実在の人物で、米軍の前線で人情味溢れる取材を続け、1944年にはピューリッツアー賞を受賞している。本作はそのアニー・パイルの著書「Brave Men」「Here is your war」を下敷きに構成されているようで、従軍記者の見た郷愁と苦悩に満ちた前線の兵士たちのリアルな戦場を再現している。
 製作公開は1945年6月で、ドイツは降伏したものの日本とは未だ戦争状態にあり、戦争に対する緊迫感がひしひしと感じられる。というのも、主役級以外の登場人物、特に将校をはじめ一般兵、従軍記者たちは皆本物で、演技力はともかくもその存在自体がリアルなのである。一応ストーリー性もあって従軍記者アニー・パイルによる米陸軍第1師団第18歩兵連隊第1大隊C中隊の従軍、交流を描いたヒューマンドラマとなってはいるが、娯楽作にはあり得ないようなリアル感があるために、冒頭に書いたようにドキュメンタリーのような印象を強く感じる。
 ちなみに、アニー・パイルは1945年4月18日に沖縄戦従軍取材中に日本軍によって狙撃され死亡している。本作の制作にあたり監修助言もしているようだが、公開の日の目を見ることはなかったといういわく付きでもある。
 監督のウイリアム・Aウエルマンは第一次大戦時はパイロットだったそうで、本当は歩兵嫌いで本作の製作に二の足を踏んだとか。

 戦時中の作品ということで、戦意高揚的な意図が強いのかと思ったが、意外にも本作はかなり悲惨で苦渋をなめるアメリカ軍を描き、決して好戦的な戦意高揚になるような内容でもない。日本では敗色濃い時期に悲壮感漂う映画が製作されているが、それにやや近い印象もある。アメリカでは逆に戦勝ムードの中、戦意高揚プロパガンダよりも前線の兵士の勇敢さを讃える戦争のリアルさを重視したのかもしれない。
 描かれているのは対独の北アフリカ戦線とイタリア戦線で、小隊・中隊規模での戦闘が連続的に描かれる。モノクロ映像ということもあって、映画の雰囲気は米ドラマ「コンバット」を髣髴とさせる。制作時期を考えるとコンバットが本作の影響を受けているのかもしれないが(笑)。また、本作中でドイツ軍が籠ったイタリア修道院の空爆をアイゼンハワー将軍が決定するのだが、そのアイゼンハワーは本作を絶賛したとか。
 ストーリー自体はアニー・パイルの自伝的な感じとなっているので、ややぶつ切り的で、編集技術も特筆できるほどのものではない。淡々と冷徹に戦闘は進み、兵隊が死んでいくばかりで、無常感が強いのでストーリーを楽しむにはやや不適かもしれない。
 
 本作で高く評価できるのは戦闘シーンだろう。アメリカ本国での撮影だそうだが、北アフリカの砂漠シーン、イタリア山岳地帯での教会、修道院廃墟シーンのセットが実にリアルだ。かなり細かい造形がなされており、現代作でもここまでリアルなセットにはそうそうお目にかかれないだろう。さらに、火薬を適切に使用した戦闘シーンが卓越しており、何と言っても兵士の動きがリアルなのだ。役者以外は本職なのだから当たり前なのかもしれないが、記録映像を用いているのではないかと思うほど迫真なのだ。特に市街戦での射撃、着弾シーン、手りゅう弾爆発の間合いなどは戦前とは思えないほどしっかりしているし、実弾を用いているのではと思われる場面すらある。ちなみに、出演している兵の一部はその後各地の前線に赴き、戦死しているそうだから、そう言う目で見るとなおさら心に沁みるものがある。 
 こうしたリアル感たっぷりの映画はやはり戦時中、戦後間もない時期だからこそ出来るのもので、言葉では説明できない臨場感が漂っている。同様の作品に「第一空挺兵団(1946 英)」というのがあるが、リアル型戦争映画の傑作と言えよう。
 また、本作と同様に北アフリカ戦からヨーロッパ戦までの米歩兵を描いた作品に「最前線物語(1980米)」があり、こちらも同じ第1師団の第16歩兵連隊の兵を扱っている。

 登場する兵器類は当然本物ばかり。ただ、アメリカでの撮影ということもあって第一線の兵器類はあまり登場しない。廃墟セットなどに力が入っている割にしょぼい印象もある。主に登場するのはM3中戦車で、一部M4シャーマン中戦車が出ているかもしれない。M3は射撃、走行シーンのほか着弾炎上シーンも見られる。あとは牽引される野砲ぐらいで、航空機(爆撃機)映像もあるが、本作のために撮影されたものかどうかは疑わしい。

 全般に淡々とした作品だが、戦史をなぞる歴史的映画としては秀作の部類に入るだろう。挿入される様々な兵士のエピソードも一見無駄のような印象もあるが、前線の兵士の実情だと思えば、これもまた感慨ひとしおなのである。DVDとして見ることができるようになったことに感謝したい作品であった。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★★
爽快度★★
感涙度★★



!(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 北アフリカのチェ二ジアに駐留する、アメリカ陸軍第1師団第18歩兵連隊第1大隊C中隊に中年の従軍記者アニー・パイルがやってくる。アニーは前線への同行を希望し、ウォーカー中尉の隊についていくことに。第18連隊はまだ前線での経験が浅く、兵士の多くが戦闘に参加する実感をまだ得ていない。だが、前線に赴くトラック上でドイツ軍機の敵襲を受け、初めての戦死者を出し、戦場の実感を初めて体感するのだった。
 いよいよドイツ軍と対峙する前線に到着すると、第18連隊第1大隊はドイツ軍の攻撃に陣地を守ることとなる。だが、経験不足の米軍に歴戦のドイル軍と戦車部隊は圧倒的な強さで攻め入り、ハント中佐の第1大隊は甚大な被害を受けるのだった。ホートン大尉のD中隊は連絡が途絶え、ラフル大尉は重傷。ロバート大尉とウォーカー中尉のC中隊だけが前線に残っているにすぎなかった。米軍の戦車隊は緒戦で全滅し、敵戦車によって突破されてしまう。ハント中佐は大隊本部でフリーアス三等軍曹に書類を焼却させ、無線手のストローベルに各隊撤退を命じさせる。はじめての戦争と敗戦で意気消沈するが、この経験こそが兵を強くするのだ。

 アニーはしばらく他の戦場にいたが、第18連隊C中隊はその後イタリア戦線に参加し、シシリア・サレルノ上陸戦を行っていた。アニーは再び大尉となったウォーカーと行動を共にする。中隊は歴戦を重ね、兵士も入れ替わったが屈強な部隊になっていた。部隊はワーニッキ軍曹、ドンダロ二等兵、「羽無し」マーフィー二等兵などがいた。ワーニッキ軍曹は本国の息子の声が入ったレコードを受け取るが、蓄音器がなく声を聞くことができない。ミュー二等兵は死亡保険に入るが受取人の身内がいないため、仲間の名前を受取人に書いていく。マーフィーは看護中尉レッドと戦場で結婚式をあげる。ドンダロは戦闘で解放したイタリアの村でイタリア人女性と恋仲になっていく。
 C中隊は山上の修道院に向かうが、敵の砲撃に会う。修道院はドイツ軍の砲弾監視所になっているのだった。ウォーカー大尉は砲兵隊に修道院の砲撃を要請するが、カソリックの信仰心のため砲撃は拒否される。C中隊は歩兵による偵察活動を余儀なくされ、457高地で小火器、793高地に迫撃砲の存在を確認するも、ジョセフ中尉、スペンサー、トエントレンらが戦死する。消耗する隊に補充兵がやってくる。ワーニッキ軍曹らは極度の疲労や悪天候にも関わらず、偵察を繰り返すが、ついにマーフィーが戦死してしまう。
 アーニーは書いた記事でピューリッツアー賞を受賞する。クリスマスになり隊は七面鳥で祝うが、本部からはドイツ兵捕虜の確保が命じられる。ウォーカー大尉は自ら偵察に出かけ、ようやく一人の捕虜を連れ帰る。大尉は多くの部下を失ったことに苦悩し、アニーがそれを慰める。ドンダロは隊を抜け出してイタリア女の所へ。それが見つかり、ウォーカー大尉はドンダロに便所掘りを命じるのだった。
 ようやく、アイゼンハワー将軍の決断で修道院の空爆が行われる。だが、空爆後の廃墟はドイツ軍の要塞と化し、さらに戦闘はこう着状態となり、寒い冬を迎える。ある日偵察から帰ったワーニッキ軍曹はいつものように壊れた蓄音器にレコードをかけると、ついに幼い息子の声を聞くことができる。その声を聞いた軍曹はボロボロになった精神状態が崩壊し、気がくるってしまう。
 その後、ようやく修道院の占領に成功する。アーニーはC中隊にモンテ・カッシーノで再開する。再開を喜ぶC中隊の面々だったが、馬に運ばれてくる戦死者の中にウォーカー大尉の姿があった。驚き絶句するアーニーとC中隊の兵。だが、次なる任務のため各人は大尉に訣別し、再び無言で前線への道のりを進み始めるのだった。





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最終更新日  2010年04月07日 21時48分33秒
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