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カテゴリ:小説「月の欠片(かけら)」
この作品はフィクションであり実在の人物団体等とは一切関係ありません。
Copyright(C) 2008-2011 Kazuo KAWAHARA All rights reserved. 第四夫人のシャリーファは、兄のアリとともに、シェイク家を乗っ取ろうとしたが、スルタンは、それを知っていながら排斥することは無かった。シェイク家の中には、スルタンのそのような取り扱いに甘いと言って不満を表すもの、追放すべきだと主張するものなどもいたが、シャリーファが改心し、シェイク家のために尽くし始めるのを見て、スルタンの対応が正しかったとスルタンを見直すものが多かった。 第四夫人のシャリーファは、兄のアリとともに、シェイク家を乗っ取ろうとしたが、スルタンは、それを知っていながら排斥することは無かった。シェイク家の中には、スルタンのそのような取り扱いに甘いと言って不満を表すもの、追放すべきだと主張するものなどもいたが、シャリーファが改心し、シェイク家のために尽くし始めるのを見て、スルタンの対応が正しかったとスルタンを見直すものが多かった。スルタンの優しさ、心の広さにうたれ、シェイクとして改めて尊敬するものもいた。
蜂起した養蜂業者達の尊敬も一重に集めていた。そんなことだったから、アルバハの部族の中でイスマイルの時代にはサウド家に反発していたものも、スルタンならと反抗的態度を改めるものも出て来た。 ここ、アルバハは、シーア派の多い東部地区とは異なり、激しいデモがあった分けではない。ただ、九・一一のテロリストを多数輩出した高速十五号線沿いにある町で、中央政府に反抗する勢力も存在した。それに、伝統と歴史のある自分達はネジドのベドウィン達よりも、優れているとの意識も強かった。 それは、シェイク・スルタンも一緒だったが。 サウジ政府も、昨年暮れから吹き荒れている「アラブの春」旋風の影響を懸念していたから、シェイク・スルタンの評価が上がることには安堵していた。 リヤドの中央政府には、アルバハ州知事のファハド・ビン・アブドルアジズ・アル・サウドから、逐一、スルタンの動向が報告されていた。 ファハドは、スルタンの父・シェイク・イスマイルとほぼ同年齢で、気心の知り合った仲だった。お互いの腹の中を探り合いながらも、それなりに上手くやって来たつもりだった。それが、イスマイルの急逝で一から出直しとなった。 ファハドは、サード国王に近く自分の属するハイル家とは対峙したこともあった。今回も甥のアブドルアジズを誘拐し養蜂業の利権を取り返した。ファハドは、スルタンの動静をじっくりと見詰めざるを得なかった。 ファハドは今のところ、スルタンが思ったより、上手く穏当にシェイク家を纏めていることにホッとしていた。シェイク家が穏当な方向で纏まり、安定して行くことが、アルバハの安定、ひいてはサウド家の安定に繋がることになる。そう、ファハドは考えていた。 アルバハの安定には、その中心となるシェイク家の安定が不可欠だ。
昨年暮れからチュニジアで反政府デモが続き、今年の一月一四日には、ベン・アリ大統領が政権を放棄して、このサウジに亡命して来た。ジャスミン革命と言われた政変が、エジプトを始めとする近隣アラブ諸国に波及したため、サウジも他人事ではなかった。 ベン・アリ政権は二三年間続いた。そして、ジャスミン革命は、エジプトに波及して、一月に発生した反政府デモは、二九年間続いたムバラク政権を二月一一日に崩壊させた。 今また、四二年間続いたカダフィ政権が反政府運動に曝されている。サウジでも、シーア派が中心の東部で三月に反政府デモが起きていたが、幸い小規模に終わっていた。
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最終更新日
2011年10月19日 23時00分27秒
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