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March 29, 2015
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カテゴリ:文化
京都大学大学院教授  諸富 徹

日中韓が社会保障で協力

また池田会長は、エンパワーメント(内発的な力の開花)の重要性を強調している。

経済学の草創期には、人間の経済的行動の動機付けが丁寧に議論され、その中に利他的動機も含まれていた。しかし、時代が進むにつれて、「利他的な動機付け」はほとんど重視されなくなり、利己的動機ばかりが強調されるようになった。

人間はだれかに必要とされていることを実感したとき、内発的な力が呼びさまされる―池田会長が指摘するような、この「利他的動機付け」を、いかに理論構築に結び付けるかが今後の経済学の課題となろう。

最後に池田会長は、日本と中国と韓国の関係について、環境問題など互いに「共通のプラス」にできる協力から始めることを提案している。

EUの原点も、長年対立したフランスとドイツが二度と戦争を繰り返さないと誓いを立て、エネルギー資源を共同管理する欧州石炭鉄鋼共同体を設立したことにあった。日中韓の3カ国でも同様に、相互利益となる「社会的共通資本」をテーマに協力を深めるのが望ましいだろう。

この「社会的共通資本」の中でも、注目されるテーマの一つは社会保障ではないのか。

最近の中国や韓国からの留学生をみていると、日本の社会保障に対する関心が非常に高い。

年金や介護など、これまで日本が積み重ねてきた社会保障制度経験を伝え、互いに情報を共有することは、日中韓がさまざまな困難を越えて協力できるテーマになりうると思う。


もろとみ・とおる  1968年、大阪府生まれ。専門は環境経済学、財政学。主な著書に『環境税の理論と実際』『地域再生の線戦略』『私たちはなぜ税金を納めるのか』などがある。


【文化】聖教新聞2015.3.25





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