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カテゴリ:抜き書き
1967年に池田がかつて汎ヨーロッパ連合を提唱したグーテンホーフ=カレルギー伯爵と対談した内容を回想して書かれた内容を収めているのが小説『新・人間革命』第12巻である。そこで伯爵からの問いかけに以下のように答えている。少し長いが重要な箇所なので引用する(なお文中の伸一とは山本伸一のことであり、これは池田の小説の中での名前である)。
「私が一番大事だと思っているのは、日本が先頭に立って、平和への理想を実現していくべきだということです。核時代の幕が開いたのは約20年前ですが、現在、世界の多くの国が、次の戦争に向かって準備をしております。その中にあって、日本は、世界有数の経済力をもち、そして、世界に類例のない平和憲法をもっています。」 (中略) 「大事なご意見です。全くその通りであると思います」 伸一は、伯爵の意見に、全面的に賛同することができた。彼も、「平和憲法」をもつ日本の使命の重さを、痛感していたからである。 日本国憲法の前文と第9条には、平和主義と国際協調主義の理念が明確に謳われている。このうち、第9条の1項では、国権の発動たる戦争の放棄を宣言し、国家主権を、いわば自ら制限しているのである。 伸一は、その条項に、国連などの国際機関に主権の一部を委ねようとする、憲法自身の“意志”ともいうべきものを感じていた。 そこには、世界は一つという理想が内包されているといってよい。 彼は、この憲法こそ、日本国民の最高の宝であると考えていた。 また、第9条に込められた、戦争の根絶という人類の悲願の実現に、彼は生涯を捧げゆくことを決意していた。それが、とりもなおさず、仏法者の使命であるからだ。 そして、日本国憲法に掲げられた平和の理念と精神を、全世界に広げゆくことこそ、21世紀に向かって日本が歩むべき方向性であると、伸一もまた、結論していたのである。」(池田大作『新・人間革命(第12巻)』聖教新聞社、2006年、p276~278) この第12巻には、2001年4月20日~12月29日に聖教新聞で連載されたものが収録されている。2001年の9・11同時多発テロの発生を考えると、この年に、1972年に行われたアーノルド・トインビーとの対談よりもさらに古い1967年のカレルギー伯爵との対談の内容を改めて書いたことの意義は深い。2003年のイラク戦争を経験し、翌年の2004年4月2日(戸田の命日)に文庫として発刊され、改めて2006年9月8日に聖教ワイド文庫としても出版された。実に40年もの時間が経過したとはいえ、池田のこのメッセージは繰り返し世に送り出されてきたのである。 ―戦後の平和運動の一翼担った池田思想―前田幸男(創価大学法学部准教授) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 22, 2015 06:22:40 AM
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