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カテゴリ:教育
東北大学加齢医学研究所 瀧靖之教授に聞く
“道路”にたとえると
脳は非常に興味深い発達の仕方をします。脳のネットワークを簡単に“道路”にたとえて説明します。生後すぐの赤ちゃんの脳は、ある時までたくさんの道を作り、実際に使ってみて使わない道を壊し、使う道を太く強固にするという発達をします。使う道は一般道から高速走路のようになり、より快適に使える道にします。 なぜ使わない道を壊すのか。それは、道がいくつもあるとエネルギーをたくさん使い、効率が悪いからです。最初は環境に適応しやすくするために、道をたくさん作りますが、ある時期を境に今度は使う道を絞っていくというのが脳の発達の基本的な点です。 さらに脳の発達は、一斉にすべての場所で起きるのではなく、順番があります。大ざっぱに言うと、脳は後ろから前に発達します。後頭葉、側頭葉、頭頂葉と発達して、最後に前頭葉という順番です。
何歳からでもやり直せる
脳は場所によって発達のタイミングが違う。発達のピークが違う。このことが、子育てにおいて重要なポイントです。子どもの成長段階によって、多くの本を読んだり音楽を聴くのに効率がよい時期、体をたくさん動かすと効率がよい時期などがあるのです。 ただ、こうした発達のピークという話をすると、よく「3歳までに〇〇をしないと、その後にいくら努力しても身に付かない」などと誤解されます。 これは間違いです。実際は脳には可塑性があり、何歳になってもやり直せるし、学び直せます。 発達のピークとは、何かを獲得するのに、もっとも効率よく、短時間で獲得できるということです。 ピークの時期を過ぎても、努力すれば身に付けたい能力を獲得できます。発達のピークのじきnい行うのと比較すれば多くの時間が必要ですが獲得できます。だから、80歳からでも英語を学んで獲得できるのです。何歳であろうと努力が大事です。 脳の自然な発達のタイミングが異なることを知り、そのタイミングに合わせて、子どもに多様な経験を積ませることで、効率よくさまざまな能力を身に付けられると考えられます。拙著『16万人の脳画像を見てきた脳科学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』にも書きましたが、発達のタイミングに合わせて、子どものどの時期に何をすると効率がよいのか、紹介したいと思います。
心地よい感覚を与えて
脳で、まず発達する後頭葉は、物を見る領域です。後頭葉が発達し、お母さんの顔がきちんと見えるようになります。 同時期に、音を聞く領域や感情をつかさどる領域も出来上がります。「安心する」「心地がいい」と感じる領域は早い段階で発達のピークを迎えるのです。ですから、子どもが乳幼児期には、脳科学の視点からみても、親子の愛情あふれる触れ合いがとても重要です。一緒にいる時間がたとえ短くても、抱きしめたり、話しかけたりすることで、成長を促すことができるでしょう。 そして、徐々に本を読み聞かせたり、音楽を聴かせたりして、好奇心を伸ばしてあげるのも心掛けたい時期です。好奇心の高さは、将来に大きく関わることだからです。 好奇心が高いと楽しみながら勉強をできます。高齢になった歳の認知症リスクも下げることができます。好奇心が高いと、将来のさまざまなリスクを下げるのです。好奇心を育むための環境を早い段階から子どもに与えたいものです。 そのために私が有効だと思うのは、絵本の読み聞かせ。親が読み聞かせると、親の声で心地よい安心感を得られるし、言葉の音とリズムを聞きながら、意味が分からなくても、興味を持ち始めます。 言葉の意味を少しずつ理解し、話し始めるようになったら、図鑑がお勧め。恐竜、電車、植物など、どのような図鑑でもいいです。優秀な学生に「子ども時代に何をやっていたか」を聞くと、図鑑を読んでいたと答える人が多いことに驚きます。図鑑は好奇心を高めるのに有効なのでしょう。 0歳から3歳くらいまでは特に視覚と聴覚、感情面の発達が著しい時。この時期に愛情たっぷりの関わりをしながら、さまざまな物に触れさせ、好奇心を高めさせてほしいと思います。
プロフィール たき・やすゆき 1970年生まれ。医師。医学博士。1児の父。脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。研究成果は、新聞、テレビなどで取り上げられ、著書『生涯健康脳』(ソレイユ出版)がベストセラーに。
【教育】聖教新聞2016.6.12 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 19, 2016 04:34:04 AM
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