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カテゴリ:紙上セミナー
かむ力を維持し若々しい日々を 歯科医 大場 敏男
現代は情報化社会。インターネットの発達により私たちを取り巻く日常には、ものすごい量の情報が氾濫しています。歯科における2大疾患である「虫歯」「歯周病」をインターネットで検索すると、それぞれ1000万件以上の情報が出てきます。 われわれ歯科医師よりも歯科に対する知識をお持ちの方がいても不思議ではない時代になってきました。 私が歯科医師になった30年ほど前は、まだまだ“虫歯の洪水”といわれていた時代で、小学校の学校検診でも虫歯のない子どもが珍しい時代でした。それが、歯にまつわる知識が広まった今では逆に、虫歯のある子どもの方が少ないくらいになりました。その一方で、歯列不正のお子さんが増えてきました。 ものすごいスピードで医学の分野は進歩しています。歯科の分野も同じように、この30年間で進歩してきました。診療機器もデジタル化し、レーザーや顕微鏡を使用した治療も日常的に行われるようになり、それに伴い歯科医院に来院される方々の意識も大きく変わってきました。 時代は、虫歯の治療から予防へ、そして審美歯科(歯列矯正やホワイトニング)の受診を希望する方も増えてきました。 仏典には、仏の「三十二相」、すなわち32種類の優れた肉体的特徴が説かれます。その中には、歯も出てきます。具体的には、「歯が40本ある(40歯相)」「歯がそろっている(歯斉相)」「犬歯が四つあって真っ白である(牙白相)」というものです。 御書にも、美しい容色の一つとして「白歯」(395頁)が挙げられています。昔から、葉がいいことは人々のあこがれだったのでしょう。
痛みの原因の一つ、知覚過敏 昨今、歯に対する意識が高くなってきているとはいえ、歯科医院に来院される方の理由として、歯の痛みが最も多いことには変わりありません。 その歯の痛みの原因が、「知覚過敏」である場合があります。知覚過敏は、テレビ等のメディアでも紹介され、よく耳にするようになりました。これは、虫歯でもなんでもない歯が、冷たい水等でしみたり、痛みを伴ったりする症状のことを指します。 その原因として、⒈歯周病や強すぎるブラッシングにより歯肉が下がってしまったため⒉酸っぱい飲み物や食べ物を頻繁に、そして長い時間、摂取する傾向があるため⒊「歯ぎしり」によるため、などが挙げられます。 軽い症状の時は、市販の知覚過敏用の歯磨き粉で収まる場合もありますが、治らない場合は、歯科医師が薬を塗布したり、あるいは葉の表面をコーティングしたりする必要があります。 歯周病や強すぎるブラッシングについても同様に、歯科医院でチェックしてもらったり、場合によっては歯周病の治療を受けたりするようにしてください。 知覚過敏は重症化すると、歯の神経を抜かなければならなくなります。神経を抜いた歯は“枯れ木”と同じようにもろくなり、いつか「歯折」(葉が折れること)してしまう可能性が高くなります。歯折すると抜歯しなくてはならなくなるので、いずれにしても早めの処置を心掛けてください。
歯周病を悪化させる歯ぎしり また、知覚敏感の原因となる歯ぎしりは、歯周病を悪化させる原因にもなります。現代は「ストレス社会」といわれるほど、「ストレス」が多くなっています。歯ぎしりは、「ストレス」や「不安」「疲れ」が原因となっているようです。 歯ぎしりは、就寝時にすることが多く、対策としては「ナイトガード」というマイスピースを使用して歯を保護します。ナイトガードにはプラスチック製のものがありますが、これが傷つくことがあることからも、歯ぎしりの力のすごさが分かります。 日本は、かつてないスピードで高齢化の道を進んでいます。世界保健機構(WHO)が発表した世界保健統計(2016年版)によると、男性の平均寿命が80.86歳で1位。男女の平均が83.7歳で世界一だそうです。 長生きできるようになった半面、その長生きがさまざまな課題を生み出していることも事実です。最近、「健康寿命」という言葉を耳にされたことがあるのではないでしょうか。これは、17年前にWHOが提唱した概念です。 厚生労働省によれば、健康寿命とは、“健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間”のことをいいます。よって、平均寿命と健康寿命の差が、日常生活上の制約に生じる“不健康な期間”ということになり、これが2010年の厚労省の調査によると、男性で9.13年、女性で12.68年となっています。
80歳で20本の歯が残せるように 日本歯科医師会では、80歳で20本の歯を残そうという「8020(ハチマルニイマル)運動」を推進しています。 “8020”達成者は、非達成者よりも“生活の質”を良好に保ち、社会活動意欲があるという調査結果のほか、残っている歯の本数が多いほど寿命が長いという調査結果もあります。 仮に“8020”を達成できなかったとしても、きちんとかむことのできる義歯(入れ歯)を入れ、かむ訓練をすることによって、寝たきりの方が起きて生活できるようになったという事例も報告されています。 御書には「このやまひは仏の御はからひか・そのゆへは浄名経・涅槃経には病ある人仏になるべきよしとかれて候、病によりて道心はをこり候なり」(1480頁)と説かれています。病も老いも、ともすれば悲観的になることもあるかもしれません。しかし、病や老いを、自身が「人間革命」し宿命転換していくための契機と前向きに捉えていくことができます。 “負”の側面から見られがちな老いを“健やかな老い”へと変えていくためにも、“きちんとかめる”ことは、高齢者をはじめあらゆり人にとって非常に重要なことなのです。多くの方々の健康長寿の人生のサポートできるよう、ますます仕事に励んでまいります。
【プロフィール】おおは・としお 埼玉県坂戸市の歯科医院で院長を務める。57歳。1980年(昭和55年入会)坂戸圏長。埼玉ドクター部長。
【紙上セミナー「生活に生きる仏教」】聖教新聞2017.1.31 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 20, 2017 04:59:31 AM
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