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カテゴリ:政治
専修大学法学部教授 岡田 憲治
■社会と国家をつなぎ民意反映 日本では米国のように有権者が直接大統領を選ぶのではなく、立法府のメンバーとして選ばれた議員の中から、各分野の行政官庁のトップを担う大臣たち(ministers)を集めた「内閣」が形成され、その中から「第一人者」(prime minister)として総理大臣が選ばれます。つまり行政府の長は間接的に選ばれるのです。 この内閣制は、直接的に選ばれた大統領を頂点とする制度と異なり、総理大臣は、いわば国務大臣たちを集めた執行部の代表であるとする「集団指導」部の代表です。投票によって選ばれた一人の指導者が「独裁的権力」を行使することへの警戒という意味も含まれています。 独裁的権力行使を警戒するのは、それが多くの人々の人生と生活に最も影響を与えてしまう「戦争」に結びつきやすいからです。米国の大統領は陸・海・空の三軍の最高司令官であり、指揮権は持っていますが、宣戦布告をする権限は議会が持っています。また軍隊を募集したり編成したりする権限も、大統領ではなく議会が持つ権限です。 その点、議院内閣制は集団指導体制ですから、内閣制のメンバー相互のチェックもある程度は可能ですし、ある政治的判断、政策的判断が強引であったりした場合には、大臣が異論を唱え、修正の意見を出すこともできます。どうにも折り合いがつかなければ、総理大臣によって大臣は罷免させられますが、それは政権の影響を低下させますから、総理大臣もそうそう強引な手法を取ることができないものとされています。 内閣の特質として、挙げられるのが、内閣が「社会の利益」と「国家の意思」の接するところにあるということです。内閣のメンバーである大臣は、原則選挙で選ばれた立法府に属する社会の代表ですが、大臣となった途端に国家意思を体現する行政府のメンバーになりますから、いわば一身で二役を担う立場にあります。民主政治では、人々のさまざまな社会的利益は選挙によって議会に示され、そこから内閣のメンバーを選ぶことで、行政の執行において表現され、人々の意思が総合的に国家の意思へと転換されることになっています。 ですから、人々の考えと国家の方針が、この転換の途中であまりにかけ離れたものに変化したりすると、人々は自分たちの民意が政治に反映されていないと感じ、これがひどくなると「国家エゴイズムの暴走」と呼ばれる事態になります。このことから、議院内閣制における諸大臣は、社会と国家をつなぎ、議会に示された民意を行政執行に無理なく反映させるための「バランサー」としての役割を持っているのです。 【議会政治にのそもそも5⃣】公明新聞2018.3.29 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 8, 2018 03:09:32 AM
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