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September 6, 2018
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2001523日:朝日新聞『私の視点』

 

      私の視点

        創価学会名誉会長 池田 大作

 

    【教育基本法――見直すより大いに生かせ】

 

 「艱難(かんなん)に勝(まさ)る教育なし」――ギリシャの箴言(しんげん)と記憶している。

 

 教育は観念ではない。頭脳だけでもない。実践であり正義である。「人格の向上」と「社会の繁栄」と「世界の平和」の源泉こそ、教育の本義であると私は思う。

 

 かつて内村鑑三(うちむら・かんぞう)は、近代日本の教育が艱難を避(さ)ける方法を授(さず)け、才子(さいし)ばかりをつくっていると嘆いた。教育は艱難に打ち勝つ力を育(はぐく)むものでなければならない。

 

 昨今、教育改革が政治日程に上るなか、小泉政権の下でも「教育基本法」の見直しが論議されている。

 

 私自身は、拙速(せっそく)は慎(つつし)むべきであると考える。基本法の眼目(がんもく)である「人格の完成」など、そこに掲(かか)げられた普遍的な理念は、教育の本義に則(のっと)ったものであり、新しい世紀にも、十分、通用するからだ。

 

 たしかに、基本法がうたう「人格」や「個性」は抽象的(ちゅうしょうてき)だという指摘もある。しかし、憲法に準ずる基本法の性格を考えれば、抽象性ゆえの普遍性(ふへんせい)は、むしろメリットとして、大いに生かせるのではなかろうか。

 

 第一に、「グローバリゼーション(地球一体化)」は、とどめようのない時流である。

 

 そこでは、国益と同時に人類益への目配(めくば)りが欠かせない。普遍的かつ世界市民的な視野を養(やしな)うことが、ますます重要になる。

 

 第二に、「教育勅語(ちょくご)」に盛(も)られたような具体的な徳目(とくもく)は、基本法の正確になじまないと思う。法文化されれば、必然的に権威主義的な色彩を帯(お)びてしまうからだ。

 

 現代は、あらゆる既成の権威が色あせ、家族という人類最古の共同体までもゆらぎに直面している。その底流を直視せずに、教訓的な徳目を並べても、復古調(ふっこちょう)の押しつけとして反発されるだけである。

 

 もとより私は、日本の歴史や伝統文化を軽んずるのではない。逆である。

 

 軍部権力と対決して獄死(ごくし)した、ある卓越(たくえつ)した教育者は「慈愛、好意、友誼(ゆうぎ)、親切、真摯(しんし)、質朴(しつぼく)等の高尚(こうしょう)なる心情の涵養(かんよう)は、郷里(きょうり)を外(ほか)にして容易(ようい)に得(う)ることはできない」と述べた。

 

 地域や郷土に根ざした固有の文化や伝統を尊重してこそ、豊かな人格の土台も築かれる。

 

 ただ、そうした心情の涵養、人格の形成は、外からの「押しつけ」ではなく、徹(てっ)して「内発的(ないはつてき)」に成されるべきである。

 

 周知のように、基本法は、アメリカのデューイの教育哲学と親近している。デューイも内発的な精神性を重視し、それを引き出すものこそ教育であり、「人間は、教育によって人間となる」と断じた。「内発」こそ、教育改革のキーワードでなければなるまい。

 

 私自身、教育を生涯の事業として取り組んできた。すべての子どもの生命にある「伸びゆく力」と「創造力」を開発させるのは、やはり教育の現場、また家庭や地域における、人格と人格の触発以外にない。

 

 目指すべきは「教育のための社会」である。社会のために教育があるのではない。教育のために社会があり、国家がある。発想を大きく転換して、21世紀こそ、子どもたちが「生きる歓(よろこ)び」に輝く世紀としていきたい。

 

 大胆(だいたん)に改革を提唱する小泉純一郎首相も、教育に関する発言は、まだ少ないのではないかという印象を、国民は受けている。

 

 未来のために最も重要であり、世界の平和と文化の創造の根本であり、人間が人間として幸福になるための真髄(しんずい)である教育を、ぜひ、忘れないでいただきたい。

 






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Last updated  September 6, 2018 03:15:22 AM
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