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November 18, 2018
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カテゴリ:民俗学

民俗学者 川島 秀一

 

各浜がにぎわう33

年が明けて初めてのオオシオである。旧暦14日が、漁師の行事として大事な日であるとともに、一年中で一番遠くまでシオが引く、旧暦の33日も重要な日である。特に西南日本を中心に「浜下り」(ハマウリ、ハマオリとも)と呼ばれる行事が各浜に見られる。

沖縄県宮古島の北方に位置する「八重()()()は海底の広いサンゴ礁であり、南北約17キロ、東西約65キロの大きさである。旧暦33日のオオシオには海面上に現れるので、近くの池間島の家々では舟に飲食を積んで上陸し、潮干狩りなどをして一日中楽しんでくる。この日をサニツとも呼び、一種の浜下りの行事であった。

また、この一年間のうちに生まれた子を八重干瀬に連れて行き、両足を塩水をつけてくる人たちもいる。以前は、サザエなどの貝類を水産試験場で育てておき、この日に放流するところもあったという。

一方で、宮古諸島の一つの伊良部島では、今でもサニツには、島の北東側の聖地、筆岩から海水を持ち帰り、これで顔や手足を清めている。

宮古諸島だけでなく、沖縄県の各島では、シオの引いた浜に一重一瓶を並べ、蛇皮線を抱えて一日中遊んだ。伊平屋島では、「三月網」と呼んで、漁の初祈願も行われた。別名「縄張り」とも称する理由は、縄にクバの葉や藁を挿して追い込み漁を行い、拝所に魚を供えるためであった。同様に、この日に縄を用いて追い込み漁を行う島に、久高島がある。ただし、久高島では「三月網」と呼ばれ、島の年寄りたちが少年たちに漁労の方法を手ほどきする日でもあった。

同日の夕方、島の女性たちは、西向きの浜に下り、線香を立て、海で亡くなった者と龍宮様へ膳を供える行事があり、これをリュウグウマティと呼んでいる。旧暦33日のオオシオは、海の底の海難者の魂や龍宮に一番近づける日でもあった。

一年で一番浅くなるイノー((しょう)())が、少年たちの漁労訓練にふさわしい場所を提供することと同様に、シオと共に生活している、久高島の旧暦中心の年中行事の世界が、鮮やかに見えてくるようである。

本土の33日に、川や海から「雛流し」が行われているのも、同様の真意からであろう。宮古諸島で、この日の塩水が成長祈願に用いられたように、この「雛流し」は、一種の紙のヒトガタを用いた「厄流し」である。33日のオオシオが、厄を遠くまで運んでくれると感じたのである。

 

 

【いのちの海と暮らす—6—】聖教新聞2018.6.7






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Last updated  November 18, 2018 06:02:48 AM
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