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カテゴリ:抜き書き
日蓮の独創的見解 この竜女の成仏について、日蓮が独創的な見解を述べていて感銘した『法華経』と言えば二乗成仏を明かした経典として知られる。ところが日蓮は、
かかるいみじき法華経と申す御経は、いかなる法門ぞと申せば、一の巻方便品よりうちはじめて菩薩・二乗・凡夫、皆仏になり給うやうとかれて候へども、いまだ其のしるしなし、〔中略〕いまだあらわれたる事なければ、語のみにては信じがたきぞかし。 (『千日尼御前御返事』)
と記している。つまり、二乗などに授記はされたが、成仏するのは遥か未来のことであり、『法華経』が説かれた時点ではまだ成仏していないではないか、というのである。この点は、私も昔から疑問に思っていたとすでに記した。ところが、日蓮は、この提婆達多品の竜女の成仏について次のように述べている。
一切信じて信ぜられざれしを、第五の巻に即身成仏と申す一経第一の肝心あり。〔中略〕龍女と申せし小蛇を現身に仏になしてましましき、この時こそ、一切の男子の仏になる事をば疑う者は候はざりしか。されば此の経は女人成仏を手本としてとかれたりと申す。 (同)
シャーリプトラをはじめとする声聞たちに未来成仏の声聞たちに未来成仏の授記はされたが、まだその結果は現れていなかった。だから、「信じて信じざられざりし」という半信半疑の状態であったという。ところが、彼らに先駆けて、龍女が彼らの目の前で成仏して見せた。それによって、すべての男子の成仏に対する疑心暗鬼がなくなった。だから、この『法華経』は、女人成仏を手本として一切衆生の成仏が説かれているという。先駆的な卓見であろう。
【法華経とは何か その思想と背景】植木雅俊著/中央公論新社刊 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 7, 2022 04:21:51 AM
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