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実効力のある規則に向けた議論へ 尾松 亮 周辺地域の防災対策㊦ 2014年に閉鎖されたバーモントヤンキー原発(バーモント州ウィンダム郡)の周辺地域では16年4月に「緊急時計画ゾーン(EPZ)」が撤廃された。EPZ(原発周辺約16㌔圏)では避難計画や被ばく防護策のどの地域防衛策が求められる。EPZ撤廃に伴い、原発事業者Entergy社は周辺地域に対する「緊急時対策費用」支払いを免除させることになった。 米国では廃炉決定した原子炉から使用済燃料を貯蔵プールに移した後、事業者が原子炉規制委員会(NRC)に緊急時計画要件の免除を申請することができる。この免除申請が認められたことで、バーモンドヤンキー原発周辺地域のEPZ撤廃が行われた。 このような「廃炉次第の地域防災縮小」に抗う取り組みもなされてきた。バーモント州政府は事業者と協定を結び、EPZ撤廃後も一定期間(18年まで)緊急事態対策費用支払いを義務付けた。地元バーモント州選出議員らが「廃炉中の緊急時計画維持」を義務付ける法案を提出する動きもある。 日本では「廃炉時代の地域防災をどう維持するか」という問題が議論されることは少ない。しかし米国で起きている廃炉中の地域防災縮小を「対岸の火事」として眺めていてよいのだろうか。 資源エネルギー庁は、廃炉が進むにつれて事故の危険も減少するとの考えに立ち、「今後は、安全を第一」としつつも、廃炉の各プロセスにおけるリスクに応じた安産規制を検討することも必要になる」と述べる(「原子力発電所の『廃炉』、決まったらどんなことをするの?」19年3月15日)。今後、廃炉中の原発に対しては、従来の安全規則が変更される可能性があるのだ。 日本では原発周辺30㌔圏で避難計画の策定が義務付けられている。周辺自治体と迅速に情報を共有し連携できるよう、事業者にも防災・通信インフラ整備や防災計画策定が義務付けられている。 廃炉中も使用済燃料貯蔵が続く限り、燃料損傷等の過酷事故リスクは残る。「廃炉」は免振重要棟や非常用冷却系統など安全対策用設備の解体・撤去を含む工程である。「30~40年」を要する廃炉期間中、事業者に十分なレベルの安全対策を継続させるため、実効力のある規則が必要だ。避難計画をはじめとする地域防災体制をどのように維持していくか、財源の問題も含め、議論をはじめねばならない。 「廃炉中の事故リスクが小さい」との論理で「防災縮小」を許せば、日本でも米国で進む「EPZ撤廃」と同様の事態が生じうる。 (廃炉制度研究会代表)
【廃炉の時代—課題と対策—⓫】聖教新聞2021.518 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 8, 2022 05:28:10 AM
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