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November 18, 2022
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カテゴリ:文化

古典文学にみるスポーツ

高知県立文学館 学芸課職員  野々村 昭美

娯楽や鍛錬、権力争いなど、時代を追うごとに役割変わる

日本において、スポーツや武芸の起源を辿っていくと、古くは古事記・日本書紀の時代まで遡る。最古のものであれば、古代ボクシングを思わせる「古事記」の「国譲り」で、神々が力を以て国を譲り合い、「日本書紀」では剛の者が捔力〈すまい〉(相撲)で力試しをしたことから始まる。

やがて、中国から射術や蹴鞠が日本に伝わり、貴族や権力者を中心に親しまれるようになり、遊びや勝負事として、競〈くら〉べ馬や蹴鞠を楽しむようになる。高知県出身の国学者で、万葉集研究に生涯を費やした鹿持雅澄は、蹴鞠の祖・飛鳥井家の出自であるとされている。

中世期には、実践に向けた訓練として武士が弓術や馬術に取り組んだ。各スポーツの印象も、遊興の色が強かった平安時代と比較すると、勇壮なものが多くなったように感じられる。また、弓馬術は武士の訓練として重んじられ、「弓馬の道」(「太平記」)という言葉も誕生した。貴族に愛された蹴鞠も、鎌倉時代以降は、北条氏ら将軍や藩主が己の教養や権力を示すため夢中になった。その後、戦乱の世を経て、太平の世となった江戸期には、民衆が娯楽や暮らしの一部としてスポーツに親しむようになった。

高知県立文学館で現在開催中の「スポーツと文学」では、各時代の人々がどのようにスポーツに親しんだかを、「あそぶ(遊)」「きたふ(鍛)」「きほふ(競)」の3つに独自に分類し紹介している。

「あそぶ」は、勝ち負けには拘らず、遊び、耽溺したスポーツのことで、鷹狩や蹴鞠をいう。「伊勢物語」には男たちが鷹を手に据え狩りに出かける様子が描かれ、『源氏物語』には柏木と女三宮の蹴鞠の日の出会いが印象深く描かれている。なお、高知県高岡郡越知町の横倉山には、壇ノ浦の戦いで落ち延びた安徳天皇らが住んだとされる行在所跡が残っており、彼らは当地で乗馬や蹴鞠をし、心を慰めたと伝えられている。小高い山の奥にひっそりと残されており、天皇たちの憂愁が伝わってくるようである。

次の「きたふ」は、武士たちが実践を意識し鍛錬したスポーツで、水練・弓術などをいう。

最後の「きほふ」は、力や技を競い合ったスポーツで、相撲などがそれに当たる。「日本書紀」では男たちが力を競った相撲だが、「平家物語」などには皇位継承者を決めるための勝負事として描かれている。現代の相撲とは一種変わった役割があったようである。

スポーツを分類してみると、時代ごとに現在とはまた異なる諸相が垣間見える。今も昔も変わらずスポーツに熱中する人々のさまが描かれた古典文学作品を、今一度味わっていただきたい。                          (ののむら・あきみ)

 

 

【文化】公明新聞2021.9.5






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Last updated  November 18, 2022 05:12:43 AM
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