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カテゴリ:政治
各国で政府が産業創出を支援 尾松 亮 地域の再生と国の責任 廃炉事業それ自体は、雇用や税収面で立地地域にとって長期・安定的な新産業にはなりえない。原発閉鎖の影響を受ける立地地域が自力で「廃炉以外の新産業」を創出することも困難だ。 海外では廃炉地域の経済・社会聖性に、政府を関与させる制度作りや取り組みが積み重ねられてきた。 ドイツでは、1990年に閉鎖した旧東ドイツ・グライフスヴァルト原発周辺地域の経済再生のために連邦政府が30億ユーロ以上の支援を行った。廃炉時代を迎えた立地地域では、国営事業者EWNが地元自治体と協力して新工業団地の形成、廃炉以外の新事業誘致に成功している。 英国では2005年、政府が原子力廃止措置期間(NDA)を設立した。NDAは全国17の原子力施設廃炉を担当する政府機関で約1万6000人が雇用されている(20年時点)。立地地域の社会・経済再生に取り組むこともNDAは「廃炉事業に依存しない地域経済創出」を掲げ、立地地域でインフラ整備や事業創出を支援している。 米国では廃炉中・廃炉後の立地地域に対して、保管を続ける「使用済み燃料」の量に応じて連邦予算から経済影響緩和基金を初出する新法案が議論されている(座礁原発法案、本連載第2~4回)。 この法案はエネルギー省が立地地域のための経済再生タスクフォース(特定任務に当たるチーム)を設立することを求めており、これも「廃炉時代の地域再生」に国を関与させる方針を示している。 制度の違いはあれ、廃炉先進国では「地域再生に国を関与させる」仕組み作りがひとつのスタンダードになりつつある。民営原発であっても、その廃炉と地域再生に国(あるいは国営企業)が関与する制度設計である。 日本では廃炉決定した原発の立地地域で「廃炉によって地元経済を維持する」という方針が語られることもある。 しかしながら「廃炉頼りの自力再生」が行き詰ることは、海外の廃炉先行地域の経験が示している。立地自治体の「自力再生」を唯一の選択肢とせず、地域再生に国を関与させる仕組みを求める必要がある。 (廃炉制度研究会発表会代表)
【廃炉の時代―課題と対策―21】聖教新聞2021.10.5 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 3, 2023 06:30:20 AM
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