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カテゴリ:医学
「敗血症」初の実態調査 感染から起きる臓器障害 敗血症の実態調査をまとめた千葉大学の中田孝明教授
高齢化で患者、死者が急増 免疫機能が制御不能となって〝暴走〟 感染症にかかると命に関わる場合があるということは誰もが知っています。その定義は2016年に改訂され、医学的に明瞭になりました。 結論は「感染症」に対する生体反応がコントロールできなくなり、自らの組織や臓器を傷害することで起きる、生命にかかわる状態」というものです。 実態調査を取りまとめた中田孝明千葉大学教授(救急集中治療医学)によると、細菌やウイルスによって感染症が起きると、体の中ではそれらの病原体を排除しようと免疫機能が働きます。 ですが、この機能が制御不能となって、〝暴走〟すると、自らの組織や臓器を痛めてしまうことがあります。それが敗血症の実態だといいます。 今回の調査で中田さんらは、保険請求に基づき国内の入院患者の大半をカバーする診療データベース「DPC」を活用。医療機関が10~17年に登録した5000万人以上の入院患者から敗血症の患者を抽出し、患者の背景や感染の詳細、治療の経過などを分析しました。
入院患者のうち約36万人が死亡 その結果、入院患者のうち敗血症になった人は4%の約2000万人。そのうち約36万人が敗血症で亡くなっていました。 年ごとの変化を追うと、10年には難関の敗血症患者は入院患者全体の3%、約11万人でしたが、17年には5%36万人に急増。入院1000人当たりの死亡数も6.5人から8人に増加し、死者は2.3倍になったことが分かりました。 敗血症患者の死亡率は下がっていましたが、高齢化が総数を押し上げた形です。患者の年齢中央値は76歳で、高齢者はリスクが高いこともうかがえる結果となりました。 敗血症によって傷害を受ける臓器、組織は感染症の種類や感染した部位によって呼吸器意外にも多岐にわたります。 新型コロナでは肺炎が高じた呼吸不全に陥角が典型的でした。呼吸不全が重症化すると酸素が取り込めず、人工呼吸器や人工心肺装置ECMO(エクモ)での集中的な管理が必要となります。 臓器障害には、血圧がさがる敗血症性ショック、急性腎障害や急性肝障害、重い呼吸不全はどのほか、全身の微笑欠陥で血栓ができたり出血が起きたりする播種性血管内凝固症候群(DIC)が含まれます。複数の障害が重なれば「多臓器不全」です。
医療は一刻を争うことを知ってほしい 18年に日本集中治療医学会、日本緊急医学界、日本感染症学会の3学会が合同で結成した「日本敗血症連盟」は「敗血症では集中治療室での専門的治療が必要で、心筋梗塞や脳卒中のように治療は一刻を争うことを知ってほしい」と啓発の必要性を訴えています。 今後は、行政にも働き掛け、一体となって取り組む考えです。 中田さんは、「今回の調査で対策を検討するための基礎資料となるデータが得られた。今後、どのような感染で土井云った臓器障害が起きるのかや、それを防ぐ治療の在り方などを明らかにし、予防や治療につなげていきたい」と話しました。 敗血症の増加は日本だけの問題ではありません。世界では毎年推定で約3000万人が敗血症を発症し3人に1人が亡くなります。 世界保健機構(WHO)は17年、敗血症を「重大な健康課題」として認定し、多剤耐性菌対策やワクチン政策、公衆衛生対策などの強化を促しています。
【医療】聖教新聞2021.12.20 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 16, 2023 05:49:45 AM
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