かりゆき日記

こたつから手を伸ばしてカーテンを少し開ける。空は晴れているものの、風が強く、寒そうだった・・・

目が覚めたのは朝の９時過ぎ。寝室にも行かず、テレビも電気もつけっぱなし、ファンヒーターは３時間延長の赤ランプが空しく点灯しているだけ。加湿機能付のエアクリーナーも水補給のランプが点きながらも一生懸命空気をきれいにしている。こたつの上には飲みかけのワイングラス。昨夜はたしか．．．スーパーサッカーを見ていたはずだけど．．．こたつでうたた寝で９時間眠るとは。我ながらたいしたもんだ。着ているのも昨日の午後の練習で来ていたユニフォームとジャージのまま。もちろん風呂も入っていない。
実は、ちょっと寝坊なのだ。寒いのでちょっとおっくうだけど、簡単にシャワーを浴びてあわてて仕度をする。冬山登山にも使えるタイツと靴下なんかを履いて、セーターを着て、コートを持って、車に乗り込む。今日は市内の中高校生の卓球大会。うちの学校の選手も参加している。一応、様子を観にいく。
中学生高校生の大会なので運動公園の駐車場は空いていた。シューズだけ持って体育館へ向かう。扉をあけるとキュキュッっというシューズの音と、元気の良い「よーし！」という声。．．．たぶん、ここまで元気の良いのは中学生だろうけど。
暖かい缶コーヒーを買ってから観客席に上がり、うちの選手をさがす。だいたい、固まって応援しているはずだから．．．と思ってあたりを見回す。少しだけ暖房を入れているらしく壁際はわずかに暖かいが、広い体育館を圧倒的に支配しているのは冬の冷たい空気だ。早くもシューズを伝って足元から容赦なく熱を奪っていく。
向こうのギャラリーに何人か固まって応援している。予選リーグは始まってしばらく経っているらしい。「おはよーございまーす」とやや気の抜けた挨拶。既に予選を終えた者もいるらしく、決勝トーナメントに残った者、残れなかった者がひとりずついるらしい。ノートを見せてもらう。ごめんね、遅くなってしまって。
フロアーではひとりの２年生の試合が始まったところ。少し台から下がってもドライブで攻める事ができるようになってから、非常にいい卓球をするようになった。しかし、彼は高専に来てから卓球を始めたこともあって、まだ試合の組み立て、特にサーブとレシーブがまだ苦手。ラリーの続く、非常に良い試合をしたが相手の長いサーブが取れず、競り負けた。今回はかなりくやしそう。そうそう、そういう気持ちが大切なんだよね．．．

もともと、うちの学校はスポーツが得意な生徒が多く入ってくる学校ではない。（過去にはもの凄い例外もあったけど）高専に入ってから卓球を始める選手も毎年何名かいる。自分がやっていた頃は毎日３時間くらいは練習していたが、今は体育館の都合で平日は２時間弱しか練習ができない。そして、毎日きちんと練習を見てくれる顧問の先生がいない。非常に悪い条件の中で、それでもそれなりの結果を出してきたのだが、ここ数年は目立った成績を残すことができないでいる。さらに最近は部活をやることの考え方も多様化してきた。今年の一年生の多くは兼部をしている。時間の多くを卓球の練習だけに費やし、上手くなって試合に勝つことと、いろいろなことを経験して多様な学生時代を送る。どちらが正しいのか、と言われると、確かにちょっと考えさせられる。

それでも、このチームを見放せないまま、かれこれ１２年経ってしまった。練習のある土日に、なるべく練習に顔を出してそれでも指導らしきものをしている。自分自身、学生時代は目立った成績はまったくない。なんとかかんとか教えている。実際、部活の顧問を何十年もやっている高校の先生などとお話をすると自分の指導などまるでなっちゃいないことに気がつくのだが、今この学校でそれだけのことをしてくれる人はいないのだから、仕方がない。少し年上の先輩、から土日にくるおじさん、に自分もなってしまった。昔はできたはずの技術も、だんだんとできなくなってきている。自分自身は選手としては続けていないから、仕方ないけれど。

予選リーグを突破できた者は結局一人だけ。トーナメント一回戦で敗退した。それでも２年生は決勝近くまで観戦して帰る。残っている選手は私立の高校と商業高校の選手だけだ。もともと長野市のレベルは高くない。そして長野県のレベルもけして高いほうではない。その市の大会で予選さえ通過できない今の現状に、本当はちょっといらつく。単純な試合運びの準決勝を見ながら、練習内容について２年生あたりと少し話をする．．．

時間は３時をまわった。寒いから、ラーメンでも食べながらお話しようよ、と言って体育館を出る。風はいちだんと強く、冷たく吹いていた。すぐ近くのラーメン屋集合で彼等は自転車、自分は車で向かう。やれやれー、今日も６人分のラーメンで散財かあ．．．