2016/01/30(土)07:58
サービス残業
サービス残業、なんて言葉はドイツでは聞かない。
みんな時間きっちりに仕事を終わらせ家に帰る。
終了間際に役所に電話をすると誰も出ないことが多い。
私がお世話になっている事務所は朝8時から夕方5時までが営業時間。でも、5時になっても誰も席を立たない。みんな当然のごとく仕事を続けている。だから、なおさら私は時間通りに帰りづらい。
今日も結局5時半まで仕事をした。今週は水曜日も出勤した。昨日も今日も昼休みを取るタイミングがなくて、結局席に座ったまま仕事をしながらパンをかじるという状態。週25時間の契約なのに、今週は36時間以上働いた。もともと無給だから、サービス残業どころの話ではない。
今週の月曜日に二人分の所得税申告書を作成するように指示された。
お二人とも80歳を過ぎており、年金と家賃収入で暮らしている。
Aさんの収入は老齢年金、未亡人年金とアパート2部屋の収入。
Bさんの収入は老齢年金と地下駐車場の賃貸料。自分のアパートの一室を事務所として使っている。
おふたりとも高齢なので医療費や薬代が高額。
ドイツの場合、薬代は医者の処方箋があるものだけが税金控除の対象になる。自分で買った風邪薬や湿布は控除の対象にならない。しかし、おふたりとも全部きちんとレシートを保管していて、ご丁寧にリストアップしてくれている。しかし、残念ながら殆どが控除の対象にならない。
「健康に問題があり、医者に掛かる費用と時間がばかにならない。ぜひできるだけ多く税金が控除になるように処理して欲しい。」などというお手紙まで付いている。心情的には「全部認めてあげて~」と思うがどうしようもできない。
銀行の明細書もそのまま提出してくれているので、なるべく控除の対象になるものをその中から探す。通帳ではなく、縦10cm横20cmぐらいの長方形の明細書の束。GAとしょっちゅうでてくるのでBさんに「GAって何のことですか?」と聞いたら、「Geld Automat」(ATM)と教えてくれた。そんなことも私は知らなかったのか・・・と自分の頭をぺちんと叩いたら、Bさんは「僕もここにきて初めて知った言葉だから、大丈夫だよ。そうやって覚えていけばいいんだよ。」と言ってくれた。
でも、Bさんは簿記や会計報告書は作成できるが、税務についてはまったくわからないという。
だから、わからないことがあってもBさんに聞くことができないのは残念。
水曜日は社長が不在だった。「§10Abs3EStG a.F」という項目があり、a.Fの意味がわからず、1時間ぐらい税法とにらめっこ。ようやく「alte Fassung」の略だとわかったが、恥ずかしながらその意味もわからなかった。
今日は「Rentenanpassungsbetrag」という意味がわからず、半日考えこんでしまった。社長の時間がありそうなすきを見て聞いたらすごく丁寧に教えてくれた。そして「私が税務署に務めていた時もいつもこの本を参考にしていたの。貴方も読んでみなさい。」といって「Rentenanpassungsbetrag」について書かれた項目のページにポストイットを貼り付けてくれた分厚い本を貸してくれた。「家に持って帰らないでね。」と念を押された。(苦笑い)
コンピューターのプログラムに入力すれば必要な計算は自動的にしてくれるが、今日は私が使えるPCがなかったので、手書きで全部計算しないといけなかった。とにかく誰も助けてくれないので、自分で過去のファイルや学校で使った教科書を見ながら、手探り状態。社長に聞くのは最後の手段。社長も私には効率は求めていないようで、「自分で迷い考えながら仕事を進めて行くことが大切。そのほうが身につく。」といつも言う。結局36時間も働いて、私は一人分の確定申告書さえも終わらせることができなかった。それでも許されているのだから、ありがたい身分である。
「試験ではPCのプログラムは使えない。自分の頭で考えないといけない。年金控除などの算出法は必ず出題されるから、しっかり覚えなさい。」と社長は言ってくれた。
5時少し前に社長から召集がかかった。
「あなたは今週は4日も出勤しているわね。本当は今日は休んでもらうつもりだったんだけど、来週その分出勤日は2日でいいわ。」と言ってくれた。よかった~。有耶無耶にされるかと思った。
「木曜日と金曜日に来て」と言われたので、「できれば木曜日に休みがほしいのです」と伝えた。来週の木曜日は子どもたちは仮装して学校に行く日で、授業は朝8時15分から11時まで。
社長は、「他の日は全員が出社しているから貴方が使えるPCがないわ。」と言った。すると社長の息子が「じゃあ、水曜日に来てもらったら?水曜日はちょうどママがいないから、僕がママのPCを使えばいい。」と言った。すると社長が「水曜日はダメよ。彼女の誕生日よ。」といったので、びっくりした。えー、知っていてくれたんだ。ちょっと感動した。それで、結局は来週は金曜日の1日だけ出勤。その次の週に週4日出勤することになった。
その後、来週以降私がする仕事についての説明があった。社長は私を小間使いとしてではなく、研修生として、いろいろなことを叩き込ませるために考えてくれていることがわかってうれしかった。
クラスメートからは「ひどい研修先」とさんざん言われている。確かに、クラスメートたちは勤務時間が午前中だけだし、いろいろと手取り足取り教えてもらえてうらやましい環境にある。給料が出たり、必要な参考書を買ってもらえたり、講習会に参加させてもらえたり、「特典」が多い。私のように「庶務」をしている人は誰もいない。みんな「専門職」として扱われている。そういう話を聞くと、自分の立場が惨めになるのだけど、今日のミーティングでの社長の話を聞いて、もしかして私の研修先も素敵なところなのかもしれない、と思えてきた。