RURIKO
忘れた頃にやってきた図書館の予約本。林真理子「RURIKO」1日で読めてしまうのは、まるで昔の芸能ゴシップ記事の後日談を読んでいるようだったから。RURIKOというのは浅丘ルリ子のこと。ペルシャ猫のような目を持ったこの美貌の女優の半生伝には、裕次郎、ひばり、旭、浩二と稀代のスターが、続々と、そして当たり前に登場する。こんなこと、書いちゃっていいのかなあという部分多々あり。色々な感想があるのだろうが、驚いたのは林真理子の想像力にて書かれた部分が多いということ。(著者が述べています)ひばりとルリ子の電話や、浩二とルリ子の会話など隣りで聞いていたかのようで。石坂ファンだった私としては、ちょっと気になる記述があった。能弁、薀蓄好き、マルチに活躍、などは分かるとして田園調布の実家でも父親はいつも食事時に上着着用というあたり。いかにもな上流社会という風に描かれている。実は私は、中学生の頃に、石坂さんの家まで行ったことがある。石坂さん主催の劇団チケットをご自宅で販売していたのだ。駅から、少し歩くと確かに洋風のつくりではあるけれど田園調布あたりでは、ごくごくフツーの古い家、それが石坂浩二の実家だった。台所の窓に御釜が干してあったのがとても印象に残っている。応対してくれた母上もとても感じの良い、ごくフツーの方だった。当時、雑誌グラビアには、石坂浩二の自室がよく載っていたが、部屋の中は、とにかく本や原稿箋、プラモデルでごっちゃごちゃ。玄関の右側にそれらしき部屋があり、「ここを開ければあの部屋?」と、どきどきしたのを覚えている。この本では、物凄く瀟洒な感じに描かれているのだけど私が目撃したのは、このフツーな部分だけなので、ふーむ、小説というのは、こうやって脚色されていくものなのね、と妙に感心したのだ。RURIKOではなくて浩二のことになってしまったけど、こうやって、自分の過ぎた時代と重ねて、色々な読み方が出来る面白い本だった。読み終って思ったのは、浅丘ルリ子は「めんどうな事が嫌い、そして美貌の自分が一番好きで、一番関心があり、よって嫉妬や羨望、もしくは虚栄にも興味のない、実に男前な人」という印象だ。林真理子が「浅丘さんには、何回か取材したけど、忘れちゃったわあ、というのが口癖だった」そうだもの…。