kazesan 2

2007/06/25(月)15:12

秘湖

当てのない旅のつもりが、湖にとりつかれてしまった。夜明けの然別湖は、天空の光が雲に透け、それを映してまるで鏡のように美しかった。十分に満足して、もう離れようと決めたぼくなのに、今度はその西にある東雲湖が気になりだした。貸しボート屋のおじちゃんが、山越えは遠いがこれで行けばすぐだ、といきなり勧める。誰が決めたものか、東雲湖は北海道の三大秘湖のひとつだと聞いては、このまま行かないで済ませるなんて考えられない。そして東雲湖は、これまでぼくが見た風景の中でもっとも美しいもののひとつになり、雨とガスが演出してくれたおかげか神秘的でさえあった。湖畔まで降りて限られた小さな踏み跡に佇んでいると、生まれる以前の、まだ形になっていない、豆つぶのようなぼく自身を想った。小さな東雲湖の大きな懐に抱かれいるような気分だった。然別湖まで来たなら、カヌーでも徒歩でもいい、半日ほどもかけて東雲湖を見たらいい。kazesan広場を楽しんでくださるみなさんへの、ぼくからの遺言にしたいくらいだ。東雲湖は、いつか消える運命にあるそうだ。 写真は然別湖。東雲湖へはケイタイを忘れた。そんなもので撮っては失礼だったのかもしれない。

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