149305 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

賢治と農

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

馬場万磐

馬場万磐

カレンダー

バックナンバー

カテゴリ

日記/記事の投稿

コメント新着

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2021.06.24
XML
カテゴリ:農学校教師時代
1924(大正13)年6月21日の詩です。

1羽あるいは複数のカッコウが飛ぶようすを、物理化学的な数や量の遷移にたとえつつ、亡くなった妹を追慕する詩です。

1922(大正11)年11月27日に最愛の妹、トシは、結核で亡くなりました。それから約1年半たっても、何を見ても亡き妹が思い出される賢治です。

鳥や自分という生命体を、個体ではなく、物理化学的な現象としてとらえる考え方や感覚は、「春と修羅」序文にも通じるように思われます。

「序/わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)/風景やみんなといつしよに/せはしくせはしく明滅しながら/いかにもたしかにともりつづける/因果交流電燈の/ひとつの青い照明です/(ひかりはたもち、その電燈は失はれ)」

(本文開始)

二七
  鳥の遷移
        一九二四、六、廿一、
鳥がいっぴき葱緑の天をわたって行く
わたくしは二こゑのかくこうを聴く
からだがひどく巨きくて
それにコースも水平なので
誰か模型に弾条(バネ)でもつけて飛ばしたやう
それだけどこか気の毒だ
鳥は遷り さっきの声は時間の軸で
青い鏃のグラフをつくる
  ……きららかに畳む山彙と
    水いろのそらの縁辺……
鳥の形はもう見えず
いまわたくしのいもうとの
墓場の方で啼いてゐる
  ……その墓森の松のかげから
    黄いろな電車がすべってくる
    ガラスがいちまいふるえてひかる
    もう一枚がならんでひかる……
鳥はいつかずっとうしろの
練瓦工場の森にまはって啼いてゐる
あるひはそれはべつのかくこうで
さっきのやつはまだくちはしをつぐんだまま
水を呑みたさうにしてそらを見上げながら
墓のうしろの松の木などに、
とまってゐるかもわからない

(本文終了)





#宮沢賢治 #カッコウ #トシ #遷移 #鳥の遷移





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021.06.24 03:31:56
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.